第三十四話【治安会と魔法祭】
二週間の休暇が終わり僕らは学校に帰ってきた。
「どこも慌ただしいな」
「まだあの一件で事後処理でもしてるんじゃないか」
みんなで暇が出来たので久しぶりに話ながら廊下を歩いている。
「クレイは何してたんだ?」
「とくに何もしてないよ」
というのは嘘。
僕にとってあの二週間はどんでもなく地獄だった。
やはり気安く女子と一つ屋根の下で生活を共にしないほうがいい。
寝ぼけて無防備なリリーシャ。
下着を部屋に置いておくリリーシャ。
定期的に寝相の悪いリリーシャ。
父さんと暴れるリリーシャ。
リリーシャのパンツを見せてくるシュレーナさん。
ロクでもない休暇だ。
だがこんなことを他の人に話すなんて到底できない。
心のどこかにでもしまっておこう。
「アゼットとアリアさんは何かしたりした?」
「私は湖で魔物の腕を使って魚を釣りました!」
ん? 今魔物の腕でって言った。
アリアさんってリリーシャみたいに奇行するタイプだったっけ。
よし、これも心のどこかに静かに留めておこう。
「俺は勿論毎日特訓したぜ。いつログマネス先生の時みたいになるかわからないしな」
「さすがアゼットだな」
「ちょっと私もやってたよ! クレイ!」
「いや……」
「何、その顔! ほんとだよアゼット! ちゃんとやってたから」
僕とアゼットは目を合わせ小刻みに首を上下に動かした。
「何? 察してやれと言わんばかりの頷きは!」
「わかるんだ」
「もしかして馬鹿にしてる? 私忘れてないからね。クレイが見たの」
「見たって何をだ? そこを詳しく」
「リリーシャが桃色の――」
リリーシャは僕の口を手のひらで覆ってきた。
「そこを詳しく言う必要はないでしょ!」
「なんだかこういう絡みを見るの面白いですね」
「面白い」
「見世物じゃないんだけど」
すると誰かが僕らの進む道の先で一人を囲い何かをしていたのが目に入った。
「あれ、何してるんだろう?」
「言ってみようぜ」
僕らはその場所へ向かった。
***
「どうしたんですか?」
喧嘩ならこちら側は低姿勢から入る。
僕らまで巻き込まれるのは嫌だからね。
思考をフル回転させながら立ち回りについて考えていたが多分それは意味がなかった。
なぜなら今僕らの前にいる人達はそんなことをする人物ではないからだ。
「もしかして怪しく見えたか? それならすまない」
「ほらあんたが圧かけるからでしょ」
「いやいやかけてない。だよな?」
「……」
「かけてるじゃない」
「あ、あの……」
蚊帳の外状態を脱却する為声をかけた。
「何かあったんですか?」
「もうすぐで魔法祭だろ? それで治安会からも三人選手を出さないと行けないんだ。魔剣士部門は個人戦に俺とエリカが出る。残すはルアかチユしかいないんだ。でもルアは絶対にやらないって言っててだな。チユの為にも団体戦にしようと思ったんだが一人一種目までなうえに一度出場表明をしたら変えられないってミネルアに言われてな」
もし最初にチユさんがその誘いをされて断っていたらルアさんがこんな状況になっていた。
チユさんは運が悪かったみたいだ。
「わ、私、そ、そその魔法士とは名ばかりですし……」
「チユは治癒魔法を使えるんだが基本四属性が苦手でな。それでも魔法士専攻で入ったんだ」
「ま、ままま魔法も使える、ち、治癒士は強いと思ったから……」
モジモジしながら話すチユさん。
なんとかしてあげたい気持ちもあるが魔法祭に出場する気はない。
ご縁がなかったということですいません。
「いいこと思いついた!!!」
リリーシャが大きな声でそう言った。
だが嫌な予感しかしない。
「チユは治癒士、私とアゼットは剣士、クレイとアリアとシュレーナは魔法士、これ良くない?」
リリーシャが何を言いたいのかわかる自分が嫌だ。
「そういうことか。君達とチユがパーティーを組んで団体戦に出れば治安会から三人という条件を達成できるってわけか!」
勝てばたくさん単位が貰えるからいいのだが最下位にでもなれば大量の単位が没収される。
