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第四十二話【ダンジョン攻略試験】

「良いですか? 結界というものは発動者の特徴に左右されやすいです。なのでそこを知っておけばいつか役に立つときが来るかも知れません。ダンジョンにいる魔物の中にも使ってくるものもいますからね! では今日はここまで!」


 授業が終わり教室をあとにする僕達。


「もうすぐで一年生のダンジョン攻略試験だな!」


 ダンジョン攻略試験というものは一年の後半に行われる実技試験だ。

 試験ではこれまで授業でならったことなどを活かし学校が管理する範囲のダンジョンを攻略するというもの。

 この試験は成績に大きく反映される。

 毎年試験を失敗し数十人が落単するらしい。


「確かパーティー組んで攻略するんでしょ?」

「そうですね。今回は人数制限はありませんよ!」

「なら俺達で組もうぜ」

「そうね! 私達にはあのクレイがいるんだから一位間違いなしよ!」

「そんなことはないからやめてくれ……」


 リリーシャの言っているあのクレイというのは変な語りが独り歩きした結果、そう言われるようになった。

 そもそもログマネスとの最初の一件でさえかなり学校中で話題になったのだが今回の一件で僕が学校で唯一ログマネスに歯向かうことができる生徒と噂されたのだ。

 おかげでログマネスは事あるごとに現れるようになったし。


「ということで他の生徒にクレイを取られる前に私達で組んじゃおう。それでいい?」


 リリーシャがそういうとみんなが頷き賛成した。


***


 今は治安会室に来ている。


「チユのことありがとな。クレイにまかせて良かったと思っている」

「いえいえそんなことはないですよ。あれはチユが自ら選び行動しただけですから」

「全く君ってやつは……それより礼を言うのが遅れて悪かったな。最近は色々とバタバタしていてまとまった時間を取れなかったんだ」


 あんな大きな出来事があったらその処理で大変だったことは何となく想像はつく。

 お疲れ様です、治安会。


「それで確か一年はもうすぐ試験だよな」

「はい」

「パーティーはもう組んだのか?」

「シュレーナさん達と組むことにしました」

「おぉ、そうかそうか。あれ気をつけろよ」

「気をつけるですか?」

「あぁ、あれたまに死人出るからな!」


 いやとんでもない事をそんな笑顔で言われても。


「そ、そうなんですね……アハ…ハハ……」

「まぁ、安心しろ。いくつかの階層には上級生がいるスポットがある。何かあれば助けてくれるさ。さらに安心しろよ。そこにいるのは成績、実力ともに優秀な生徒ばかりだからな!」

「わかりました」


 助けてくれるとは言え、それでたまに死人が出ているんだからあんま安心できないのですが。


「じゃあ、僕このあと授業があるので行きますね」

「あぁ! いつでも来いよ!」

「はい、失礼しました」


 扉を開けて出ようとした時、こちら側に扉が開いた。


「あっ」


 そこには教科書を抱えたチユがいた。

 特に何も話しかけることはなく部屋を出たらチユが「へ、へんたい」とか言った。


 なんでいきなりとは思ったが立ち止まりチユの方を向いた。


「どうしたんだ?」

「あ、あ、あああ……」

「?」

「……ありがと」


 なぜか照れながら言う。

 そんなことをされたらこっちまで照れてしまいそうになる。


「そ、そそれだけだ! は、はやく戻れ!」


 チユは扉をバンっと閉め治安会室へと入っていった。


「素直じゃないな、あいつ」


 僕はそんなことをつぶやきながら教室に向かった。


***


 あれから三日後。


 僕らは資料室に来ている。

 ここには娯楽雑誌、文献、歴史書、魔法書などとにかく様々な種類の本が置かれている。


「んでダンジョンのことで何かわかったことはあるか?」

「どれみたらいいのかわかんない!」

「でしたらこちらを」


 アリアさんが大量に積み重ねた本を机の上に置いた。


「これらは学校が所有しているダンジョンに関することが書いてあります。出現する魔物、階層ごとの特徴などなど」

「えぇ……これ全部読むってこと?」

「はい!」

「やだやだ! もっと頭使わないのないの?」

「確かにそうだけど文句を言ってたらどうしようもないからなぁ」


 僕でもこの量を目の前にしたら嫌になる。

 どうにかみんながわかりやすく知れる方法はないのだろうか。


 そんなことを思っているとシュレーナさんが一枚の紙を持って来た。

 折られていた状態を解き机に広げる。


「なんかあった。使えそう」

「こ、これは簡易地図でしょうか……?」

「凄いよ、シュレーナさん! よく見つけたね!」

「これくらいお安い御用」


 シュレーナさんが持ってきた紙には詳細には書かれていないが簡易的に情報が記載されている。

 特に有り難いのは階層ごとの経路が書かれていることだ。

 ダンジョンなんて迷子になって行方不明になるのがほとんど。

 この地図があればある程度は進めるはず。


 だが一つ問題がある。

 多分この地図は持っていけない。

 なんせこの資料室には貴重な情報もあるため資料の持ち出しは禁じられている。

 しまったな。


「模写すれば良いんじゃないか!」

「確かにそうかもしれませんね。では早速紙と筆を持ってきます」


 アリアさんが立ち上がろうとした時背後から知らぬ声が聞こえてきた。


「模写と言いましたか?」


 まさか資料室の管理人が今後ろにいるというのか。

 資料の模写もかなりグレーな行為だが大丈夫なはず。

 多分大丈夫なはずだ。


 説明すれば怒られない。

 そうなはず。


「い、いや違うんです。これは――」


 説明するために振り返った。

 そこには見覚えのある足が……姿があった。


「ルア先輩!?」

「久しぶり、クレイくん」

「あの時は有難うございました!」

「良いんだよ。それよりまた大変な目にあってたみたいだけど大丈夫?」

「あぁ……まぁ、大変でしたけどなんとかなったので」


 何だろうか、相変わらず凄い。

 立ち振る舞いなのかそれとも細かい所作なのか雰囲気なのか。

 こうして話しているとなぜかルア先輩にのめり込んでいくような感覚。

 惹きつけられている。


「それでみんなは今何をしているの?」

「もうすぐ試験があるのでその対策で」

「それで模写をしようとしてたの?」

「はい。事前にダンジョンの詳細を知っていれば有利に進めるかなと思ったので。ですが資料室の物は持ち出し厳禁なので……どうしたものかと」

「あぁ! 私この間もらったダンジョン地図あるから貸してあげるよ」


 ルア先輩、神すぎる。

 やはり持つべきは先輩。

 

 最近知った話なのだがルア先輩は一部では美脚の聖女と呼ばれているらしい。

 まさにその名の通りだと聞いた時は頷いた。


「本当ですか! ありがとうございます!」

「地図は寮にあるから」

「明日授業の合間に受け取りに行きます」

「いや、いいよ。今日の夜、クレイくん一人で女子寮の入口前に来てね。じゃあ、またあとでね」


 ルア先輩はニコッと微笑み去っていった。

 残された僕らはただただその場に固まっていることしか出来なかった。

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