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第四十四話【リリーシャ強奪】

 翌日。

 ルア先輩から貰ったダンジョンの地図を食堂の机に広げ見ていた。


 地図には階層ごとの情報が書かれている。

 たとえば一階層はゴブリンなどの比較的弱い魔物が出現すると書かれている。

 階層が上がるごとに出現する魔物は強くなっていく。

 

 また広大なダンジョンには魔物以外にも罠が仕掛けられているらしい。

 これに関しては毎年場所が変わるそうで曖昧に書かれていた。


「トラップについて書かれてないのは残念だけどルートがある程度分かるから勝ち確定ね!」

「でもそうはいかないと思いますよ。現にいろいろな方向から睨まれていますし」

「気にするだけ無駄だよ」


 ここ最近はなぜか僕らは一部の同学年に目をつけられている。

 特に何かをした覚えはない。

 ドレッドのように実害が出るようなことをされないといいんだけど。


「この地図はクレイが管理しといてね。ちゃんと、なくさないように!!」

「わかったよ。他の人に見つかったら奪われるかもしれないしね。よし、じゃあ僕はこれから用があるから先に行くよ」


 地図を畳みローブの内ポケットにしまった。

 椅子から立ち上がり食堂を出た。


***


 コンコンと治安会室の扉をノックした。

 中からケイト先輩の「入っていいぞ」という声が聞こえたので挨拶をしながら扉を開けた。


「おぉ、クレイ来たか!」

「皆さん勢揃いなんですね」

「ルアはいないけどな。まぁ、そこら辺のソファにでも座ってくれ」


 僕はチユが座っている隣に座った。


「ところで話ってなんですか?」

「内容としては昨日の夜のことだ」

「ルア先輩の部屋に行ったやつですね」


 エリカ先輩が飲み物を入れてくれ目の前のテーブルにおいてくれた。

 軽くお辞儀をしケイト先輩の話に集中する。


「何か違和感を感じなかったか?」

「違和感……」


 いきなりルア先輩の雰囲気が変わったこと。

 もう一つは――。


「あの時何か魔法を使おうとしていました」

「……二人きりの部屋の中で魔法。何かをしようとしていたのは間違いないな」


 エリカ先輩がケイト先輩の机に飲み物を置いたところで話し始めた。


「昨日、あの部屋の扉を開けた瞬間、嫌な感じがしたの。それは他のみんなも感じててね、一瞬不思議な気持ちになりそうだった」

「エリカの言う通りあの部屋には何かを起こす煙が充満していた。そんな部屋にわざわざクレイを連れ込むなんてな。だがそれをする意味がわからないんだ」


 確かにそうだ。

 ルア先輩が僕にそんなことをする意味がわからない。

 それにルア先輩は出会った時から優しい人でそんなことをする人物とは思えない。


「となるとログマネスの時のようにルア先輩が精神干渉を受けていたという可能性もありそうですね」

「俺としてはその可能性がかなりあると思う。でもそうなると精神干渉を行っている人物は完全にクレイを狙っているということになる。何か心当たりはないか?」

「そんな狙われるようなことをした覚えはないです」

「そうだよな……どうにか早く犯人を見つけたいんだけどな」


 精神干渉は基本四属性に属さない特殊魔法に分類される。

 特殊属性はそこそこの腕前の魔法士で無い限り扱えない。

 一体誰が僕を狙っているんだ。


「もしこのまま犯人を長い間野放しにしていたらもしかしたらクレイくん以外の人にも被害が出るかもしれない。だからクレイくん、できるだけ私達に協力して欲しいんだけどいいかな?」

「僕に出来ることがあるなら全力で引き受けます」

「そう言ってくれると思ってた。じゃあ、今日はこれくらいだよね?」

「あぁ、急に呼んで悪かったな。みんなのところに戻ってもいいぞ」

「はい、じゃあ失礼します」


 椅子から立ち上がり扉を開けた。


「あ、そうだ。今年の試験はなんだか凄いことになりそうだからがんばれよ!」

「わかりました!」


 一体どんな感じで凄いことになるのだろうか。

 気になる。


***


 治安会室を出てみんながいる食堂へと向かっている。

 すると前から何やら睨んでくる生徒がいる。

 あれは確か、一年生の誰かだ。


「グランディール、止まれよ」

「何かありましたか?」


 リーダー的なやつの後ろに三人。

 パーティーのメンバーとかだろうか。


「リリーシャを俺達のパーティーによこせ」

「はい?」

「あいつはお前と絡むより俺といた方が幸せなはずだ」

「はい?」

「だからリリーシャを開放しろ。そして俺に渡せ」


 これは典型的なやばいやつかもしれない。

 早くここを離れよう。


「どこ行くんだよ。話しの途中だろ」

「よくわからなかったので」

「その態度を貫き通すつもりなのか? パッとしないくせに色んなやつに気に入られやがって。お前がその態度ならそれ相応の態度で戦ってやるよ」

「別に良いですけど」


 男は僕に杖を向けてきた。


「良いか。俺はお前に試験で戦いを挑む。もちろんどんな手を使っても倒す。いいな?」

「はいはい。わかりました。では僕は少し用があるので」


 僕は男の横を通り過ぎて行く。

 すると後ろから再び男の声が聞こえてきた。


「リリーシャは絶対に俺の女にしてやるからな」

「…………っ。出来るもんならやってみろ」

「あぁ、やってやるよ。奪われたくなかったら本気で来い! グランディール!!!」


 ケイト先輩が言っていた凄いことになりそうだというのはこういうことだったのか。

 確かに面倒で嫌なことになりそうな気はする。


***


「あ、戻ってきた! どこに行ってたの?」

「ケイト先輩に呼ばれて治安会室に」

「最近よく呼ばれるね」

「さすがクレイだな」


 椅子に座りながら飲み物を飲んだ。

 一応あのことも伝えておいたほうがいいのかもしれない。


「さっき廊下で同学年の生徒に絡まれたんだけど」

「また絡まれたんですか!?」

「なんだかリリーシャを奪おうとしているみたいで。それと決闘を申し込まれた」


 僕がそういうとリリーシャが「あっ!」と大きな声を出して反応した。


「もしかして口調強かったりした? 態度悪かったりした? やばそうなやつだった?」


 まぁ、確かに口調も強かったし、態度もかなり悪かった。

 総合的に高確率でやばいやつだろう。


「大体そんな感じだったよ」

「あちゃー……ついにクレイも絡まれたのね」

「その言い方だとリリーシャも絡まれてるのか?」

「うん。ちょっと前から何だけどね、付き纏ってきたりしてて。しかも一回だけ女子寮までついてきたんだよ。怖いし気持ち悪い……だから今はアリアにシュレーナに一緒に居てもらってるんだ」

「溺死の準備ならいつでも万端です」

「風で吹き飛ばす」


 そんなことがあったなんて知らなかった。

 それにしてもリリーシャを守る二人の殺意がとんでもない。


「それでその決闘はどうしたの?」

「もちろん承諾したよ」

「え……もう一度言ってくれる?」

「承諾した」

「……なんでもかんでも承諾しない方がいいよ。うん」

「あんな事を言われたんだ。仕方ないだろ」

「どんなことを言われたのかは知らないけど一人でどうにかしようとしない! 私達にも頼って!」

「もちろん、そのつもりだったよ。頼めるか?」


 僕がそういうとみんなはこっちを見て返事をしてくれた。


「よし、こうなったら絶対にあいつをボコボコにするわよ!!!」

「おう」

「あぁ!」

「わかりました!!」


 僕らはあの男をぶっ倒す為にこれまで以上に心をひとつにした。

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