第四十七話【迫る彼ら】
「これは止まった方が良いぜ……」
「…………」
僕らは先行しているであろうパーティーに追いつくために必死にしばらく走った。
そして今、僕らの目の前にはそのパーティー達がいる。
三階層に繋がる階段の前に立ち僕達を通させないようにしている。
「確かにパーティー同士の争いは禁止ではないけど、ここでこんなことをしていたら他のパーティーが来て先を越されますよ」
「それで良いんだよ……その為に俺達はここにいるんだ。君達を一位にさせるわけにはいかない。ここで足止めする!!!」
「避けろ!!」
喋る男の後ろにいる男がこちらに杖を向け、詠唱し魔法を放ってきた。
僕らはその魔法を回避するために横に走った。
「同じ一年生じゃないか! 傷つけたくない、だから足止めなんかやめてくれ!」
「ふっ、バカを言うな。俺達はグラッテの言うことを聞いているだけだ。パーティーリーダーの指示を聞いて何が悪い!」
グラッテのやつあの四人以外にも仲間を作ってやがったのか。
「そこにいるのか! クレイ・グランディール!!!!! お前達の試験をここで終わらせてやる」
この声はグラッテ。
もうそこまで来ているのか。
つまり今、挟まれている。
こんなところで戦闘不能になれば試験失格。
大幅に単位を失う。
全員だ。
こうなったらもう余計なことは考えない方が良い。
今はただ前に進む。
「我が敵を燃やし尽くせ。『火炎交差弾』!!」
「ッ!?」
階段を通らせないようにしている者達に魔法を放った。
爆発と煙が起きた。
そこにシュレーナさんが風を送り込み煙は消えた。
男たちはみんな地面に倒れている。
少し罪悪感もあるがこれは仕方ないことだ。
僕達はこんなところで負けるわけにはいかない。
グラッテ達に追いつかれる前に僕らは階段を降りた。
***
三階層。
かなり後ろの方で恐らく魔物と戦っている音が聞こえてくる。
きっとグラッテ達だ。
距離は稼げたがそれでもまだ追いつかれる可能性はある。
止まらずこのまま進もう。
「そう言えば俺達、さっきからあんま魔物とあってないな」
「たまたまだと思う。各階層広いわけだし違うところに溜まってるのかも」
「そうか。ならだいぶラッキーだな」
「あぁ。それよりみんな疲れてたりしない?」
僕が聞くとみんな大丈夫と答えた。
僕のパーティーはみんな体力が化け物だ。
本当は先輩たちがいる最後の階層である三階層で一休みしてから再度出発しようかと考えていた。
でもきっと休んでいればグラッテ達が追いついて奇襲をしてくるに違いない。
「あと二階層頑張るぞ!」
***
校長室
***
校長室に一人の先生が慌てた様子でやってきた。
グリデットは一度息を落ち着かせるように言った。
先生は数回深呼吸をした。
「それでどうしたのじゃ? 試験のことで何かあったのか?」
「まだ確証は得られていないのですが複数名の教師、また治安会のルア、チユ、他数名が異常な魔力を感知したようで」
「ほう、それは五階層のエリアボスが目覚めたのではないのか?」
「どこから魔力が流れているのかはわかりません。ただ分かることはエリアボス以上の魔力であることだけです……」
グリデットは頭を抱えた。
それもそのはず、先日シルフィーネ団長に試験は安全だと言ったばかりだったからだ。
こうも立て続けにエントリア魔法学校で問題が起きてはグリデットの面子が立たない。
「ん〜、安全が確認出来るまで生徒を零階層に待機させるのじゃ。もちろん一年生以外の生徒も。その後教師で各階層を速やかに調査するのじゃ。くれぐれもエントリア騎士団にバレぬようにな。面倒なことになりかねない」
「わかりました。ではすぐに伝えてまいります」
「あぁ、気をつけるのじゃよ」
男の教師は校長室を出ていった。
「全く……今年は厄年じゃのう」
*****
クレイ視点
*****
「そろそろ四階層なんじゃないか?」
「地図的には多分そうだと――」
僕達の真横をとてつもない速さで魔法が通り過ぎていった。
魔法はダンジョン内の柱に当たり爆発した。
「クレイ、そろそろ鬼ごっこはやめにしないか? それとも何だ? 慕う仲間、他の生徒に負ける姿を見せたくないのか?」
「君こそ、そろそろ強がるのを止めたほうが良いと思うよ」
「チッ。おい、杖を持て。ここは戦場だぞ。杖を持てないやつは死ぬ」
「わかったよ。下手に暴れられても困るしね」
僕はローブの中から杖を取り出した。
「みんな先に言って攻略してほしい」
「はぁ……クレイ、あなたでも変な事を言うのね!」
「そうだぞ。何の為のパーティーだ!」
「私だって杖を握れます!」
「私達はクレイと一緒に戦う」
「みんな……」
そうだ。
僕らはパーティーだ。
みんなで力を合わせてこの男を倒す。
「茶番は終わったか? 全員来い!!」
するとグラッテの後方から六人ほどの生徒が走ってきた。
まさかあの四人以外にさらにいたとは。
一体どれだけパーティーメンバーにしているんだ。
「クレイ、私が守る」
「はい。僕もシュレーナさんを守ります」
僕とシュレーナさんはグラッテ達に杖を向けた。
「アゼット、私達も行くよ!」
「言われなくてもそのつもりだ!」
その時嫌な感じがした。
リリーシャの技……。
「リリーシャ、あれは使うなよ……」
「え?」
リリーシャの氷漬けにして斬撃を放つという技。
あれを普通の生徒が喰らえば大きな肉片に変わるだろう。
さすがにそんな光景は見たくないしさせたくもない。
「ごちゃごちゃ喋りやがって時間が持ったいねぇ!」
「それはこっちのセリフだよ。こうして戦う時間は僕達にとってとんでもなく無駄だからね」
「バカにしやがって! お前ら行け!!!!!!」
グラッテの合図で後ろに待機していた生徒がこちらに走ってくる。
メンバーはグラッテ含め10人。
そのうち六人が魔法剣士、残り四人が魔法士のようだ。
メリダに関しては魔法を使ってくるのかすらわからない。
「アゼット、リリーシャ! 魔法剣士の方は任せた!」
「おう!!」
「わかった!」
シュレーナさんとアリアさんの顔を見た。
「僕はグラッテをやります。残り三人の魔法士はシュレーナさんとアリアさんでどうにかお願いします」
「任せてください。私の力を同学年に見せつけてやりますから!」
「クレイの頼みなら全部やり遂げる」
僕はグラッテを見つめた。
「ようやくやる気になったか、クレイ」
「あの日からそうだったよ。お前なんかにリリーシャは渡さない!」
「言い切りやがって! その言葉、いずれ自分を後悔させるぞッ!!!!」
僕らは互いに詠唱を始めたのだった。
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