竜王国編 ④ 異世界
スペンサ王国の王都には竜王エルターニンが構える魔術塔の三倍以上はずんぐりと大きい魔術塔がどっしりと王宮の側にそびえている。すっかり日が沈んだ王都では暖かな光が街中の道路や劇場、図書館、運動場、それら一杯に照らされ国民達の生活を照らし、彼らの享楽と研鑽の目は休むことが無い。それに対してそびえる魔術塔は硬質な青白色の光が窓から漏れ、謎への強い興味とあらゆる物を白日に晒す強い意志を感じる。
その魔術塔の一室では報告会が開かれていた。部屋は研究紹介の為の部屋であり、地味なクリーム色の壁、灰色のタイル床で四角くかたどられ、人の居ない部屋のような寒々しさを感じさせる。床には小さなメモ用のテーブルが取り付けられた木製の長椅子の小さなテーブルがボルトで留められ、中央には簡素な大テーブルが置かれ机上には二つのガラスケースが置かれる。長椅子には軍服を着た騎士や将校が、正装をした魔術師達が部屋へ着いた順に寒さに震えてごちゃ混ぜに座る。椅子の先頭には王レグルスと竜母レイアが貴賓椅子へ座し、大机の側にはガルの息子ラディウスの同僚の、ラーテスが糊のきいた作業着姿で大きな鞄を持って立つ。席に座る者は例外なくスカーフを付けていた。更に、重要な話がこれから始まるにも関わらず、部屋の扉が全て開き、換気用の天窓も全開であった。さて、鞄を開くとラーテスは口火を切る。
「王よ、私は手早く短く事を説明し、速い手を打たれることを懇願します。」
ラーテスは大きな手のひらを机へ向けた。
「我々は竜母レイアの協力により恐ろしいことがわかりました。ユニグラムは融合生命体であり、その素体の推定に成功しました。こちらをご覧ください。」
ラーテスは1枚の魔術符を鞄から取り出すと、
「こちらは転送の符です。指定した地点へ移動させられる物は手のひらサイズの肉団子位です。それをガラス容器へ入った格安の鶏肉へ貼り付けます。」
おどけるように小首をかしげコミカルに言った。ラーテスはガラス容器へ取り付けられた小さな引き戸を開け、符を切り出された鶏肉へ乗せた。
「転送されるまで少し時間があるので転送先の話をしましょう。」
ラーテスはもう一方のガラス容器を指し、
「さて、肉の転送先は人間の肉です。理由は後ほどお知らせします。」
転送先のガラス容器には真白い皿へ乗せられた人間の耳がポツンと置かれ、一同はじっと待つ。レグルスは生唾を飲み、好奇心から身を乗り出す。すると、溶けるように鶏肉は消え、皿の耳は黒々とした液体となった。あっ、とレグルス驚く。間髪入れずにラーテスは黒色の液体を覆うガラスを取り払うと、あのユニグラムの残骸と同じ下水のような臭いが部屋に立ちこめた。会場はどよめき、レグルスは顎を撫でて目を見開いていた。ラーテスは素早く鼻栓をすると、
「このように、ユニグラムは転移による融合体、或いは物であることがわかりました。尚、この反応は鉄と木や鉄と銅でも起こり、それらの融合物でもこの様な臭いが生じました。人間の肉と鶏肉の融合体が最もこのユニグラム臭に近いため、ユニグラムの構成要素は人肉と鶏肉に似た物であることが示唆されました。では次に、こちらをご覧下さい。」
大袈裟な身振り手振りでそう言ったラーテスは、鞄から藍色の透明なコップ一つと赤と青のビンを二つ取り出し机へ並べた。
「これは異界研究の過程から得た異界の品です。火であぶると異臭がして焦げます。これと同じ物に鶏肉を転送させた物がこの、赤い蓋のビンに入った物です。こちらの青い蓋のビンには、もう片方の耳を転送させた物が入っております。」
