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ナチスはインディ・ジョーンズに聖杯を見つけさせる必要がある

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

パリ。

薄曇りの午後、静かなカフェのテラスには甘い香りの煙と古い街の息づかいが漂っていた。

タクトとクガイは向かい合い、熱いエスプレッソをすすりながら考え込んでいた。


「……結局、あの“力の象徴”は何なんだ?」

「歴史の中に何度も現れた可能性がある。だが――その記録は意図的に消されている。」


ふたりの言葉を、隣のテーブルに座っていた数人の男たちが静かに聞いていた。

重いコートに身を包み、低い声で短く交わすロシア語の囁き。

もしかして、彼らはロシアの学者のようだった。

やがて、ひとりの男が立ち上がった。

三十歳前後、鋭い灰色の瞳と整った髭。

その男は、まっすぐにタクトとクガイのテーブルへ歩み寄り、流暢な日本語で言った。


「初めまして。ディミトリ・ホロゾフと申します。」


その声は落ち着いていたが、どこか人間味を欠いていた。

ディミトリは微笑み、椅子を引いて勝手に座る。


「あなた方の会話が聞こえました。“力”……いい言葉ですね。」


タクトとクガイは顔を見合わせた。

異国の地で、自分たちの言葉を理解する他人に声をかけられる――その違和感が不気味だった。しかし、ディミトリは危険な男には見えませんでした。彼は非常に知的な人ように見えました。おそらく彼はロシアの学者だったのでしょう。


ディミトリはワインを一口含み、語り始めた。


「力とは――この現実を、あるべき形に変えるための“道具”です。

 世界は、生きている。すべてを内包するひとつの有機体のように。

 だが……あなた方も感じているはずだ。

 この現実は、歪んでいる。」


彼の目は、深い闇の奥でわずかに光った。


「その歪みを正すには、“力”が必要なのです。

 神でも、思想でもない。――純粋な、意志の力が。」


その瞬間、タクトとクガイは背筋を冷たいものが走った。

彼の言葉の奥に潜む“何か”を、本能が察知していた。


沈黙のあと、ディミトリは軽く指を鳴らした。

それが合図だった。


隣の席にいたロシア人たちが同時に立ち上がり、無言でふたりの肩を掴んだ。


「……何のつもりだ!」

「質問は後にしましょう。」


ディミトリの微笑は崩れなかった。

通りの喧騒にまぎれて、黒い車が静かに停まる。

タクトとクガイは、抵抗する間もなく連れ去られていった。


その頃、マダリナとスンダリは店内のカウンターにいた。

注文していたコーヒーを受け取り、戻った瞬間――

テラスには、すでにふたりの姿はなかった。


「……タクト? クガイ!?」


周囲の客がざわめく。残された椅子は倒れ、カップが地面で砕けていた。


マダリナは震える手でスマートフォンを取り出し、警察に通報する。

だが、言葉を交わす間にも、彼女たちの心は焦りと恐怖に支配されていく。


その時、スンダリが気づいた。

タクトのリュックが、椅子の下に転がっている。


中には、一冊のノート。

ページの隅には、彼とクガイの筆跡でびっしりと書かれた文字――


《力の象徴――カナタ・ジン》


マダリナはその名を見つめ、唇を噛みしめた。

「……あなたたちは、何を追っていたの?」


カフェのテラスに、パリの冷たい風が吹き抜けた。

その風の中で、彼女たちはまだ知らなかった。

この瞬間から世界の均衡が、ゆっくりと崩れ始めていることを――。

このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。

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