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鐘の音が聞こえる  作者: ろくなみ
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私5 天体観測

星に詳しいのはこういうわけです。

       私5 天体観測


 小学五年生ももう終わりそうな頃、私は先生とは、普通に会話をするようになっていた。

 会話といっても、いつも私が、先生の話を、現実的な一言でばっさりと切る。

 そんな内容だった。

 今日は、先生に、スケッチブックに描いていた絵を、こっそり見られた。

 とても良いと言われた。

 嬉しかった。

 初めて、誰かに絵を褒められた。

 先生の奥さんも、似たような絵を描くらしい。

 私は、感じたものをそのまま描いている。

 そして、その内容は、普通とは少しちがう。

 先生も変わっていれば、先生の奥さんも変わっているという事だろう。

 その日の夜、先生と学校の屋上で天体観測をした。

 二人で望遠鏡をのぞいて、土星の輪っかを見た。

 本当にくっきりと見えて、綺麗だった。

 望遠鏡を見終わった後、二人で寝転がって、空を見上げた。

 先生は、肉眼で見える星の名前や、正座を、ひとつひとつ、丁寧に説明してくれた。

 名前の由来、神話、正座の簡単な見つけ方、星の特徴を、無邪気に、子どもみたいに。

 それがなんだか可愛くて、愛おしかった。

 星以外にも、たくさんのお話を聞かせてもらった。

 先生の子どもの頃の話。

 先生が星を好きになったきっかけ。

 先生に、私と同い年の息子さんがいることも。

 いつか会ってみたいなと、ちょっとだけ思った。

 私みたいな人間と会ったら、がっかりしそうだと言った。

 そんなことはない、と先生は笑って言ってくれた。

 先生は、私は素敵な女の子だと告げてくれた。

 胸が苦しくなった。

 先生は、今年いっぱいで、ここから離れた中学校に行ってしまう事を、私に告げた。

 いつものように、ぶっきらぼうに、愛想なく、清々するとでも言おうとした。

 だけど、言葉が出なかった。

 その代わりに涙が出てきた。

 いつのまにか先生の袖をぎゅっとにぎったまま、私は涙を流し続けていた。

 先生がいなくなるのが辛かった。

 先生の声がもう聴けなくなるのが辛かった。

 先生のバカみたいな話が聞けなくなるのが辛かった。

 私は、先生が好きだった。

 流れ星が一つ、きらりと流れた。


望遠鏡で星を見たことが、一度だけありました。

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