第16話
「そうか。大姫についていたという物の怪というのはお前だったのか。善則・・・。」
「ソウダ。ワルイカ?ズットサチヨヲミテイタ。ヨシノリトイウナデ、オンミョウジノシゴトヲモラッタトキカラナ。キレイダトオモッタ。スベテヲオレノモノニシタカッタ。ソレヲサチヨモウケイレテクレタ。」
「何故、殺す必要があったんだ!普通に人間として通って、娶ればよかったじゃないか!!」
「オレハヨウカイダ!!ニンゲンノスガタデイレルノハナガクテミッカダ。コロシテサチヨヲヨウカイニシテシマエバ、ケッコンデキル!!!」
義則である妖怪はそう告げ、手に持っていた4枚の陰陽博士の符を陽葵と幸世めがけて投げつけた。
「陽葵っ!結界を急げ!やられてしまうぞ・・・!!!」
秋貞も守りの符を飛ばすが、間に合うか間に合わないかは、五分五分という状況だ。
ドオオオオオオオオオン
すごい地響きとともにすべての符が消滅した。煙の中から無事だった陽葵と幸世の姿が現れる。
「よかった。間に合ったか・・・。」
陽葵は内心助かるかどうかドキドキしていた。まだ気絶したままの幸世をしっかりと抱きかかえ、助かるように願っていた。案の定、秋貞が助けてくれた。
陽葵たちの無事を確認した秋貞は符を構えた。本格的に倒さないといけない。理性がそう訴えていた。
「もう、やめろ善則。人間と妖怪じゃ無理だったんだ。生きる理が違う。この符でお前は楽になれる。それで終わりにしよう。」
優しく秋貞が善則に言う。
「イヤダ!」
善則は黒い道を作りだし、その中へ逃げ込む。秋貞がすかさず符を投げつけ、善則は黒い道の道中で倒れた。
秋貞が近くに言って顔を見てみると、目から涙が出ていた。
「・・・サチヨ二アイタイ・・・」
そう言って息絶えた。善則は妖怪の姿から人間の姿へと戻った。
「終わった・・・」
秋貞が静かにつぶやいた。
陽葵と一緒に黒い道の外にいた幸世は目を覚ました。
「善則は・・・?」
「あの黒い道の中です。」
陽葵がそう答えると、幸世は善則のもとへ駆けていった。
「・・・善則。ごめんね。妖怪だと知らなかった私が悪いんだわ。善則・・・ありがとう。私を御簾の外に連れ出してくれて。楽しかった。英語も覚えれたし。帝のところへ行こうと思う。なんだか吹っ切れちゃった。私の立場ではそれが仕事だしね。本当にありがとう。」
善則の顔を見つめ、泣きながら思いを伝えた。
善則の涙は止まり、安らかな死に顔に変わった。善則は粉のように消えてなくなってしまった。
陽葵は幸世に声をかける。
「帰りましょう。日本に。」
「陽葵さん・・・ありがとう・・・。そしてだましてごめんなさい。」
幸世は泣きながら陽葵に謝った。
ありがとう、ごめんね。
その言葉を繰り返し幸世は陽葵に向けて告げていた。
あと1話ですよー