第二十一話【ゼルディック班】
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シュレーナ一行
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立ち向かうことを決意した三人だが迫ってくる人数を見て少しばかり怖気ついた。
兵士だけ、魔物だけ、変異型だけならばどうにかなったのかもしれないが今迫ってきているのはその全て。
到底三人でどうこう出来るようなものではない。
だがここで止める必要があった。
三人はそれを理解しているからこそ引き下がれ無いのだ。
ここより後方にはさらに住宅街が広がっており人口も多い。
エントリア魔法学校だってある。
彼らの進行を許せば多くの犠牲者が出てしまう可能性があるのだ。
「この人数……」
「大丈夫。魔法ならなんとかなる」
「それでも限界はあるでしょ! もっと他に誰かいれば……」
その時、遠くからこちらにゾロゾロと走ってくる者達がいた。
「遅くなった。怪我はないか」
「あ、あなたは!」
リリーシャの瞳は輝いていたが他二名はその者が恐らく兵士であること以外何もわからなかった。
「兵士長、進むのが早いですって!」
「すまない。ただもっと急ぐ努力はした方がいいな」
「はぁ……わかりました」
兵士長と呼ばれる男は兵士なのに鎧などを身に着けておらずただ国の紋章が入ったマントだけを身に着けていた。
それはその他の者達も同じだが兵士長以外の人物は比較的自由な服装だった。
「もしかしてゼルディック兵士長ですか!!!」
「あぁ、俺がエントリア王国兵士長のゼルディックだ」
「はへ〜凄い人なんですね!」
「あなた!! 知らないの!? ゼルディック兵士長はアイズ大陸で現状もっとも強い魔法剣士とも言われてるのよ!!!!」
アリアに詰め寄るリリーシャ。
アリアはあはははと苦笑いをしながらリリーシャから一歩離れた。
「お喋りはここまでにしよう」
喋っている間にも敵は少しずつ接近してきている。
中には詠唱を開始している魔法士もいた。
「お前達三人は魔物を殺れ。リスタ、グレイ、ウェンナはうろちょろしている雑魚兵士を狩れ。俺は変異型を殺る」
ゼルディック兵士長の指示を聞いた全員が大きな声で返事をし行動を開始する。
「二人共さっきみたいな感じでお願い!」
「わかった」
「わかりました!」
シュレーナは出来るだけ広範囲を巻き込めるように、アリアも同様の考えで魔法を放つ為詠唱を始めた。
「風の加護を与えし者よ、魔力を渦巻き強大な力を呼び覚まし、暴風と共に大地を揺るがす。私の声に応じ嵐を巻き起こせ。『大嵐』」
シュレーナは広範囲系中級風属性魔法を詠唱し放った。
大嵐は広範囲の魔物を一気に巻き込み宙に浮かせる。
激しく巻き起こる風の中から出る術がない普通の魔物はただ宙に浮きながらもがくことしかできなかった。
そこにさらに追い打ちをかけるようにアリアが詠唱をした。
「水の加護を与えし者よ、私の杖に力を集わせ激流を巻き起こし、今在る敵を全て流し出せ。『水砲』」
アリアは広範囲系中級水属性魔法を詠唱し放った。
水砲はかなりの範囲に大砲の如く水を放ち魔物を吹き飛ばしていく。
そしてその水はシュレーナの魔法と接触し融合した。
脱出不可能なシュレーナの魔法、強制的に押されシュレーナの魔法へと連れて行かれるアリアの魔法。
この二つの力により多くの普通の魔物が巻き込まれ時間が経つと水によって窒息死した。
「ちょっと、私の出番なかったじゃん! 温めといた新しい技をやろうとしたのに!」
「リリーシャの魔法は氷」
「そういうことじゃないから」
一方、リスタ、グレイ、ウェンナは兵士に向かって走っていた。
「んでどうすんだ。兵士長は守らなくても大丈夫だよな!」
「そうかもしれないけど、一応警戒はして。私達は周りのことに気を配りながら片付けちゃおう」
「わかりました! では手短に掃討する為に離散した方が良さそうですね」
「ウェンナ、いいアイデアね。それで行くけどいいグレイ?」
「構わないぜ。決まりってことで俺は先に行くぜ」
先行するグレイは魔法を使わずに後方で芋っている魔法士を斬っていく。
その後ろを走るリスタ、ウェンナは敵の魔法剣士、剣士と対峙していた。
「あんた達、この国を脅かすなら容赦しないから!」
「この国に来たこと、そして私達に出会ってしまったこと、全てが運がなかったとしか言えません。可哀想ですがお疲れ様でした」
リスタはマントを靡かせ鞘から剣と抜いた瞬間に五人の兵士を斬り裂いた。
その後も連続で斬り裂いていく。
相手の兵士は行動をする前に斬られる為何も出来ずにいた。
ウェンナはマントを激しく靡かせ、スカートはチラチラと風に揺らされている。
両手に持つ剣を交互に斬りつけたり、同時に斬りつけたり、一切の無駄のない動きで邪魔な兵士をどんどんと消していく。
「はぁ!! さすがだぁ! 二人ともみた!? 魔法剣士にもあんな凄い人達がいるんだよ!!」
「確かにあれは凄いですね。魔法すら使ってませんから純粋な剣術であの強さ……」
「でも一番凄そうなのはあの人」
シュレーナが指さす方には宙に浮くゼルディック兵士長がいた。
「ゼルディック兵士長は浮遊が出来るんだよ! 確か風魔法の常時発動をして浮遊を可能にしているらしいよ!」
「ということは風魔法が得意なシュレーナさんもいつか出来るかもしれないってことですね!」
「難しい……。魔法の常時発動なんて出来たら化け物。もはや変態」
「あはは……凄い言い様ですね……」
ゼルディック兵士長の強さの所以は風魔法の常時発動で宙に浮くこと、さらには飛行状態の速度はかなりの速さで反応するのにも一苦労。
そして圧倒的な剣術、卓越した魔法剣士センス。
「チッ、もっとマシな面で来いよ」
マントは風でバタバタと激しく靡いている。
飛行しているゼルディック兵士長は一体目の変異型の両目を斬り裂いたあと次に足、手と順番に斬り落としていく。
それを終えると同じ工程を他の変異型の魔物にも行いものの数十秒で全ての変異型の行動と視力を奪った。
「ヌウォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!」
「オォォォォ!!!!!!!!!!!!」
「て、撤退ィィ!!!!!! 下がれェェ!!!!」
アストラル公国兵士が後方にいる残った兵士にそう告げたが時すでに遅し。
逃げようとする兵士は全てグレイによって進行方向を塞がれた。
あっという間に何十人といた兵士は皆地面に横たわり何人かの兵士は生きたまま捕らえられた。
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「これで全部か」
「そうみたい」
「ならこれで一件落着ですね!」
「いや、学校の方から複数の魔力の流れを感じた。恐らく奴らが侵入したんだろう。一般市民の避難誘導をしながら向かう」
「了解したぜ。んなら俺が先を行く!!!」
そういって四人は急いでエントリア魔法学校の方へと走っていった。
「学校が危ないみたいですね……」
「アゼット達が危ないかもしれないから私達も行こ!!」
「うん」
リリーシャ、アリア、シュレーナも遅れてエントリア魔法学校の方へと走っていった。




