水
〈通院や次何着るか秋の空 涙次〉
【ⅰ】
君繪とぴゆうちやんの(テレパシーでの)對話。*(翔吉クン、元氣ニ産マレテ來ルトイゝネ)‐(あら有難うぴゆうちやん。ところ何かぴゆうちやんの方こそ元氣なくない?)‐君繪、よちよち歩きでぴゆうちやんの傍まで行く。ぴゆうちやんの躰に触れると、明らかに發熱してゐる。(風邪、かしら)
* 当該シリーズ第92話參照。
【ⅱ】
石田玉道が呼ばれ、その診察結果はやはり風邪。たかゞ風邪と侮るなかれ。小さい子などに感染したら、事は重大化する。
君繪は消毒のゝち、ぴゆうちやんから隔離された。カンテラ思ふに、妖魔であるぴゆうちやんに風邪菌を齎せるのはやはり【魔】か。病氣の經過と共に、【魔】の動向も注視された。
病原菌をばら撒く【魔】、と云つたら、まづ「蠅將軍」ベルゼブブが挙げられる。ところが石田は、x星人の仕業ではないか、と云ふ。彼特有の第六感に拠れば、であるが。
【ⅲ】
「石田先生は何でもx星人のせゐだと云ふよね」‐尾崎一蝶齋。テオ「でもそれ外れなしなんだよ」‐じろさん「よもや【魔】とx星人が提携してゐるつて事はない?」‐カンテラ「いや、それは大いにあり得るよ」。
石田の云ふに、x星人は地球の妖魔の標本として、ぴゆうちやんを「採集」したいんぢやないかな? との事。ところが風邪でも傳染させなくちや、ぴゆうちやんは元氣過ぎて、後厄が怖い。そこでベルゼブブに働きかけ、結果世にも珍しい妖魔の風邪つぴきとなつた- と。
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〈疲れても疲れたなりのもの殘せさう思ひ俺は發言をする 平手みき〉
【ⅳ】
ベルゼブブは焦つてゐた。魔界には新秩序とも云ふべき流れがあり(前回參照)、對カンテラ一味、この儘失敗が續けば、彼は蘇生さへさせて貰へなくなる。それでx星人の使者に、ぴゆうちやんに風邪菌を傳染す事、承諾したのだ。
ところで、カンテラには、懇意にしてゐる日本で初の基督教エクソシストがゐる。名を薩田祥夫と云ふ。彼から、ベルゼブブのやうな「オールドウェイヴ」【魔】に良く効く、「聖水」を分けて貰つたカンテラ。薩田に拠れば、これを使へば、忌々しいベルゼブブの蘇生もなくなる、との事。「聖水」はカンテラとじろさんとでプールし、來たるべき對決の備へとなつた。
【ⅴ】
石田は、必ずやx星人はぴゆうちやんの容態を診に來る、と云ふ。ぴゆうちやんは見るからに辛さうで哀れ。それにこの儘昇天とでも云ふ事になると、一味の沽券に関はる。然し、x星人の挙動は「待つしかない」。(ぴゆうちやんもう少しの辛抱だ。待つてゐてくれ‐)とカンテラは禱つた。ぴゆうちやんは丸くなつて、毛布の下でじつと惡寒に耐えてゐる。
【ⅵ】
やうやく、と云ふか、x星人らしきガス體の塊が、カンテラ事務所に出現した。然もベルゼブブを連れて、である。
ベルゼブブは結界の中では、その本性が露呈し、一匹の巨大蠅のなり。カンテラ、すかさず薩田の「聖水」を振り撒き、ベルゼブブの動きを止めた。すると、だうした事か、x星人迄もが苦悶の聲を上げる。さう、ガス體となつた彼らは、地球に特有の物質、H₂Oを大の苦手としてゐたのだ。
「#¥$%<>¿‼‼」x星人は、そのガス體である儘事務所から漏れ出た。外に逃げ出したのである。だが、表では髙機能爆薬(安保さん作製)のスウィッチを持つたテオが待ち構へてゐた。ガス體は爆破の勢ひで四散した。これでx星人は当分現れないだらう。
【ⅶ】
因みに、ベルゼブブはグラブを嵌めたじろさんの手で叩き潰された。
こゝでぴゆうちやんの聲。「僕、風邪治ッタヨ!」‐カンテラ、ぴゆうちやんの頭を撫で、「良く我慢したね。偉いぞ、ぴゆうちやん」
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〈帰つても指環が拔けぬ秋湿り 涙次〉
【ⅷ】
ベルゼブブと云ふ、まあ大きな存在を消した、と云ふ事で、一味には「魔界壊滅プロジェクト」より褒賞金が出た。と同時に、x星人退治のプロ、石田玉道が「プロジェクト」、仲本堯佳担当官に紹介された。「世の中には不思議な事つて、盡きませんね」‐エイリアンと云ふ新しい外敵を知つた、佐々圀守キャップの正直な感想である。
お仕舞ひ。




