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権力の象徴

これがこの物語の最終回です。皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいです。

夜。

ヨーロッパで最も高いホテルの屋上。

風が冷たく吹き抜け、雲の間から満月が覗いている。


タクトとクガイは、静かに紙を並べていた。

その一枚一枚に、あの「権力の象徴

」が描かれている。

百、二百、三百――まるで儀式のように。


スンダリとマダリナがその光景を見つめていた。

彼女たちの髪が風に揺れ、目には決意と哀しみが映っている。


クガイが呟く。

「……これで、すべて終わる。」


タクトが頷く。

「いや、“始まり”かもしれない。」


二人は視線を交わし、紙を空へ放った。

すると、全ての権力の象徴が同時に光を放ち、

空の一点へと収束していく。


光は形を取り、やがてそれは――「権力の象徴そのもの」になった。

無数の線と記号が、螺旋を描きながら一つの存在へと変わる。

それは“神の残響”。

世界の外側に触れる、絶対の象徴。


「権力の象徴」そのものが、ゆっくりと声を発した。


『我を呼びし者よ。何を望む。』


タクトが一歩前に出る。

「――お前に命じる。

この世界から、お前自身を消し去れ。

お前を覚えている者を、誰一人として残すな。」


『我を……消すだと?』


「そうだ。」

クガイの声が震える。

「お前の存在がある限り、人間はこれからも自分たちの内にある闇を解き放ち続けるだろう。。

俺たちの世界は、お前の野望にはなれない。」


光が脈打つ。

天空が震え、海のような轟音が遠くで響く。


『……命令を承認。

我は“存在”より“無”へと還る。』



──数時間前。


四人がホテルの一室に集まっていた。

テーブルの上には、無数の紙と記号。


「……本当に、これしか方法はないの?」

マダリナの声が震える。


タクトが頷く。

「俺たちが作った混乱を、俺たち自身で終わらせるしかない。」


スンダリがゆっくりと笑う。

「ねぇ……気づいてる?

私たち、もう“世界を変えたい”なんて思ってないのよ。」


クガイが首を傾げる。

「じゃあ、どうしたいんだ?」


「小さなことを、正しくやるだけでいいの。」

マダリナが紙を指で撫でながら言う。

「大きな理想よりも、一つの小さな行動が、

誰かの世界を変えるかもしれない。」


静寂。

誰も言葉を続けなかった。

だが、その沈黙の中に確かな信頼があった。


──再び、現在。


権力の象徴が天空を覆い尽くすほどに拡大していく。

世界中の空に、同時に光の模様が浮かび上がる。


そして、

“消去”が始まった。


記憶。記録。絵。声。

あらゆる情報が、静かに削除されていく。


スンダリの瞳に涙が溜まる。

「ねぇ……私たち、また会えるのかな?」


タクトは微笑む。

「もしこの世界に“偶然”という歯車があるなら、きっと。」


クガイも笑う。

「次の人生では、ちゃんと友達になろうぜ。」


風が吹き抜ける。

光がすべてを包み込む。


マダリナとスンダリの姿が、

タクトとクガイの目の前でゆっくりと薄れていった。


最後に交わした言葉は、風に溶けた。


――「さよなら」


全ての記憶が、消えた。

そして“権力の象徴

”は存在を終え、

この宇宙から完全に姿を消した。


……


……


朝。


東京大学。

二人の若い教師が欠伸をしていた。


「はぁ……つまんねぇな、今日も。」

「ほんとだよ。なんか毎日が空っぽって感じだ。」


タクトとクガイ。

彼らは、どこか遠くで何かを忘れていた。

けれど、それが何なのか分からない。


そこへ――

二人の女性の声が聞こえた。

彼らはスンダリとマダリナで、お互いにおしゃべりしていました。

タクトとクガイはスンダリとマダリナをじっと見つめた。二人は見覚えがあった。スンダリとマダリナもそれに気づき、クガイとタクトを見つめ返した。まるで以前、どこかで知り合いだったかのような気がした。四人は何か、何か大切なことを忘れていたような気がした。

タクトとクガイも、なぜか心がざわめいた。

胸の奥に、懐かしい痛みのような温もりが広がる。


スンダリとマダリナがもう一人の教師に呼ばれた。講堂で二人が講義をする時間だった。





「ねぇ、あなたたち。講堂に来ない?これから私たちの講演があるの。」

「……うん、行くよ。」


四人は笑い合う。

そして、何も知らないまま歩き出した。


青い空の下、

すべてを忘れた四人の影が並んで伸びていく。


だが、どこかで――

風がそっと囁いた。


『お前たちは、もう一度出会うために生まれた。』


――終。

この物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。最初から最後までこの物語を見てくださったすべての方々に感謝します。皆さんのおかげで、作家になるという私の夢を実現できると信じさせてくれました。本当に感謝しています。

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