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第二十二話【先生】

「おい、嘘だろ……」


 僕らの目の前には複数体の魔物、そして変異型の魔物が立っていた。


 変異型はアイズ大陸と呼ばれ出したオリジン暦136年より前から存在していると言われている。

 数十年、あるいはそれ以上の歴史の中で変異型が魔物と群れを成しこの様に都市に現れたなんて情報はまったくない。

 なのに今、どうしてここに変異型が。


「クレイ、変異型との戦闘経験あったんだよな」

「あるけど……あれはたまたまみたいなものだったし」

「そうか。でも退けないよな」


 ここから逃げようと思えば不可能ではないかもしれない。

 ただシュレーナさん達がいるであろう方向からは遠くなるしもしかしたらこの変異型は標的を変えて抵抗出来ない者達を襲い始める可能性だってある。

 だからすでに僕がやることは決まっているということだ。


「アゼット、逃げないよね?」

「言ってくれるなぁ。逃げねぇよ!」


 魔力の流れ。

 一滴も零さず体を巡らせる。

 

 魔物を一撃で葬り去る。

 それくらいの想いで。


「火の加護を与えし者よ、焼き尽くす火の力を今ここで解き放ちあの者を灼熱で滅ぼせ。『火焔(フレイム)』!!!!!」


 立ち塞がる魔物を大きな炎で包み込む。

 燃え盛る炎には暴れ狂う魔物のシルエットが見える。


 だがその中で唯一動かない巨体。

 やはり変異型は一撃では葬れないのか。


「さすが魔法士だな。全体攻撃が凄まじい! ということでここからは俺の出番ってことだな」


 アゼットは鞘を左手で握り、右手で柄を握った。


「火の加護を与えし者よ、力を一点に集中させ、内で燃え盛る炎を我が剣に宿せ」


 鞘から剣を勢いよく引き抜くと刃の先端からボワッと炎が現れそれは刃全体へと広がっていった。


「『炎斬(フレイム・スラッシュ)』!!!!!!!!!!」


 それはほんの一瞬の出来事だった。


 アゼットが走り出すと炎は激しく靡き、背を照らす。

 変異型が行動を起こす前にアゼットは剣を振りかぶり、そして剣にとてつもない力をかけて振り下ろした。


 熱くなった剣はいとも簡単に変異型の体に入り込み勢いが落ちることなくその体を文字通り一刀両断したのだ。


「授業一緒じゃないからわからなかったけどアゼット強いんだ」

「そりゃあそうだろ! 毎日練習してんだからよ」


 余裕が出来たところで辺りを見回してみる。

 かなりの数の家が破壊されている。

 だが特に人が倒れている様子もなければ逃げ遅れたという人の気配もない。


「シュレーナさん達を探そう!」

「だな!」


***


 あれから数分、エントリア魔法学校からそれほど離れていないところを探索していた時、ちょうどこちらにシュレーナさん、アリアさん、リリーシャさんが走ってきた。


「三人とも!!」


 見る限り怪我などはしておらず無事なようだ。

 なんだか一安心。


「クレイくん、大丈夫だった?」

「はい。そちらは大丈夫でしたか? 変異型の魔物までいるみたいで」

「それなら大丈夫よ! あのゼルディック兵士長達が助けてくれたんだから!」

「ゼルディック兵士長ですか……?」


 すると僕の真横でアゼットが大きな声を出して反応した。


「ゼ、ゼルディック兵士長だと!!!! 本当に会ったのか!?」

「そうだよ、ほらほらいいでしょ〜。凄かったよぉ、あの戦いは」

「その人はそんなに凄いんですか?」

「なんだクレイ! 知らないのか。ゼルディック兵士長はアイズ大陸最強の魔法剣士とも呼ばれる存在なんだぞ!」


 アイズ大陸最強の魔法剣士。

 なんとも凄い肩書だ。

 となるとアイズ大陸最強の魔法士が誰なのかも気になってしまう。

 もしかして校長先生とかなのだろうか。


「皆さん! それより学校に戻った方がいいのでは!」

「学校に戻るのもいいですけどこのままここに残って魔物をどうにかした方がいいんじゃないですか?」

「あっ! 自慢するのに夢中で忘れてた! そうそう、学校の方に魔物が行ったらしくて」

「学校に魔物が……」


 エントリア魔法学校の生徒だから多少の自衛は出来るはず。

 だがしかし何十体の魔物、変異型ともなれば話は変わってくる。

 

 防魔館には数人の先生が残って守ってくれているがそれでも大半の先生がどこかへ行ってしまった。

 ここは僕達が戻ってどうにかしないと行けないかもしれない。


「行きましょう。学校に」

「うん」

「魔物に好き勝手はさせないよ!」

「そうですね!」

「俺が全部斬ってやる」


 僕らは学校に向けて走りだそうとしたその時、後方から足音が聞こえそれはしばらくして鳴り止んだ。

 と思った矢先、声が聞こえてきた。


「まだそんな正義感を持っていたとはな。まぁ、褒めてやろう」


 一斉に振り返る。

 そこには数ヶ月前、謹慎処分をくらったログマネス先生が立っていた。


「ログマネス先生!! どうしてここに!」

「私は昔からよく鼻が利くんだ。それはお前がこの学校を見学していた時も同じだった。クレイ・グランディール、お前からは似た匂いがする。遠い血縁か」


 鼻が利く? 僕が見学していた時も同じだった? 似た匂いがする? 遠い血縁?

 一体ログマネス先生は何を言っているんだ。


「校外で会うのは初めてだな。一応挨拶でもしておこうか。ヴァリッジ教四大主教改め魔法士(まほうし)(きょう)五大主教(ごだいしゅきょう)の一派、ログマネス・ドメルティだ」

「ヴァリッジ教四大主教…………」


 その言葉はよく覚えている。

 昔歴史関連の本で見たこともあるし授業でも散々聞かされた。


 ヴァリッジ教四大主教、三陸戦争よりも前に存在していた。

 教祖ヴァリッジ・ワインズは四人の同じ志を持つ魔力を有する者を集めた。

 その志すものとは魔法の力で強者が世界を支配し魔法の時代を幕開けること、そして魔法の第一人者になることだった。


 ヴァリッジ教は徐々に拡大していきその名が世界に知れ渡る目前、オリジン暦77年に病死。

 しかしヴァリッジがこの大陸に引き起こした被害は凄まじく今でも強者絶対の思想を持つ者も少なくはない。

 ヴァリッジが亡くなって以降四大主教の行方は分かっていないそうだ。


 魔法士教五大主教。

 そんなのは聞いたことも無ければ読んだことも見たこともない。


「ログマネス先生、もしかしたら謹慎になっておかしくなったんじゃないか?」

「そうかもしれないね」

「何を言う。私は元々こうさ」


 ログマネス先生はそう言いながらローブから杖を取り出した。


「クレイ・グランディール、シュレーナ・パライナット、リリーシャ・グレーシャ、アリア・ブランダー、アゼット・フォリア。お前達の特別指導を行う」

 

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