第二十話【三人の女学生】
ドカーンッ。
この間の爆発よりも遥かに近い場所で大きな爆発音が聞こえ地面が揺れている。
「おい、なんだこれ!!」
周りの生徒はいきなりのことで恐怖に陥っている者が多くいる。
一体何だったんだ。
そんなことを思っているとまたもや大きな爆発音が聞こえてくる。
先ほどよりも近くでだ。
「アゼット、シュレーナさんとリリーシャさんを探して逃げよう。ここは危ないかもしれない」
「そうだな! 急ごう」
「皆さん! 落ち着いて! 私達先生の言うことを聞いて防魔館に急いで避難して!!」
先生がそう言うと一斉に生徒は防魔館の方へ走って移動しはじめる。
「僕たちは先にシュレーナさんを見つけよう」
「でもどこにいると思う?」
「確か今日は――」
その時僕はとあることを思い出した。
そう、今日シュレーナさんとリリーシャさん、アリアさんは先生からのおつかいで街に出ている。
「アゼット。急ごう。三人は校外だ!」
*********
都市フリーレア王城
*********
「一体何の騒ぎだ」
レンヒル国王の元に大慌てで走ってきた男は息を整えることはなく一礼し状況を説明し始めた。
「またもや南東で第一の爆発、その数秒後に進行しエントリア魔法学校近辺の住宅街にて第二の爆発が発生しました」
話を聞いたレンヒル国王は少し頭を抱えたあと男に指示を出した。
「兵士を総動員で出せ。そしてエントリアの教師を連れ出せ」
「はっ!!!」
「他になにかないか」
「兵士の情報によりますと南門が崩壊しておりかなりの兵士が侵入しているとのこと。旗や鎧に施された紋章よりアストラル公国のものであることが判明しております!」
「そうか」
レンヒル国王が男を見た時、男が不自然な表情をするのでまだなにかあるのではないかと思いさらに問いてみる。
すると男はなんとも言えない表情で話しだした。
「正確な情報かはわからないのですが」
「構わん」
「フリーレア内の各所に国民を殺しにかかる化け物がいると情報が入ってきまして」
「それはまさか」
「その正体は恐らく―――」
*******
シュレーナ一行
*******
「な、なんでここに変異型の魔物がいるのよ!!!」
「はっ、はぁあ! 私初めて見ました」
「あなた、そんなこと言ってる場合じゃないんだけど。変異型よ、変異型。危険な存在! てかシュレーナ! なんでそんなにぼーっとしてるの! 怖がって!」
「もうクレイくんと良く見たから慣れた」
「その慣れ、一番怖いんだけど」
三人がそんな会話をしていると魔物は大きな声で叫びシュレーナ達を威嚇してきた。
体長は明らかに大きく、というより全てが人間よりも大きい。
あまりの変異具合に元が何の魔物であったかもわからない。
「これ、私達がどうにかしないといけないっぽいね」
「任せて」
「た、戦うんですか! 変異型ですよ!」
「「大丈夫」」
「えー……」
リリーシャは鞘から剣を取り出し構え、シュレーナとアリアはローブから杖を取り出した。
アリア以外の二人は冷静に変異型の魔物と向き合っている。
「後ろからお願い!」
「うん」
変異型の魔物は武器を持っておらずただ図体がでかいだけの状態。
そこで魔法による遠距離の攻撃をしている間にリリーシャが近距離で致命的なダメージを与えようと言う作戦だ。
しかしアリアは変異型の魔物と対峙したことがないようで恐怖のあまり杖を持つ手が震え照準が定まっていない。
「アリア、大丈夫。落ち着いて」
そんなアリアをシュレーナがそっと手を抑え優しい声でささやく。
少しの沈黙のあとアリアは深呼吸をしてなんとか冷静になろうとした。
「……ありがとうございます」
「自分がしてもらったことを違う人にしただけだから」
「シュレーナさんは凄いです。だから私もそんな風になれるように逃げはしません!!」
アリアは魔物に杖をビシッと向け睨みつける。
しかしまだ微かに震える手。
アリアは必死に抵抗し自分を抑えている。
「二人共お願い!!!」
アリアの声で二人は反応し詠唱を始め杖の先が緑の水色に光だした。
「風の加護を与えし者よ、今ここに自然の力を以って竜巻を起こせ。『竜巻旋風』」
「水の加護を与えし者よ、内に秘めし力を凝固し、凍てつく寒気を宿し我が敵を貫け。『氷槍』」
シュレーナの風魔法で突風が巻き起こる。
アリアの水魔法は氷の槍に変化し魔物へと放たれる。
その道中でシュレーナの魔法によって槍はさらに加速しかなりの速さで変異型の魔物の体に突き刺さった。
いくつかの槍が突き刺さると変異型の魔物を大きな声で叫び暴れている。
しかしそれによって出来た一瞬の隙をリリーシャは見逃さなかった。
「水の加護を与えし者よ、凍てつく氷晶の力を引き出し我が剣に魔力を宿せ」
剣が氷ついていく。
「『冰化斬撃』」
剣を持ち猛スピードで暴れる変異型の魔物の横を通り過ぎたリリーシャ。
ゆっくりと歩き剣を鞘にしまった。
その瞬間から魔物は完全に凍りつき声が聞こえなくなった。
そして氷に無数の亀裂が入り砕け散る。
「ちょ、ちょっと残酷な倒し方ですね……」
「そう? 凍らせてから斬れば楽にバラバラに出来るし楽だと思うけど」
「そうかもしれませんけど、一般の人が見たらショッキングすぎるというか……」
「確かにそう。リリーシャの攻撃はぐろい」
「えー、魔法の方がグロいでしょ!」
その時どこかで建物が激しく崩れる音が鳴り響いていた。
徐々に音が近づいてきていることに気づいた三人は当たりを見回した。
すると背後で家をなにかが突き抜け地面に落ちた。
砂埃が舞っているせいでそれがなにかはわからない。
「な、なに!?」
徐々に消えていく砂埃には赤い何かが見える。
それは時間が経過していく度に鮮明になっていき正体が明らかになった。
「人!!!?」
「この感じは……死んでますね」
三人の目の前には性別が何なのかもわからないほど全身がぐちゃぐちゃになり血が溢れ出している人が横たわっている。
アリアの言う通りその人は動くことはなく息をしている様子もない。
つまり死んでいる。
「この人、あっちから飛んできたよね……」
三人はその人が飛んできた方向を見てみる。
すると飛んできたであろう場所にある家は倒壊していた。
そしてその奥にはそれを引き起こしたであろう犯人の姿があった。
「ねぇ、私の目にとんでもないものが映ってるんだけど気の所為かな?」
「気の所為じゃない」
「……私も見えてます」
三人の目に映っていたものは倒壊した家を踏み倒すように歩く大小異なる魔物。
そして複数人のアストラル公国の兵士。
「魔物……それも変異型って人と協力なんてするようなやつだっけ。違うよね!?」
「何かがおかしい。クレイくん達に知らせないと」
「どうやらそんなことをしている暇はないようですよ」
普通の魔物、変異型の魔物、そしてアストラル公国の兵士は少しずつ三人の元へ近づいてくる。
中には杖を取り出し、剣を鞘から抜く者もいる。
三人への殺意は高めだ。
「ここは私達でどうにかするしかないみたいだね。やるよね? もちろん」
「クレイくんの為にも」
「はい! 一人でどっかいったらやられちゃいそうなので」
「よし、決まりね!」
三人は迫りくる普通の魔物、変異型の魔物、兵士の方を向いた。