ラーテスは机の周りを歩きながら一つ一つ手に取り説明した。
「両ビンに入った物に違いはありませんでした。ですが、この世界の物同士の転移物と違い、これらは無臭でした。この両ビン内の転移物を切断するとドロリと崩れて異臭がします。」
ラーテスは水を一口飲み、「しかし」と前置きをして再び説明を始めた。
「覗き窓を拵え、密閉した箱で行った実験は違いました。我々は残った頭部を異界の物へ送ったのです。」
部屋は静かになる。ラーテスが口を開く前に、
「焼却したよな?聞いていないぞ?」
と宰相が睨む。
「言っておりません。腐りかけだったので先ほど行ってきた実験です。ですが焼却しましたし、していなかったら私は死んでいます。」
ラーテスは宰相と王の眼光をさらりと流す。
「私を殺す前に是非聞いて頂きたい。まだ人間、成人男性でしか行っていないのですが、異界の物へ符を何枚も使用して切り落とした頭部を転送させますと、黒々とした塊が転移先へ現れました。その塊は猛然と覗き窓から覗く我々へその凶手を伸ばしたのです。その凶手の打撃は覗き窓を傷つけました。攻撃性のある融合生命体、つまり第2のユニグラムが誕生しました。」
そう言い切ったラーテスへ、
「後で牢へ連れて行け、共に研究した者も続け。この阿呆の英雄と共同研究者達の頭へ冷や水をかけ、疲れて海綿になった聡明な頭脳へ水をくれてやるのだ。」
目頭を押さえたレグルスは力なく言うと、隣に座るレイアへ向いた。
「本当に素晴らしい活躍だった。竜母レイアを称えよう。生きて結界へ戻るが良い。」
レグルスはそうレイアへ伝えると椅子から立ちあがる。部屋はユニグラムの恐るべき事実へおののいていた。ゆっくりとレグルスは部屋の皆々へ問う。
「皆に聞きたい。外の世界は、まだ魅力的か?」
問の球は床を転がった。いらついたレグルスは皆を見渡す。
「異世界にはユニグラムと同様の化け物がアリのように蠢いているかもしれん。余は脅威であるユニグラムと異世界研究をする可能性を持つドワーフ、エルフを排除することで今を守り、より慎重に異世界へ向き合うべきだ。」
ラーテスの発表を聞いたレグルスはレイアを含めた皆を率いて同様な隣室へ移動し、進めさせていた北方の報告を聞きながらユニグラムの情報をまとめ始めた。
「去年も報告は聞いていたが、北方はやはり食い尽くされていたか。ユニグラムの発生源も北方以外解らないか。転移には間違いなく魔術師が関与しているはずで、転移符は膨大な術をかける時間が必要だが、竜であれば短期間で作製は可能である。しかしながら負荷が大きく数年は魔術が使えない。探索を続けるも、ユニグラムの現在地は未だわからず。竜母レイア、何か間違いや補足したい事はあるか?」
レグルスの問へ「間違いはございません。ですが補足することが、」とレイアは答え立ちあがるとレグルスを含む室内の皆をグルリと見渡し、
「私の見る限り、北の果てにある結界へはユニグラムは到達しておりません。また、誠に無礼では在りますが、ユニグラムの貪食性はヒトが、エルフが、かつて存在していた獣人、魚人の如き性質を持っているように感じました。転生体或いは転生生命体とでも申しましょうか。それは新たなる種族としてパンゲアへ根を張り、脅威を排除して繁栄しようとしている、そう見てとれました。」
と呼吸を整えるようにゆっくりと言った。レイアは真剣な面もちで、横で佇むレグルスへ向く。
「王よ、私は竜王国へ向かい息子を説得しますので、西のエルフと和睦してはいけないでしょうか。その大きな器で貪食性を抑え、パンゲアを包んではいただけないでしょうか?」
