【膨らみ続ける幸福】
【膨らみ続ける幸福】
とある国では、国民が非常に勤勉だった。
真面目に働いて物を作り、
嘘のない誠実さで商売を行い、
賢く考えて買い物をして日々を過ごしていた。
その国の人々は、何不自由なく暮らしていた。
あえて不満を上げるのであれば、給料だけが上がらない。
その程度の話であった。
そんな中、一人の大臣がこう言った。
――我らの国も、魔剣を作ってみてはどうでしょうか?
そして、その魔剣は作られた。
――効果は、劇的であった。
その国では、国民がより勤勉になった。
より真面目に働いて物を多く作り、
より大きな利益を生み出してくれた。
人々の力は、夢のように大きく大きく膨らんでいく。
やがて増える事が当たり前になった時、隣国からやって来た商人はこう言った。
――なんだ、ずいぶん安くなったんだな。
幸福は、ただの言葉であった。
同じ重さの商売を終えて、ようやく人々はそれに気づいた
今でも幸福が増え続けている。
しかし満足までの距離感だけが、同じ速さで離れていた。
商売を終えた人々は、少しだけ大きく息を吐く。
まるで、薄くなった何かを胸いっぱいに吸い込むように。
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今では書物に収められている、と噂される魔剣。
この魔剣によって大国の大臣が栄光を歩んだとも、
国を破滅させたとも噂されている。
ただ「比べる者は触れてはならない」という警句だけが伝わっている。
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