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魔剣蒐集録Ⅱ  作者: 健康な人
1章:信仰と想像の寓話
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【膨らみ続ける幸福】

【膨らみ続ける幸福】


 とある国では、国民が非常に勤勉だった。

 真面目に働いて物を作り、

 嘘のない誠実さで商売を行い、

 賢く考えて買い物をして日々を過ごしていた。


 その国の人々は、何不自由なく暮らしていた。

 あえて不満を上げるのであれば、給料だけが上がらない。

 その程度の話であった。


 そんな中、一人の大臣がこう言った。

 ――我らの国も、魔剣を作ってみてはどうでしょうか?


 そして、その魔剣は作られた。


 ――効果は、劇的であった。


 その国では、国民がより勤勉になった。

 より真面目に働いて物を多く作り、

 より大きな利益を生み出してくれた。

 人々の力は、夢のように大きく大きく膨らんでいく。

 やがて増える事が当たり前になった時、隣国からやって来た商人はこう言った。


 ――なんだ、ずいぶん安くなったんだな。


 幸福は、ただの言葉であった。

 同じ重さの商売を終えて、ようやく人々はそれに気づいた

 今でも幸福が増え続けている。

 しかし満足までの距離感だけが、同じ速さで離れていた。


 商売を終えた人々は、少しだけ大きく息を吐く。

 まるで、薄くなった何かを胸いっぱいに吸い込むように。

 



 ~~~~~~~~~~~~~~~


 今では書物に収められている、と噂される魔剣。

 この魔剣によって大国の大臣が栄光を歩んだとも、

 国を破滅させたとも噂されている。

 ただ「比べる者は触れてはならない」という警句だけが伝わっている。


 ~~~~~~~~~~~~~~~



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