とレグルスへレイアは膝を折って訴えた。だがレグルスは形眉を吊り上げ、とぼけた表情で静かにレイアへ向くと、
「その不和の温床を作ったお前は何処へ消え失せる?我が国の肩を持つか?違うだろうな、お前は余へ美辞麗句を述べ、結界へ再び引きこもるはずだ。故にエルフとは戦争をする。おまえの息子は息絶え、夫は封印されたままだ。」
レグルスは更に、
「ユニグラムの性質については面白い見解だった。余も納得した。奴との決戦でその性質を利用した策を立てさせよう。我らが奴を逆に食ってくれるわ。」
とレグルスは拳を振り上げた。感化された将校、騎士、魔術師が拳を振り上げる。
「・・・」
レイアはガリと歯を噛み合わせて、何も言わず椅子へ深く腰を掛けた。
駿馬を駆ったクロメスは公平達によって丁寧に舗装された道を通り、馬三頭を潰しながら、遂に上陸港へたどり着いた。上陸港へは軍艦が停泊し、大型貨物船が2、3隻すれ違いざまに衣類、食糧や弾薬諸々の積荷をおろしては去って行く。アーギルの船はひときわ大きく錨を降ろし、堂々と夜の海原で浮く。上陸港はドワーフと獣人との間の子やその子孫達が暮らす小さな港町であったが、スペンサ王国の強襲により最後の獣血は完全に絶えた。死骸は町外れの森へ積み上げられ鳥獣の餌となった。街は拠点として改造され、倉庫近くの町役場では、士官達が忙しそうに倉庫管理に勤しむ。
クロメスはアーギルの兜を掲げて馬で港を駆け町役場へ飛び込むように入ると、
「ユニグラムが竜王国にいる可能性がある。急ぎ王へ伝えたい。先王アーギルの兜を持って先王の船を使う。」
そう宣言すると役場外の馬へとって返し、停泊する先王の船へ乗り込んだ。クロメスは瞠目する船長へ兜を掲げ、
「先王の命だ。帰国せよ。」
と石のような声で命令した。船長は彼の尋常で無い様子にうなずき、だらける船員をひっくり返し、船は錨をあげ、暗黒の吐息を天へ吐く。航行を始めた船上で船長は船長室へ戻ると壁へ寄りかかり、腕を組んで天井を見るクロメスを横目に、
「先王は如何か。」
確かめるような声色で船長はクロメスへ尋ねた。
「先王アーギルは竜王と共に死ぬ決断をされた。【魔力誘導爆弾】の誘導何ぞただの少し曲がる程度に過ぎない。爆弾の起動は時限式で術を発動させて幾ばくも無く、この世界と異世界の位相が切り替わるが範囲は狭い。製造に時間が掛かるこの爆弾が、空を支配する竜王に当たるはずも無い。だからこそ熱に強い装甲や魔術そして、鱗を破壊する貫通弾の開発を急ぎ、かの爆弾で止めを刺す予定となっている。」
言葉を切ったクロメスは船長へ顔を向ける。
「竜王とユニグラムを倒したら、次は一体どんな化け物と戦うことになる?それこそ輝く星は怪物でこのパンゲアへ降り落ちてくれるのではないか?」
「贅沢な悩みですな、騎士クロメス。我々はまだ竜王もユニグラムも倒しておりません。そのような悩みは勝利祝いの後ですれば良い。集中されよ。」
「そうであったな。諭していただき、ありがとう。私は仮眠を取ってくる。」
船長へ感謝を告げたクロメスは仮眠室へ向かおうとするも、船長室が船員にたたき開けられる。
「船長、騎士様。ユニグラムです!沖合からあの邪悪なユニグラムが、軍艦が次々にひっくり返されて!どうしましょう!」
金切り声をあげる船員の報告を聞いた二人は、甲板へ一目散に走り出した。
甲板から見える暗黒の海は地獄の様相を呈していた。ユニグラムは海中から恐ろしい力で船の底を突き上げ、船を転覆させているのである。海中でのおぞましい行為は想像に難くない。船を打ち上げたユニグラムはたちまち海中へ引っ込み、船員達は見失う。水面は装甲船の転覆で激しい波を立て、再び静寂する。クロメスは船長と共に、あの巨体があちこちに出ているのに何故もっと波が立たない、と眉をひそめる。
