第6回
「高瀬さん。すいません、高瀬さん」
ロボが高瀬の個室のドアを叩いた。
シェアハウスには各自の個別の部屋が設けられており、暗黙のルールとして個室への不干渉が守られている。
ロボも斎木からその事は聞いており、誰かの個室のドアを叩くのは始めてのことだった。
「どうしたロボ」
「朝早くからすいません」
「相変わらず礼儀ただしいね君は」
「あともうひとつすいません。朝ごはんを下さい」
「斎木はどうした?」
「活動限界が……」
「何?」
高瀬がリビングへ向かうと、外から帰った姿のままソファに沈んでいる斎木の姿があった。
「おい、起きろ斎木」
肩を揺さぶられ、頬を叩かれても斎木は起きる気配を見せなかった。
「ああ、だめだこれは。これはだめな大人だよ、ロボ。とりあえず邪魔だからベッドに運んでおこう。夜には起きると思うから」
高瀬とロボは手伝って、斎木を部屋へ運んだ。
高瀬が脇に手を伸ばして上半身を持ち上げ、ロボがちょこんと足の先を持った。
何度目かのことであり、2人とも手慣れたものだった。
「さて、朝ごはんだっけ?俺もまだだから一緒に食べよう」
「ありがとう」
「斎木がしょっちゅう使い物にならなくなると思うから、ロボも料理を覚えた方がいいね。やってみる?」
「はい!」
「料理をしたことは?」
「ない。ガスコンロを捻ることと包丁を握ることはこれまで禁じられてきました」
「ビギナーだな」
「うん。レンジでチンはできるよ」
「レンジが使えればとりあえず生きていけるね」
「人類の英知の結晶です」
「じゃあ美味しいレンジ料理を伝授しよう」
「まずはこの、レトルトカレーを深皿に入れます」
「入れました!」
「これをレンジに掛けて温めます。待っている間に、納豆をかき混ぜます」
「おおお」
「カレーが温まったらお米を同じお皿に入れて、その上に納豆を掛けます」
「これはっ」
「納豆カレーの出来上がりです」
「カレーってこんなに簡単だったんだ…!いただきます!」
「おあがりなさい」
「レンジとは 死ぬことと 見つけたり…」
「美味しかったんだね、ロボ」