第8話
「何故お前、善則がここにいる!!」
「何故?俺も担当陰陽師だからいてもおかしくはないと思うが?」
「大姫様をどこへやった!!」
「さあ。知らないな。」
と善則は言い、高らかに笑う。
左大臣は、娘がいないことに驚き、腰を抜かし地面に崩れた。それを陽葵が強張った顔で支えている。
「俺が来た時にはいなかったよ。姫さんは。いなくなったのはお前ら2人の失態だな。情けない。」
と善則は、責任をすべて押し付ける。陽葵はその言葉にカチンときて、
「確かに私たちの責任です!ですが、善則様の責任でもあります!!」
と言い返した。秋貞はよく言い返した、と言わんばかりの目で陽葵を見た。
善則は陽葵が言い返したことに驚き、左大臣を見下ろしこう言った。
「大姫に会いたいか?左大臣。わけのわからないところに一人で寂しい思いをしているだろうな。慰めてやらないと。」
「な、!!やはりお前が娘をかくしたのか!!!!娘を返せ!」
「フン。そんなに会いたいのか。無様だ。いいだろう。あわせてやる!!」
善則は手に集めた気を放つ。秋貞は急いで結界を作り始めるが間に合いそうにない。
それを見て取った陽葵は、左大臣の前に出、善則の放った気を受けた。
「!!」
「陽葵ーー!!」
秋貞が叫ぶ。善則はニマニマと笑んで、黒い不思議な道を作り出す。
「この中にいる。勇気があれば来るんだな。」
と笑いを残し立去った。秋貞は陽葵に駆け寄り、陽葵を起こす。
「大丈夫か?!」
「私は大丈夫です。何とか。それより追いかけなきゃ・・・!」
逃がさない、と言い残し陽葵は黒い道めがけて走って行った。秋貞は止めるが、それを振り切った。
陽葵は黒い道に入り、道は閉じた。秋貞と左大臣はその場に取り残されてしまった。
「大丈夫ですから!!!」という陽葵の元気な声が聞こえてくるような気がした。




