第12話
「善則・・・もう、もどるの?」
そう言うのは、左大臣の娘である幸世だった。
「せっかく久々に西洋に来てくれたと思ったのに。」
「すまないな、もう少し西洋にいてくれ。もう少しで安全な所に連れて行ってやる。
「分かったわ。幸として、もう少しここに居る。早くしてね。」
その言葉を聞いた善則は、黒い道を作り出し、その中に消えた。
* * *
「秋貞様!!」
陽葵が、入った黒い道の出口にいたのは・・・秋貞だった。陽葵は、秋貞が作った道を通って日本に戻ってきたのだ。
秋貞は陽葵を見るなり、抱きしめた。
「けがはなかったか?女のくせに無理するんじゃない!・・・無事でよかった。」
「え、え?」
陽葵は急に抱きしめられ、真っ赤になりながら困惑する。
「・・・・・。ごほん。すまない、つい、、、」
秋貞は後から恥ずかしくなったのかテレている。
「ど、どうして秋貞様が?」
その質問を秋貞は無視し、気になったことを質問し返す。
「その恰好はどうしたんだ?陽葵。ずいぶん女っぽく見える。」
実は、西洋から日本に行けるとは思ってなかった陽葵は、ドレスを着ていたのだ。
「失礼ですね。秋貞様。私はちゃんとした女ですよ!・・・これは、西洋の服だそうです。」
「西洋?!あの道は、西洋につながっていたのか!!」
「西洋で日本人の女性とお会いしましたよ。」
衝撃発言に秋貞は興奮する。
「幸世姫か!!?」
(西洋に行く手段は、今はないはずだ。今回の陰陽術でも使わない限り。)
「その方は、幸さんとおっしゃっていました。」
秋貞は確信した。幸という人物が幸世姫であることを。
「ふーん、なるほどな。よし、とりあえずお前も戻ってきたことだし、左大臣と陰陽助のところに行くか。
ちゃんと着替えてからな。」
「は、はいっ!」
陽葵は先程秋貞に抱きしめられたことを忘れることができず、どきどきしていた。そのせいか、歩くときに裾を踏んで転んでしまった。
「?」
秋貞は何をやってるんだ、と笑いたそうな顔をしていた。