~序章~
月明かり以外何も無い、暗闇の中に、古びた古城が建っている。
古城。いや正しくは聖廟なのだが、今はその様な聖なる雰囲気とは到底思えない程の、禍々しさを漂わせている。
その禍々しさの理由は、この国に住む人なら誰もが知る所であった。
この様な禍々しさを漂う場所に、しかもこんな真夜中に、この古城を訪れたいとは誰も思わないだろう。
しかし、この暗闇の中。古城に近付く明かりが見える。
それも一つ二つではなく、無数の明かりが見える。鎧を身に纏い、手に松明を持った集団が古城を目指していた。
数はおよそ千五百。この国の軍隊、ミッドガルド軍の騎士団の姿だった。
その騎士団は古城に到着し、中に入って行く。その騎士団の中に今年入ったばかりの若い二人の兵士の姿があった。
一人は八賢者を父に持つ、青年リュート。
もう一人は、リュートの友人であり。リュートの父に引き取られ、養子になった元孤児のウェイン。
二人は、いや。この騎士団一行はある重要な任務でこの古城にやって来た。その重要な任務故なのか、それともその不気味な禍々しさを感じとったのか、いや。ここにいる「その存在」を思えば誰もが畏怖し、不安を感じるだろう……。
リュート、ウェインの両名もまた。拭いきれない不安を感じとりながら古城に入って行った……。
ー闇の皇子ー