そんあルールがあるのに多くの人が毎年出場すると聞く。
その理由は簡単で勝てば目立ち、魔法士として魔法剣士としての地位が徐々に上がっていくからだ。
「それで他のみんなはどうだ? 別にこれは強制じゃないから安心してくれ」
「おもしろそうだし俺もやるぜ」
「私もやります」
「やる」
みんなが僕のことを見てくる。
既に意見は決まっている。
一回くらいみんなでこういうことをやってみてもいいのかもしれない。
「やります!」
「おぉ!! じゃああとはチユ。やってくれるか?」
「そ、そそそんなに言うなら、考えなくも……」
「ほんとかありがとう!! さすが我らのチユ!!!!」
男の人はチユさんの手を掴み激しく上下に振った。
「か、かかいちょう……」
「こーらっ。チユちゃんが困ってるでしょ」
「あはは、すまない。つい嬉しくて。あ、そうだな。まだ挨拶もしてなかったな。俺はエントリア魔法学校治安会会長の五年生、魔法剣士専攻のケイト・ルアンダーだ。よろしくな」
治安会というのは学校から様々な権利を与えられ学校の治安を守る。
治安会は会長と副会長は優秀な生徒から選ばれる。
そんな彼らには強制魔法執行権という恐ろしい権利が与えられている。
本来このエントリア魔法学校では授業以外では戦闘を禁じられているのだが治安会だけは治安を守る為に許されている。
つまり権利を与えられている治安会に喧嘩を売ると痛い目にあうということだ。
「私は治安会の会計をしてる五年生、魔法剣士専攻のエリカ・ルアンダー。よろしくね〜」
「ルアンダーって……一緒」
「あはは、バレちゃった? 実は私達幼馴染で婚約してて……あーなんか恥ずい……」
「婚約……凄い! 確かによく見えればいい夫婦!」
四年生頃から婚約、結婚する人は多いとアスト先輩が悔しそうな顔をしながら言っていた。
「……未来の私達」
シュレーナさんはそんなことをボソっと言いながらこっちを見る。
いや僕の横か後ろでも見ているのかもしれない。
だがその言い方はやめといたほうがいい。
「次チユちゃんの番」
「あ、ああ、あ」
「落ち着いて。ゆっくり」
「わ、わわわ私は治安会書記の三年生……治癒士だけど魔法士専攻です……」
「あと名前」
「あ、ああ、わ、わ私はチユ・リネーリア、です。よ、よろしく……ふふ」
なんで最後笑ったんだ。
怖いんだが。
「それでこの場にはいないんだがもうひとり、治安会副会長の三年生、魔法士専攻のルア・シルフィーネがいる」
ルア……ログマネスとの戦いのあと保健室に行きそこで出会った女性か。
まさかあの人が治安会の副会長だったとはな。
***
治安会の皆さんの自己紹介が終わり僕らも一通りの自己紹介をした。
「君達は最近話題の! 俺の目は正しかったようだ! チユを頼んだぞ!!」
「チユちゃんを任せたから! くれぐれも焦らせないようにね!」
手をこちらに振りながら奥へと歩いていった。
そして取り残された僕達。
「よろしく、チユさん?」
「うげっ……」
挨拶されただけでその反応!?
僕何かしたのか。
「ご、ごごめん。わ、私さん付けとか、されたことないから。違和感だった」
「そ、そうなんですか」
「け、敬語はいい。変だし」
まぁ、確かにあのフレンドリーな二人の近くにずっといたらそう感じてしまうかもしれない。
「じゃあ普通に」
「お、おおおう。よ、よろしく……」
「よろしく」
これで本当に良かったのかと思うところもあるがひとまずこのメンバーで魔法祭団体戦の勝つ。
***
事務に出場表明をしに来た僕ら。
「――というメンバーで団体戦に出場します!」
すると事務の人は難しそうな表情をし始めた。
まさか学年が違うとだめなのか。
「魔法祭の団体戦は一組三人までです……」
「そうですか。わかりました」
ってなんでだよ!!
そんなことあの会長言ってなかったのに。
というか治安会から三人出さないといけないのって治安会に団体戦に出てほしいからじゃないのか!?