「全速力で国へ向かえ!急げ!我らはユニグラムの腹の中だ!」
船長はそう叫び船員達へ指示を出す。クロメスは装甲船に向かってチカチカと光を送ると、装甲船は竜王国側の港へ向かう。クロメスの乗る船は貨物船をごぼう抜きに走る。クロメスと船員達は船を操縦しつつ貨物を海へ放り投げるも、ガクンと船が揺れる。先王の巨船は打ち上げられた。クロメスと船員達はポーンと冷たい海へ放り投げられた。船員達は浮かんでいたが鎧を纏うクロメスはあっという間に海へ沈んだ。月明かりや船上の明かりが透き通った海を照らす。浮上する為、クロメスは鎧の留め具を短剣で切りほどいていると、海底の悪夢が彼の目へ飛び込んだ。海底いっぱいに光を飲み込む真っ黒なユニグラムが広がっていた。その大きさは途方も無く彼の視野に収まらない。ユニグラムは海底へ落ち、その巨体へ影を落とす船員達を狙って触手を伸ばす。長く太い腕はユニグラムの大きさを裏付ける。沈むクロメスのことは船の部品に見えているのであろか、クロメスへは触手は伸びてこない。しかし、クロメスは巨大なユニグラムへ恐怖しボコボコと呼吸を乱して溺れ、装具を外す短剣も震える手からこぼれ落ちた。スルスルと溺れる彼へユニグラムの触手が近づいてくる。クロメスは慌てて息を止めたが、容赦なく触手は彼を飲み込みこんだ。クロメスは何もすることが出来ずユニグラムへ溶けて消えた。
竜王国の上陸港は阿鼻叫喚であった。山よりも大きいユニグラムは海上へ海坊主のような姿を現し、押しよせる波のごときは速さで港へ向かっていた。港から砲撃が始まるが、発射された砲弾は巨大なユニグラムへ命中するもその爆発や衝撃はちっぽけなものである。たちまち港へユニグラムは船だまりを蹴散らして到達する。港の装甲船は、圧倒的質量に跳ね飛ばされ船だまりから巻き上げられた残骸と共に空を走る。埠頭は抉れ、荷物が積み上げられた浮桟橋は粉砕される。破壊の波は町の名残を荒々しく消し、遂にユニグラムは竜王国の戦禍へ踏み入った。ユニグラムはクロメスが通ってきた整備された道を見つけると、猛然とその巨体を傾け土煙を起こし、馬よりも速く進み始めた。
一方、竜王国 ヘレナの部屋ではドナンがヘレナの髪の毛や脂が大量に浮いた杯を持ってここまで来た道を思い出しながらエルターニンの魔術塔へ急いでいた。チャプチャプと血が杯を踊り、浮き上がった髪の毛は血と共にドナンの粗末な服を汚す。ドナンの顔や両手には返り血が跳ねており、血はパリパリに固まっている。城内は静かで誰も居ないようだった。短い足を懸命に繰り出し遂にドナンは魔術塔へたどり着いた。ドナンは杯を片手と腹で支えるともう一方の手で扉の大きな取手を引く、大きな扉だったが僅かに開いた隙間へ片足を差し込み苦労して彼は杯を持って慎重に扉が吊り下がる部屋へ入る。部屋には煌びやかな魔術で使用すると思われる道具が転がる。ドナンは部屋の中央に杯を置くとゆっくりと扉へ近づく。
『よくやった。確か自由になりたいのだったな。お前の望みを叶えてやろう。』
扉から声がドナンへ降りかかる。ドナンは腰を抜かして扉を凝視する。
「あんたは誰だ?俺の願いは違う、叶えてくれるだろ。」
『お前は自由だ。取るに足らぬ矮躯が、自由に死ぬが良い。その権利を儂が保証しよう。』
