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第四十九話【ミザール・アザール】

 一瞬でわかった。

 こいつはやばいやつだと。


 アザールと名乗ったこの男。

 前に校長先生が言っていた人物の中にも入っていた。

 やはり魔法士教はヴァリッジ教のメンバーと同じなのだろうか。


「な、なぜ生徒でないのにこんなところにいるんだ」


 恐怖心でいっぱいだったが思い切って訪ねた。

 するとアザールは死んでいるエリアボスの方を見た。


「魔力を持たぬ者、魔法を使えぬ者、彼らはこの魔物ですら倒せない。ならッ! そんなやつはいるのかと! 世界に必要ですかぁって思ったりしません? 彼女の死は世界に魔法の時代をもたらした」

「それが何なんだ……」

「だからッ! 魔法という力を持つ者が持たぬ者の上に立てばいい。もう始まったんですよ。魔法の時代はとっくにねぇ」


 つまり力がある人達が上に立つことで世界が安全になるということか。

 確かに一理あるのかもしれない。

 でもそうすることで持たぬ者は迫害され、しまいには奴隷と化す。


 実際他の大陸では既に持たぬ者が奴隷として労働させられていると聞く。

 そんなことは絶対に許されない。


「なんですか? これにも納得しない! カァァァ、頭が働かない人達ですねぇ。本当に持つ者達なのですか? 特別だと自覚はあるのですか? それ相応の理解と行動が出来ないならそれはもう持たぬ者、無能者と同じではないかッ!」

「それが魔法士教とやらが目指すことなのか……」

「そのッ通りッ! 抗う持たぬ者は消すまでなのですよ。ねぇ? 簡単でしょう?」


 そんな言い分が通ってたまるか。

 絶対にさせない。


 僕はアザールに杖を向けた。


「……クレイ!」

「フッフッフ、この話を聞いて杖を向けるとは。これだから余計な理念を持つ魔法士は面倒くさいんですよ」

「それが魔法士さ。アイズ・サンティエッタが広めた魔法は弱き者を助ける為、決して支配の為なんかじゃない」

「抗う青年よ。一人で何が出来るというのですかぁ?」

「クレイは一人じゃないよ。だって私達が居るんだから!」


 リリーシャやシュレーナさん、アリアさんにアゼットが僕の隣に並びアザールを睨みつけた。

 

「私はあなたの意見には賛同出来ません。家族の為にも――。ここで過去を終わらせる!」

「フッフッフ、良いでしょう。ただ威勢の良い若者達よ、戦う相手は見定めるべきだ、よッ」


 地面が揺れだした。

 いやこれはダンジョン全体が揺れているのか。

 上からも小さい石が落ちてきている。

 一体何が起こっているんだ。


 アザールはローブの中から杖を取り出した。


「どうせならもっと人数が多い方が楽しめるでしょう? 私が連れて行ってあげますよぉ。死の境地へ」


 アザールが軽く杖を上下に振った。

 すると見える景色が歪みだした。


「な、何これ!?」

「どうなってるんだこれ!!」


 歪みが止まると急速に景色が上に上昇しだした。

 しかしローブなどはまったく動いていない。

 つまりは視覚が景色が上昇していると錯覚しているというのか。


「さぁ、到着、地獄の最上階ッ!!」


 次の瞬間には見覚えるある場所にいた。

 ここは零階層だ。

 しかも周りにはみんなが集まっている。

 本当にどうなっているんだ。

 わけがわからない。


「クレイ! 大丈夫だったのか!」


 後ろの方でケイト先輩の声が聞こえてきた。

 それとミネルア先生とログマネスらしき声も聞こえた。

 周りでは生徒がざわついている。


「どうしたんですかァ? 来ないのなら私からイカセてもらいますよッ!」


 アザールが天井に杖を向けた。

 

