第2回
事の起こりは、斎木がロボを家に連れてきたところから始まった。
斎木はシステムエンジニアを職業としており、20代半ばを過ぎた頃からフリーランスになった。
幸い仕事は上手く進んでいたが、不安定な収入と先行きを心配し、友人達と共にシェアハウスに移り住んだ。
郊外に立てられた一軒家をシェアハウスとして少々改築し、5~6人で生活していた。
全員それぞれ職業、性別はばらばらだが、友人同士や、友人のまた友人…といった繋がりで集まった仲だった。
斎木は仕事が忙しくなるに連れて、部屋に籠もりがちになり、かと思うと突然何も言わずに出かけて数日戻ってこないことが多くなった。
斎木と学生時代からの友人である高瀬は、斎木の無鉄砲な性格をよく知り、女性ひとりで身を立てていくことの大変さを慮って心配していた。
だが、高瀬自身の会社勤めも忙しく、ときどき「床で寝るんじゃない」「その服、2日前にも着てたぞ」などの声を掛ける以外のことはなかなか出来ないでいた、そんな折のことだった。
数日ふらりといなくなった斎木が、小学校中学年ほどの年齢の子どもを連れて家に帰ってきた。
とんとん、と高瀬の部屋のドアを叩く。シェアハウス内は、各自それぞれ部屋があり、リビングやトイレ、風呂場などを共有して暮らしている。
カチ、と音がして、中から高瀬がぼやけ顔を覗かせる。
「なに。どうしたの」
「いやちょっと、挨拶周りにね」
「いまさら挨拶も何もないだろうに」
「私じゃないよ。ほら、この子」
斎木は腕で子どもの肩を押し出した。斎木の腰のあたりで、子どもがにこにこ笑っている。
「誘拐は犯罪です!!」
高瀬は青ざめて斎木の肩を揺さぶったが、斎木はへらへらと笑い、足元の子どもは手に持っていた紙袋を差し出した。
「今日からお世話になります」
高瀬は反射的に紙袋を受け取り、これはどうもご丁寧に、と返した。
「…なに?誘拐じゃないの?押しかけ女房?」
「私の姉さんがとても個性的で奔放な人で…。その子どもだよ」
「よろしくお願いします!」
このすぐ後にロボと名前を付けられる子どもが大きな声で叫んで、新しい生活が始まった。