第15話
目の前に広がる黒い道。
2人の陰陽師はごくりと唾を飲みこみ、その黒い道へと足を踏み出した。
* * *
「ここが西洋なのか。本で見たことはあるが、あれは絵だったし・・・。まさかこれほどのものだとは思いもしなかった。」
初めてみる西洋の壮大な風景に秋貞は感嘆の声をあげる。
「はい、すごいですよね。でもここは、どこかの屋敷のようです。たくさん仕切られているから多分そうだと思います。お空も見えないですし。」
2人がたどり着いた場所で話していると、悲鳴のような声が2人の耳に飛び込んできた。
「きゃああああああ!誰かっ!助けてー!!やめてっ、善則、こないでーーーーーー!!」
(女性の声だ!!しかも日本語。善則ですって?ということは幸世姫?!)
「秋貞様!幸世姫様かもしれません!行きましょう!」
「俺もそう思ったところだ!!」2人は声の、悲鳴のする方へと、懸命に駆け始めた。
* * *
善則は符に力を込め終え、幸世に符をつきつけようとしていた。今から、幸世をころそうとしているの
だ。
「きゃああああああ!誰かっ!たすけてー!!やめてっ、善則、こないでーーーーー!!」
必死に幸世は善則の符が届かない位置へと逃げる。
「善則ッ、安全な所に連れて行ってくれるのではなかったの?!」
「今から、誰にも見つかる心配のない安全な場所に連れて行ってやるのだ。
天国という名の場所に・・・!!!!」
「善則、私はあなたと一緒に居たかっただけなのにどうして殺そうとするの?あなたも同じ気持ちではなかったの?」
幸世が嘆きながら訴える。
「だからこそ・・・お前のすべてを俺が手に入れるために、1度死んで、天国に行ってもらわなければならない・・・!」
「どういうこと?回りくどくじゃなくてしっかり説明してっ!」
善則が意を決したように口を開く。
「それは、俺が・・・」
「善則ッッ!!何をしている!!お前は大姫だな!こっちへ来いっっ。」
秋貞と陽葵だ。
幸世は驚きの顔を見せ、助かったといわんばかりの速さで陽葵のもとへ駆けて行った。
「善則様。俺が・・・の続き、聞かせてもらってもいいですか?幸さん、いえ、幸世姫が困惑なさっています。」
陽葵は幸世の方に目を向け、優しく、しかし力強く善則に告げた。足は怖くて震えている。だが自分には仲間がいる。自分に何かあったら助けてくれる、そんなひとが。だから、怖いからと引き下がるわけにはいかない。
「俺が・・・の続きが聞きたいのか。安倍陽葵、賀茂秋貞!いいだろう、教えてやる。
俺が、妖怪だからさッッっっ!!!!
」
その言葉と同時に善則であったものは妖怪へと姿を変えた。
目は一つ、手足は4本ずつ。そして翼が生えている。硬そうな殻でさらに包まれている。見た目だけでいくと、とっても恐ろしそうだ。
「・・・・!!」
幸世姫は驚きのあまり、その場に倒れてしまった。
「幸世姫様ッ!」
陽葵も妖怪を見たことは2-3回しかない。しかも可愛い妖怪ばかり。このような妖怪を見るのは初めての経験で、足がすくんでしまっている。
それを見て取った秋貞は、
「陽葵!大姫を頼む!」
そう言い、善則である妖怪と対峙した。
あと2話!カウントダウンだ!