エルザ・シュナイダー博士の背景。
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
ドナテッラ・トロンボーニの幼少期は、静かで、そして地獄のようだった。
両親は彼女がまだ幼い頃、事故で死んだ。
残された彼女を引き取ったのは、母方の大叔父――カトリックの司祭であり、オプス・デイの一員だった男。
だがその男は、神の名を口にしながら、最も神から遠い場所にいた。
彼は第二次世界大戦中、ナチスの高官たちと密かに取引をして莫大な財を築いていた。
「神の意志」という言葉の裏で、人間を金に換える。
彼の信仰は、常に権力の側にあった。
ドナテッラがその家で過ごした年月は、屈辱の連続だった。
食事は残飯。寝床は地下室の冷たい床。
そして――彼は命じた。
「靴を舐めろ。」
幼いドナテッラは、震える手で靴を持ち上げ、命令どおりに舌を這わせた。
涙は流れなかった。
ただ、心の奥で何かが静かに砕けていく音を聞いた。
ある日、彼女は震える声で尋ねた。
「……どうして? あなたは“神の人”なんでしょう?
なぜ、こんなことを私に?」
大叔父はゆっくりと笑った。
「神とはな、ドナテッラ。――我々の都合で形を変えるものだ。」
その言葉を聞いた瞬間、少女の中の何かが完全に切れた。
夜の礼拝堂。蝋燭の火がわずかに揺れる。
ドナテッラは祭壇の十字架の前で立ち尽くし、彼の背中を見つめた。
――いまなら、できる。
その思考が脳裏をよぎった瞬間、ためらいは消えた。
鈍い音とともに、鉄の燭台が彼の頭蓋を砕く。
血が流れ、床に滴る音が静寂を満たす。
ドナテッラはその光景を見下ろしながら、ただ一言つぶやいた。
「……生き残るのは、強者だけ。」
その瞬間、彼女は人間としての“境界”を越えた。
恐怖も、罪悪感も、跡形もなく消えた。
以後、彼女の中で芽生えた思想は一つ――
殺すか、殺されるか。
支配するか、支配されるか。
そしてその夜から、
ドナテッラ・トロンボーニという少女は死に、
「頂点の捕食者」が生まれたのだった。
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