時代錯誤
「おむすびころりんって童話を知ってるか」
「ああ、あれだろ。かいつまんで言うと、おじいさんが斜面におむすびを落としちまって、ころころ転がるおむすびを追いかけていったら、ネズミの住んでる穴に落っこちるって話だろ」
「かいつまみすぎだが、まあいい」
「で、それがどうした」
「変だろ」
「なにが」
「普通、地面におむすび落とした段階で諦めるだろ。汚いだろ。食べられないだろ。腹壊すぞ。しかもそんな、ころころ転がったおむすびなんて」
「…。」
「つまり」
「なんだよ」
「おじいさんのおむすびは、包装しているおむすびだったということだ。恐らく、コンビニで売ってるようなビニール包装の」
「…。」
「じゃなきゃ追いかけないだろ、普通」
「…。」
「どこのおむすびだったんだろうな。ローソンかな。それともファミマ?」
「時代錯誤にもほどがあるだろ」
「三角のは転がりにくそうだから、丸いやつかな。チャーハンおむすびとか」
「…じゃ、チャーハンおむすびだったってことでいいんじゃないか」
「なんだよそのあきれ果てたような口調は」
「別に」