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第二十七話【花探し】

 リリーシャの故郷、アグアス村。

 長い時間をかけてようやく到着した。

 

 辺りは日が暮れ薄暗くなっており頼りになるのは馬車につけた火の光だけだ。

 奥に光っている火を目印にリリーシャの家に向かった。

 火の光りに近づくと馬車の音に気づいたのか家の中からラルスさんが出てきた。


「大丈夫だったか!!!!」


 家の前で馬車を止めた。

 すると勢いよくリリーシャが馬車から飛び降りてラルスさんと抱き合った。

 遅れて家の中からミナさんと村長が出てきた。


 二人も心配そうな表情をしていたがリリーシャを見た瞬間に安堵の笑顔を浮かべていた。

 そんな姿を見て隣に座っていたシュレーナさんと見つめ合ったあと僕らも馬車を下りた。


「三人とも無事でよく帰ってきてくれたねぇ」

「はい。おかげさまで」

「それでもうオルス村に帰るのかい?」

「あぁ! それなんですが少しアグアスで過ごした後にリリーシャと一緒にオルス村に行こうと思ってるんです。あ、連れて行くのはまずかったりしますか?」

「そんなの構わん構わんよ。それじゃあここに残る数日は出来るだけもてなすよ。ミナさん、早速取り掛かろう」

「わかりました」


 相変わらずリリーシャの家族はみんな優しい人ばかりだ。

 母さんもこれくらい優しかったらなんて思ってしまう。


「ほら、二人共来て!!」

「クレイ、馬車は俺がやっておくから荷物を持っていきな」

「ありがとうございます」


 ラルスさんの好意に甘え馬車の荷台から荷物を取り家の中に向かった。


「二人共前回使った部屋があるからそこに荷物置いてきてね」


 慣れた手付きで料理をするミナさんにそう言われ僕とシュレーナさんは階段を登った。


 前回の泊まった部屋……つまりまたシュレーナさんと同じ部屋ってこと。

 あの時は話すようになってからすぐの出来事だったからただきまずいと一言で片付けられたが今はそうはいかない。


 一緒に行動を共にするようになってかなりの月日が経った。

 そうなるといろんな思惑が絡み合う。

 そう、色んな。


 一応聞いてみた方がいいかもしれない。


「シュレーナさん、同じ部屋ですけど、その、大丈夫ですか?」

「大丈夫」


 即答。

 シュレーナさんは僕と同じ部屋で過ごすことに対して何も思わないのだろうか。

 それだと逆に悲しい。


「そ、そうですか」


 扉を開け、部屋の中に荷物を置いた。

 そして一緒にみんながいる下に降りた。


「あ、お母さん、私達明日に出発するから!」

「明日!? そうなの、クレイくん?」

「え、あ、いや知らないです」


 突拍子もないことを言うリリーシャ。

 もちろん周りにいるみんなは困惑でしかない。

 

「そんなに急がなくても休暇はまだあるからもっとゆっくりしてもいいんじゃないかな?」

「いや!! 早くオルス村に行って会ってみたいじゃん!!」

「良いじゃないか。いつでも戻ってこられるんだから。それにリリーには二人がいるんじゃ。心配することはないよ」

「おばあちゃん!」


 早く出発するのはいいんだ。

 僕だって早く母さんや父さん、村のみんなに会いたい。

 でも、でも馬車を動かすのは僕。

 正直、疲れた。

 休ませてくれ。


 早く行けることがわかり目をキラキラとさせるリリーシャに対してそんな事を口にすることも出来ずただ我慢。


「お母さん! ご飯まだ〜。早く食べて早く寝て早く行きたい!」

「待って、今やってるんだから」

 

