あなたはシヴァを裏切った
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
タクトとクガイは、深い眠りの底で同じ夢を見ていた。
時間も、空間も、意味を失った領域。
そこに、風が吹いた。
――荒野。
無数の旗が砂嵐の中でうねり、血と鉄の臭いが大地を覆う。
巨大な影が馬上に現れる。
黒い鎧、炎のような眼。
その名は――チンギス・ハーン。若者のチンギス・ハーン。
だが、タクトとクガイの視線は、彼の隣に立つ“もう一人”の存在に釘付けになった。
その男の姿は、人間の形をしていた。
しかし、“理解”という概念が通用しない。
髪は闇と光のあいだでゆらめき、
服は万華鏡のように変化し続けている。
その名を――カナタ・ジン。
「あれが……神?」
クガイの声は震えていた。
その瞬間、世界の色が爆ぜた。
チンギス・ハーンが膝をつく。
カナタ・ジンは掌を掲げる。
指先から零れ落ちたのは、光でも闇でもない。
“意味そのもの”の断片――量子化された神性。
それが宙に漂い、渦を巻き、形を成していく。
円。
線。
交差。
歪み。
**力の象徴**が、そこに誕生した。
タクトの脳裏に、途方もない情報が流れ込む。
無限の世界、無限の死、無限の再生。
カナタ・ジンはある宇宙を壊す。
次の瞬間、それを正確に同じ構造で再創造する。
ある赤子の家族を殺し、みんなをコピーして再構築する。
善悪も、理も、目的もない。
「……理解できない。」
タクトが呟いた。
それは恐怖ではなかった。
ただ――絶対的な理解不能。
映像が反転する。
今度は、戦い。
無限の次元が崩壊しながら、
二柱の神が衝突していた。
片方はカナタ・ジン。
もう片方は――全体。
その姿は、古代の哺乳類――ミアキスの如き獣人。
あらゆる宇宙を統べる「全能の神」。
カナタ・ジンはその“第二の神”であり、
唯一、全体と拮抗できる存在だった。
その戦いは、無限のマルチバースを連鎖的に消し去る。
音も光も意味も飲み込む“創造の地震”。
タクトとクガイは叫び声を上げた。
その瞬間、夢が断ち切られる。
「タクト! クガイ!」
目を開けると、スンダリとマダリーナがいた。
二人は息を切らせ、スマートフォンを差し出す。
「これを……見て!」
画面には、ニュースサイトの速報。
『国際犯罪者ディミトリ・ホロゾフ、拘置所で自殺か』
映像には、イタリア内務大臣・ドナテッラ・トロンボーニが映っている。
記者の前で冷静に話しながら、
ディミトリの死を“確認”していた。
クガイが低く呟く。
「……あいつが、自殺なんてするかよ。」
タクトの指が震えていた。
「違う。
何かが――まだ、続いてる。」
その瞬間、外で雷が鳴った。
まるで、遠い宇宙のどこかで、
カナタ・ジンが再び笑ったかのように。
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