ドナンを無視し扉は決めつけると、扉は開く。開いた扉からは生臭い匂いと生温かい風が止めどなく流れ、部屋を満たす。やがて扉が大きくなり天井へ当たる。大きくなり続ける扉は、支える釣り具がちぎれドシンと床へ落ちる。ドナンは部屋から戸口へ逃げ、戸口から恐る恐る中を鼻を押さえて覗う。開ききった大扉からエルターニンのような鱗に覆われた長い腕が飛び出し床へ鋭利な爪を突き立てた。探るように腕が部屋をウロウロした後、こめかみにねじれた一対の角が生え、蛇のように平たい頭がゆっくりと伸びる。続いて、窮屈そうに一対の翼、もう一方の腕、太い両足、尖った二股の尾が姿を現し、部屋には巨大な竜が姿を見せた。扉は色を失って灰の様に崩れ落ちた。
「そこの矮躯よ、こっちに来い。」
頭を天井にぶつけながら竜はドナンを呼んだ。しかしながら、ドナンは恐怖とわずかに残った誇りでピタリと動かない。
「ドワーフ!来い!」
竜の声はビリビリと振るえ、ドナンの足は恐怖で勝手に竜へ向かう。
「それで良い。お前は何を殺した?」
「・・・ヘレナ・・・」
「何者だ?」
「妹。」
ドナンとの会話で竜はフームと唸ると、
「お前、鈍いな。確かに前に来た奴とは違うようだ。このラドンにお前は何をしてほしい?」
「逃げたい。助かりたい。外にはヒトとエルフが、竜王も怒ってる。いくらドワーフの槌と斧があっても切り抜けられないのです。」
ラドンへドナンは涙を流し、すがるように頼み込む。
「哀れで馬鹿な息子よ。ドワーフなどに関わるべきでは無かったのだ。このように妹を殺し、儂へ命を懇願する男に一体どれほどの価値がある。こいつはとんでもない奴だぞ。」
そうドナンに聞こえるように嘆いたラドンは、ため息をつくとドナンの話を訂正し始めた。
「泥よりも汚れたドワーフよ、お前は歴史を勘違いしている。儂が知る限りドワーフは小楯と長く鋭い槍で戦う戦士であった。戦槌と戦斧を両手に戦うのは獣人の勇者達だったはずだ。お前の先祖達に笑われるから覚え直しておくと良い。」
ラドンの訂正にドナンは顔を恥と絶望で朱色に染め、ラドンへ彼は問う、
「じゃあ俺達の勇ましい話は?」
「知らない。」
ラドンの言葉に「え」とドナンは呆ける。
「呆けるな。ドワーフが勇敢であったことなど記憶に無い。おまえ達に懇願されて、獣人を滅ぼしたのは儂と息子だ。おまえ達が泣いてすがりつくから、獣との間の子は残してやっただろう?」
冷淡なラドンの答えにドナンの世界はバラバラに砕け散った。ドナンは泣きじゃくり、力いっぱい扉を叩く。ドナンの柔らかな拳から血が垂れる。ラドンは爽快な笑い声をあげ、
「そうだ、ドワーフはいつも泣いていた。男も女も赤子のように!助けてやったかいも無く!寸分違わず何もおまえ達は情けない、パンゲアで最も矮小な種族だ!」
怒鳴り声をあげると、怒れる竜は泣きじゃくるドナンの胸乳から上を食いちぎった。ドナンの血だらけの両腕はゴミのように床へ転がる。
「裏切り者の卑怯な味だ。さあ逃げられたぞ。精々、先祖と嘆き合うが良い。」
ラドンは怒気を含む声でそう吐き捨てると、魔術塔の天井を紙のように破り、城の屋根へ飛び乗った。
「息子の尻でも拭いてやろう。あのとき息子へ敗れ、出来なかった儂の仕事だ。」
呆れたようにラドンは息子へ聞こえるように大声で言い、先程出て来た大穴へ向かって大口をあけた。鋭い歯が並ぶ大口から爆炎が吐き出された。吐き出された炎は、城の部屋という部屋をなめ尽くし侍女やエルフをバラバラに吹き飛ばす。満足そうに笑ったラドンは、熱によって崩れ落ちる城から大きく羽ばたく。ラドンは城下の向日葵をはげ散らし、噴煙漂うアルビオンへ向かって飛び上がる。




