【飽和した幸福】
【飽和した幸福】
ある日、商人は何かがおかしいのではないか、と疑問を覚えた。
そうして思い返す。
しかし、なにもおかしくない。
商品は取らていないし、腹は膨れている。
予定に不安もなく、同じ日々を健康に繰り返している。
――だがしかし、違和感を感じる。
違和感がぬぐえず、商人は再び考えてみた。
しかし、何度思い返しても不自由はない。
間違いなく、幸福である。
――しかし……なぜか、納得がない。
違和感の正体は分からない。
幸福であるのも、間違ってない。
分からないままに、今日も商人は店を開く。
見知った顔に挨拶をして、いつのも場所に座る。
綺麗に商品を並べ、決まった金を受け取る。
昼にうまい飯を食って、夜に暖かな布団で寝る。
そうだ。
これが幸福だ。
誰もがみんなそう言って、事実商人もそう思っている。
しかし商人は、手の届かない商人を見た時に、
どうしようもなく違和感を感じてしまう。
――何かが、おかしいのではないか。
そんな疑問は形にならぬまま、ゆっくりと毎日の中に溶けて行った。
ずっと幸せだった商人は気付けない。
この町には、淘汰された不幸だけがある。
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この魔剣は、持っているだけで幸福になるそうだ。
しかし、時折幸福に違和感を覚える者が出る。
不幸なことに、この魔剣の持ち主は幸福の外側に出てしまうと伝わっている。
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