第11話
「秋貞様、陰陽助様からの文でございます!!」
星の塔に仕える従者が文を持ってくる。秋貞は塔から街並みを眺めていた。陰陽助からと聞き、文に飛びつく。文にはこう書かれていた。
―秋貞。術の構造が分かった。まず、空間を歪曲させるための術を使う。そして、結界符を発動させる。そうすれば不思議な道の完成だ。だが、まだつながる先の調査中だ。術を行うときは気を付けて行え。-
秋貞は大事だと思った部分だけを読み、文に書かれている通りに術を構築し始める。
「よし、これでいいのか。あとは・・・」
いとも簡単に道を作り出した秋貞。文を読み直し、この、目の前にある道がどこにつながっているのか考え始めた。 考えることに夢中で、いつの間にか夜も深まっていた。
* * *
その頃陽葵は、幸の家で床につこうとしていた。
(寝るところがあるのはいいんだけど、この褥、ふわふわし過ぎで落ち着かない…。さあ、明日は朝から大姫様を探さなきゃ!幸さんにも手伝ってもらおう)
陽葵を陰からそっと見る幸。
「悪いわね。今、あなたに連れ戻されるわけにはいかない。向こうに私は、戻りたくない・・・!」
と一人つぶやき、姿を消した。幸の正体は、一生懸命探している大姫、幸世だった。
* * *
「幸さん!」
何か、ただならぬ雰囲気を感じたのか、陽葵は飛び起きた。
家じゅうを探すが、幸はいなくなっていた。
(どういうこと!?)
先程まで自分がいた部屋に戻ると、黒い道が広がっていた。
「これは・・・」
昨日、自分が通ってきた道と酷似していた。陽葵は幸のもとに行けるよう願い、黒い道に足を踏み入れた。