王にふさわしい宴
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
その珍しい事件が起こって数日が経った。
東大での講義も通常通り再開し、タクトとクガイの生活は一見、元通りの日常に戻ったかのように見えた。
だが——二人の頭から、あの出来事は離れなかった。
「あのシンボル……やっぱりただの模様じゃない気がする」とタクトが言った。
「カフェの時も、あの車の男の時も……普通じゃなかった」とクガイが同意する。
彼らが遺跡で見つけ、ノートに書き写した“力のシンボル”。
それを見せるだけで、他人が自分たちの言うことを疑いもせずに従う。常識では到底説明できない出来事ばかりだった。
「試してみよう」と、タクトが言った。
「本当に“力”があるのか、確かめるんだ」
その夜、二人は東京でも屈指の高級レストランへと向かった。
テレビや雑誌でしか見たことのないような、きらびやかな店構え。玄関には黒服のドアマンが立ち、通る者すべてに目を光らせている。
「今なら引き返せるぞ……」とクガイが言った。
「もう入っちまったよ」とタクトが苦笑しながら応える。
二人はスーツではなく普段着のままだったが、店員は一切咎めることなく席へと案内した。
席に着くと、目の前には信じられないほど高額なメニューが並ぶ。目玉が飛び出るような価格ばかりだ。
だが、ここで尻込みしては意味がない。
「一番高いステーキを二つ、キャビア、トリュフ、フォアグラ……あと、デザートも全部」とタクトが震える声で注文を告げた。
そして——彼はそっとノートから切り取った紙を取り出した。
そこには、あの“力のシンボル”がくっきりと描かれている。
紙をスタッフに見せながら、タクトはゆっくりと言った。
「私たちが注文する料理をすべて、あなたたちは提供しなさい。」
一瞬の沈黙。
しかし、スタッフは微笑み、何の疑問も抱かずに「かしこまりました」と頭を下げた。
それからは驚きの連続だった。
次々と運ばれてくる最高級の料理。
ワインはフランスの名門シャトー、メインディッシュは黒毛和牛の特上フィレ、デザートは金粉があしらわれた宝石のようなケーキ。
まるで夢のような食事が、止まることなく続いた。
「……やばいな、これ……」とクガイが呆然とつぶやく。
「マジで……本物かもな」とタクトが頷いた。
“力のシンボル”は、幻想でも偶然でもない。
それは、現実を動かす確かな“力”だった。
このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードは明日アップロードします。