第10話
桃色をした、超ひらひらしたどれすなるものを着せられた陽葵。さらに、金のかつらをつけられた。完璧に西洋に溶け込んでいる。
(うわーなにこれ。恥ずかしいし、すっごく歩きづらいし、動きづらい!!)
「このドレスって、男の方も着られるんですか?」
着ることができるなら秋貞や父にわたしたいなあなんて、陽葵は思っていた。
「着れないこともないと思うけど、これは女性が着る服だから、に合わないと思うし、大きさも違うだろうし、おかしいと思うわ。」
「そ、そうなんですか!?じゃあ、私は今、女性の格好をしているのですか!?」
「今頃気づいたの?鬘までかぶってるのに。」
それを聞いて、陽葵の顔に冷汗がだらだらと流れる。
(だ、大丈夫。ここは、西洋で、日本人はほとんどいないって幸さん言ってたじゃない!)
「今日は私の家に泊まってください、慣れないところで一人は不安でしょ?」
その優しい幸の言葉に甘え、大姫様を探すことは明日にして幸の家に泊まらせてもらうことにした。
* * *
「陰陽助様ー、賀茂秋貞様がいらっしゃってます。」
奏太が秋貞をつれ、陰陽助、平清光の部屋に入る。
「そろそろ来ると思っていたよ、秋貞。善則が何かして、助けが必要なんだろう?話してくれ。何があったんだ?」
陰陽助が秋貞に問う。
「はい。不思議な黒い道を善則が創り出し、その中に陽葵が・・・」
何故、陽葵が黒い道に入ってしまったのかまでの経緯を詳しく話した。
「陽葵くんが・・・」
「黒い道が、どうやって作られているのか、どこにつながっているのか、その二つを調べてほしいのです。」
「稀代の陰陽師の其方ですらわからんとはな。厄介な調べものだ。」
「すみません・・・」
「数日待ってくれ。秋貞よ。わかりさえすれば誰にでも何でも応用できるようになるからな。分かったら、文を星の塔へ寄こす。」
「お願いいたします。」
珍しく秋貞が深く頭を下げた。だが、ただ結果を待つだけなのは、早く陽葵を連れ戻したい秋貞にとって、歯噛みするしかない言葉でしかなかった。