第三十五話【魔法祭開幕】
「んでどーする?」
「そうだなぁ」
「ひとまず授業がこのあとあるしそのあと決めよう」
僕らは自分達のクラスに戻った。
***
今日は久しぶりの共通教科がある日だ。
こうしてアゼットやリリーシャと一緒に授業を受けるのも新鮮。
「皆さんも知っているとは思いますがもう時期、エントリア魔法学校の一大イベントである魔法祭が開催されます。魔法祭は魔法士、魔法剣士の実力を見せる場です。個人で出るも良し団体で出るも良し。好きなようにしてください」
周りがざわつき始めた。
まぁ、無理もない。
なんせ僕らにとっては初めての学校行事だから。
「はい、静かに。この魔法祭は皆さんのこれからの人生を形作る行事です。昨年は冒険者ギルド会長、エントリア王国国王、また他国の国王や領主、宮廷魔法士の皆さん、団長、兵士長、騎士団長、他大陸から来る方もいらっしゃいました。魔法祭で活躍すればそんな方々の目に留まりスカウトされることもあります」
無論、スカウトされればその人の人生は圧倒的勝ち組だ。
宮廷魔法士やプロの冒険者、騎士団入りなんて誰しもがなれるものではない。
だから魔法祭は毎年大勢の生徒が出場する。
単位大幅損失の可能性があったとしても。
「先生ー」
後ろの方で一人の生徒が手をあげた。
「なんですか。ウェンダー・コリビアン」
「去年は誰かスカウトされましたか?」
「勿論されましたよ。五年生でウェンツェ王国の宮廷魔法士に。三年生では魔法協会会長から直々にスカウトされている生徒もいましたね」
魔法協会とは魔法士、魔法剣士、治癒士など魔力を有する者をまとめる組織的なものだ。
僕ら生徒はいずれ大人になり魔法協会に認められると一人前の魔法士になることができる。
さらに魔法協会の会員の中で才能があると階級が上がっていきプロの魔法士としてやっていくことができる。
「ですから皆さんもスカウトされるように頑張ってください」
***
食堂で食事を取りながらこれからのことについて話し合っている。
「なぁ、どうする? 本当に」
「バランスを考えたらチユを入れるのは確定であとは魔法士が一人、魔法剣士が一人の方がいいよね」
「じゃあ、その出る二人をぱっぱと決めちゃお。まずは魔法士の方で。やりたい人ー」
リリーシャがそう言うと誰も手をあげない。
「これじゃあ決まらないって! なんで挙げないの、アリア」
「まとめるのが得意ではないのでここはクレイさんが良いと思って。私は個人戦に出よっかな?」
「私も同じ。クレイが適任」
「じゃあ、クレイで決まり」
まさかの僕の意見を言う時間はゼロ。
そして勝手に話しは進んで行く。
「魔法剣士の方は誰にする? はいっ!!!」
「俺がやるぜ!!!」
リリーシャとアゼットが勢いよく手を挙げた。
二人揃ってなんて仲が良いんだ。
「アゼット、手を下げて」
「そっちが下げればいいだろ」
「下げて」
「下げろ」
「下げて」
「下げて」
あぁ、なんて仲が良いんだ。
「リリーシャさん、男同士にしかわからないこともあります。なのでここは譲ってあげてはどうでしょう?」
「でも、私だって一緒に戦いたいのに!!」
「ここは譲って貸しを作るというのも良いと思いますよ」
「……確かに。わかった。今回は譲る。ただし貸しイチね」
さすがアリアさん。
まとめるのが上手だ。
ってあれ、これ僕じゃなくてアリアさんの方が良かったのでは。
アリアさんがこちらを見て微笑んでいる。
策士め。
「じゃあ、改めてよろしく。チユ」
「よろしくな!」
「よ、よよよろしく……」
***
あれから数週間が経過した。
学校内は既に魔法祭に参加する人達が準備をし始めていた。
魔法祭開催まで残り二日。
僕らも魔法祭に向けて各々練習をしている。
ちなみにリリーシャは個人戦に出るらしい。
「お前がクレイってやつか」
「なんか普通のやつっすね」
「これはこちらの圧勝かもですね」
廊下を歩いていると柄の悪い人たちが僕達に絡んできた。
「チユも入れてんのかよ。大丈夫か? そいつ無能者だぞ?」
「…………」
「大人しく治癒士専攻にでもしておけば良かったのにな。お前のせいで三年の魔法士はレベルが低いって思われるだろ」
「…………」
チユはずっと地面を見て無言。
いきなりやってきて一体何なんだこの人たちは。
「いいか。クレイ。ちょっと凄い事したからって誰からでもチヤホヤされると思ってたら大間違いだ。少なくとも俺はお前が邪魔でしかたない」
「そうですか」
「何だその反応は。今回の魔法祭でお前をボコボコにし単位を損失させた上で全員からの評価をさげてやる」
「できるように頑張ってください」
普通に対応しているだけなのにその男は怒りローブの中から杖を取り出し僕の額を指してきた。
「なめるなよ。覚えておけ俺は三年、ドレッド・ファシンス。絶対にぶっ倒してやる」
そう言い残しドレッドと名乗った男とその両隣にいた男の人は廊下を歩いて去っていった。
「チユ、大丈夫か?」
「い、いいいつものことなので……」
「ドレッドってあのドレッドよね。多分」
「どのドレッドだ? 有名だったりするのか?」
「なんで魔法士のあなたが知らないのよ」
アスト先輩からこの学校については色々聞くがその人の話を聞いたことはない。
「何やら大変なことになったみたいだね」
「ア、アスト先輩!?」
「三年、ドレッド・ファシンス。彼は土属性を得意としているんだ。とくに三年生の中でもトップに入る実力で次期治安会会長になれるとまで言われているんだよ。でも彼はプライドが高いからね。まぁ、勝てると思うよ。いつも通りやればね。応援してる。じゃあ、これから授業だからじゃあね」
そう言って教科書を持ったままアスト先輩は去っていった。
「いつも思うけどあの人いきなり現れてはいきなり授業に行くよね。何なの」
「でも良い先輩なんだよ。僕に色々な魔法を教えてくれたし」
「それよりどうするんですか。次期治安会会長になるかもしれないと言われている人が相手なんて……本当に大丈夫なんですか!」
「なんとかなるだろ。俺達三人にかかればどんな敵だって余裕だ」
「そうだな」
「…………」
チユはまだ納得してなさそうな表情をしていた。
***
「さぁ、ついにやって参りました、魔法祭!! 今回司会を努めますのは五年、アルリフォードです!! 今回の魔法祭は過去最大出場者数、強者揃いです! 果たして誰がこの学校のトップに輝くのか!!! それではまず校長より!」
「今回は多くの生徒が出場してくれたこと大変嬉しく思っておる。皆、実力を存分に発揮して欲しい。では改めて。これよりエントリア魔法学校魔法祭を開催する!!!!!」
大きな破裂音とともに会場は歓声に包まれた。




