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魔剣蒐集録Ⅱ  作者: 健康な人
1章:信仰と想像の寓話
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【飽和した幸福】

【飽和した幸福】


 ある日、商人は何かがおかしいのではないか、と疑問を覚えた。

 そうして思い返す。

 しかし、なにもおかしくない。

 商品は取らていないし、腹は膨れている。

 予定に不安もなく、同じ日々を健康に繰り返している。


 ――だがしかし、違和感を感じる。


 違和感がぬぐえず、商人は再び考えてみた。

 しかし、何度思い返しても不自由はない。

 間違いなく、幸福である。


 ――しかし……なぜか、納得がない。


 違和感の正体は分からない。

 幸福であるのも、間違ってない。


 分からないままに、今日も商人は店を開く。

 見知った顔に挨拶をして、いつのも場所に座る。

 綺麗に商品を並べ、決まった金を受け取る。

 昼にうまい飯を食って、夜に暖かな布団で寝る。


 そうだ。

 これが幸福だ。

 誰もがみんなそう言って、事実商人もそう思っている。

 しかし商人は、手の届かない商人を見た時に、

 どうしようもなく違和感を感じてしまう。


 ――何かが、おかしいのではないか。


 そんな疑問は形にならぬまま、ゆっくりと毎日の中に溶けて行った。

 ずっと幸せだった商人は気付けない。

 この町には、淘汰された不幸だけがある。



 ~~~~~~~~~~~~~~~


 この魔剣は、持っているだけで幸福になるそうだ。

 しかし、時折幸福に違和感を覚える者が出る。

 不幸なことに、この魔剣の持ち主は幸福の外側に出てしまうと伝わっている。


 ~~~~~~~~~~~~~~~




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