第7話
屋敷に戻り、数刻して乳母から近くの海が氾濫したと聞いた陽葵は、重たい姫装束を脱ぎ、束帯へと早着替えをした。
今度はしっかり弘蔵に出かけてくることを告げ、秋貞にこのことを伝えるために星の塔へ走った。
走る陽葵の首にはしっかりと翠玉がかけられていた。
* * *
星の塔で、いろいろと思案を重ねていた秋貞にも都の海が氾濫したという情報は入っていた。
その報告を聞き、ますますおかしくなっていく海事情に頭をうずかせていた。
(大海の事件と深く関係してそうだな。この都の海は特に内海であるから氾濫はしないはずなんだが)
ぐちゃぐちゃと考えて緊張した脳を解き放ったのは1つの声だった。
「秋貞様ー」
陽葵が星の塔へ来たのだ。おそらく彼女もこの件を聞きつけてやって来たのだろう。
「秋貞さまっ、いつもは穏やかな海なのに氾濫するという不可解な事件が今回はこの平安京で起こったようです!!」
「俺も先程聞いた。被害は今のところないようだが、いつ大海の時と同じようになるかわからない。実際に津波さながらの勢いだそうだ。それを抑えるための符を準備しているところだ。少し待っていてくれ。」
(秋貞様は、もう波を抑える対策を考えていらっしゃる・・・!なんて優秀な陰陽師なの??・・・ごほん、私にもできることがきっとあるはずだわ!!)
「秋貞様っ、私先に行ってます!!」
そう言って陽葵は、氾濫した海へと向かい、星の塔を飛び出していった。
「おいっ、待てといっただろう!!危険だ!!せめて結界符だけでも・・・!」
急いで注意するが、すでに陽葵の姿は小さくなって、声は陽葵の耳には届かなかった。
* * *
「そろそろ陽葵が来る頃かな。早くたたきのめしたいなあ。」
不気味な声とともに波が大きく揺れていた。
話は中盤戦へと突入しました。
とりあえず、この章はまとめたので、おかしな展開につながることはないかなと思います。
これからも女陰陽師、よろしくお願いいたします!!