 リリーシャはミナさんのところに行き謎のダル絡みをしている。

 早く食べたいのに作る邪魔をするなんて本末転倒だ。


「クレイくん、ちょっと外」


 シュレーナさんが僕のローブをちょいちょいと引っ張ってきた。


「外、ですか? 馬車に何か忘れてきましたか?」

「ううん、来て?」

「わかりました。ミナさん、ちょっと外に行ってきます!」

「あまり遅くならないようにね!」


 僕はシュレーナさんと一緒に外に出た。

 外は夜になりかなり暗い。


「それでどうしたんですか?」

「ここで綺麗な花を一緒に探そ」

「花ですか? 良いですけど……」


 家があまりない方に歩いていく。

 だがそうなると明かりもなくなり全く何も見えない。

 

「っひゃ!」

「!?」


 シュレーナさんが突然声を出し倒れそうになっていた。

 石か何かに躓いたのだろう。


 僕はとっさに腕を伸ばしシュレーナさんの体を捕まえた。

 ゆっくりと引き戻した。


「大丈夫ですか?」

「うん、ありがと」

「でもやっぱり暗いと危ないですし戻りましょう」

「大丈夫」


 シュレーナさんはローブの中から杖を取り出した。

 すると杖先を上に向けた。


「軽く魔法を使う」


 杖先には小さな火が現れそれは辺りを照らす。

 これは生活魔法学で習った魔法だ。

 比較的簡単に無詠唱で発生させることが出来る。

 だがその魔法に攻撃性はないので戦闘に応用することはできない。


「これなら明るい」

「じゃあ僕も」


 ローブの中から杖を取り出し同じ様に火を発生させた。

 二人で使えばそれなりに明るくなりこれなら花を探せる。


***


「かなり探しましたけどありそうなのはここくらいですね」


 雑草が生い茂る中に所々に咲く花。

 他のところも探したがここ以上に花が咲いている場所はなかった。


「ここで探そ」


 僕らはしゃがみ込み綺麗な花を探す。

 シュレーナさんがどんな花を望んでいるのかはわからないが。


「お母さん、明後日誕生日なんだ」

「そうだったんですか! あっそれで花を贈る為に」

「そう。お母さんは花が好きだから」

「シュレーナさんの花好きはお義母さん譲りなんですね」

「うん。昔は沢山花のことを教えてもらったの。昔は……」

「…………」

「クレイくん、ちょっと話聞いてくれる?」

「……はい」


 それがどんな内容なのかなんとなくわかってしまう。

 シュレーナさんが過去に抱える何か。

 本当に僕が聞いても良いことなんだろうか。


「私は――」

「あぁ!!! いた! ちょっとどこまで行ってるの。もうご飯出来たって」

「ごめん、今行くよ。シュレーナさん、また後で探しましょう」

「うん」

「二人のその火がなかったらわからなかったよ!」

「そうなのか」


 辺りは一瞬にして真っ暗に。


「なんで消したの!!? 暗い暗い! つけてって!」


 リリーシャ、いつもテンション高いけど今日はかなりテンションが高いな。


***


「はぁ〜〜」


 今日の料理はかなり量が多く久しぶりにお腹がいっぱいになった。

 となると眠くなるので二階に来てベッドで横になっているのだが――。


「なんでリリーシャはこの部屋にいるんだよ」

「えぇ、いいじゃん。せっかくの泊まりなんだし」

「前来た時はそんなんじゃなかったのに」

「それは仕方ないじゃん。私だって初対面の男の子といきなり寝たりなんて出来ないし」


 それは確かにそうか。

 出来たらそれはそれで危機感がなさすぎるしな。


「安心して私はシュレーナのベッドで寝るから。良い?」

「うん」

「ありがとー」


 リリーシャはシュレーナさんに抱きついて横になった。


「じゃあ、僕は寝るよ。おやすみ」

「はーい、おやすみ。明日もよろしくね」

「おやすみ」


 明日もよろしくね、か。

 リリーシャに馬車の操作の仕方を教えるべきか。


***


「よし、準備は出来たか」

「ご飯美味しかったです。色々ありがとうございました」

「気にすんな。また来いよ! いつでも待ってるからな!」

「はい! またいつか!!」


 僕らは馬車に乗り、故郷オルス村へと出発した。

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