「そこまでだ。侵入者」


 アザールの杖から放出されていた魔力が突如消失した。

 しかし聞こえてきた声からアザールに何があったのか予想はついた。


 まさかただの男子寮の管理者がここまで出しゃばってくるとは。


「文句がありそうな様子だな。クレイ」

「別にそんなことはないけど」

「そうか。ならタメ口をやめろ」


 あの時吹っ切れてからもう戻せない。

 というかログマネスからしてもいきなり敬語になったら違和感しかなくて嫌だろう。


「打消……フッフッフッ、また厄介。ならこれはどうするかな?」

「全員外へ走れ!!!」


 ログマネスがそう叫ぶと他の先生が誘導し一斉に出口めがけて走り出した。

 僕らは戦う為に残ったけど。


「にゃ〜ん」


 猫が鳴いた。


「愛猫よ、葬れ」


 アザールは白猫を宙に投げた。

 するとその白猫に対して杖を向けた。

 まぶしい光と共に白猫はアザールの魔法に貫かれた。


「にゃ……」


 苦しそうな声で最後に鳴いた。


「!?」


 僕らは全員驚いた。

 地面に落下する瞬間に猫は目を覚ました。

 身体がボワっと巨大化し爪、歯が鋭く伸びていた。


「『幻覚心獣(げんかくしんじゅう)』」

「ワォォォォォ!!!!」


 白猫は僕らを無視し脱出をしている他の生徒の方へ飛んでいこうとしていた。

 

 あの白猫が集団の中で暴走したらどれだけの生徒が死ぬことか……。

 どうにかしないと。


「させませんよ!」


 生徒を誘導していた先生達が一斉に防御魔法を発動した。

 何重にもなった壁が生徒達を守っている。

 それでも諦めず突っ込み続ける白猫。


「ダメでしたか。持たぬ者よりも厄介ですねぇ」


 アザールは二回だけ手のひらを叩いた。

 白猫はアザールの元に走り、そして元に戻った。


「おっと……時間が来てしまったので帰らなくては」

「逃がすか!」

「そんな事を言われても帰らねばならないのです。次会う時は考えが変わっていることを祈っていますよ?」


 駄目だ。

 この男をこんなところで逃がしては。

 他に何かをしでかすかもしれない。


「どこへ行く気なんだ」

「本当にしつこいですよ。この私でさえあまりのしつこさにイラッと来たくらいですからねぇ、相当ヤバいですよ」

「いや、あんたの方がやばいんだから!!!」

「フッフッフ、私が何もしないからといって調子に乗りすぎですよぉ? はぁ……まだ同じ同胞だと思っていたのに、これでは仕方がありません。望み通り世界から消してあげましょう。持たぬ者たちよ!」


 ダンジョン内が激しく揺れだした。

 上からは細かい粉が落ちてきている。

 崩落させる気なのか。


 ダンジョン内には生徒は脱出に成功、残されたのは僕らとログマネス。

 最悪の事態は免れたが危険な状況は今も続いている。

 せめてみんなが離れる猶予を作らないと。


「ねぇ、クレイ、この人達いつまで倒れてるの?」

「しばらくは動かないと思う。だからアリアさんとシュレーナさんは彼らをどこか安全なところへ引きずってください」

「わかった」

「了解です」


 シュレーナさんとアリアさんは早速気絶しているグラッテとそのほかの生徒のところへ向かっていった。

 さて残りの僕らでアザールをなんとかしないと。


「アザールだっけか? 変な思想おしつけてよ、いつの時代の考え引っ張ってんだよ」

「そうよ。今はもう魔法至上主義の時代でも世界でもないの! それでも言いたいことがあるなら――」

「僕達が相手をする!!」


 僕とリリーシャ、アゼットはそれぞれ杖と剣をアザールに向けた。

 するとアザールは不敵の笑みを浮かべた。


「フハハハッ! 幾つぶりか! これは興味唆りますねぇ! いいでしょう、此処からが本当の戦いですよぉ!」


 恐れるな、自分。

 みんなを守るために、強くなるために、ここで勝たなきゃ。

読んで頂きありがとうございます。


宜しければ【いいね】【ブックマーク】【感想】【☆評価】などして頂けると今後の励みになりますのでよろしくお願いします。

次話もお楽しみに。


また誤字脱字などがありましたら遠慮なく指摘してください。

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