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女陰陽師   作者: 葉月
第2章 奪われの陰陽師
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第4話

 場所は戻り平安京、安倍邸。


 昨夜安倍邸に到着した正次は求婚の文を出した経緯などを陽葵の父、弘蔵に説明していた。


「求婚の文、という名目で出させてもらった文ですが簡単な理由がありましてこのような分かりにくい事態をおつくりしてしまいました。」

 

「か、な、り、誤解を招くようなものだったが。どういう理由があったのかね。うちの娘にニセの文を出すなど・・・」


 凄みのある低い声で弘蔵は正次に問いかける。正次はこの問いに答えた。

「・・・誤解を招くような真似をしてしまって申し訳ありませんでした。簡単な理由というのはですね・・・」

 ごくん、と弘蔵が唾を飲みこむ音が聞こえた。


「実は、私が文を出した地域では恋文以外のやり取りが禁じられてまして。どうしても渡したい文なのだ、と話したら、恋に関することを書いてあれば届けてやってもいいといわれまして。その時は焦りましたが陽葵は女性だから気持ちのない文だと一瞬で捨ててしまうかと思い、ちょっとだけ行き過ぎた真似をしてしまいました。・・・申し訳ありません。」


 この理由を聞いて弘蔵は何というずさんな地域だったのだ、と思った。恋文しかやり取りができないというそんな地域があることも初めて知った。そうなのか、と思い誤解するような内容を書いたことは許そう、そう思った。

だが、

弘蔵は正次が話した内容の中に陽葵が文を捨てるというような言葉が出てきたことに若干の憤りをかんじていた。

陽葵は性格は男っぽいがそんなことはしない。一度もらった文は束のようになって箱にきちんとしまわれている。現に文をもらった日の夜だって遅くまで返事を部屋にこもり考えていたようだったし。今も、文に書かれていたように大海の状況を確かめるために出かけている。

ここまで忠実でまじめな子はいないと親ばかだと思うが、そう思わずにはいられない。

・・・男として出かけていることは正次には話さないで置いた方がいいな。簡単に漏らしてしまいそうだし。今は病気療養で遠くに行っていることにすれば二人が合わずに済むだろう。


 「・・・して、何故安倍邸にやって来たのだ?陽葵を嫁に向かえる気はないのだろう。私たちでなくともほかの人を頼ることもできたはずだが。」

 「それは・・・」

と、正次は言葉を濁した。その態度に弘蔵は裏が何かあるのではないのかと探るような目で正次の方を眺める。すると正次は急に話をそらした。


「あの陽葵はどこにいるんですか。渡したいものがあるのですが。姿があまり見えないので。文にもこちらに行くと最後に書いたのですが。」

「・・・病気療養で正次、お前と入れ替わりで空気のいい遠いところに行っている。心配はするな。

渡したいものとは何だ。私が預かっておこう。」


 正次は持ってきた少ない荷物の中から小さな巾着を取り出した。

「これは、翠玉なのですが。都の市場に売ってあって。もしかしたら陽葵が気に入ってくれるかもと思い購入しました。手ぶらで来るのも失礼ですし。」

弘蔵は袋を受け取り、翠玉を出してみた。

翠玉は陰陽の力が薄い弘蔵でもわかるぐらい危うい気配を発していた。玉の大きさは直径一寸程度。透き通った色をしていた。

 (陽葵に渡しても大丈夫なのだろうか。簡単に話を逸らすような奴から受け取ったものはあまり信用できん。)


 この弘蔵の思案はいづれ的中することとなる。


次回の更新は木曜日の予定です!

また、読んでください!

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