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第十九話【兵士と魔法士】

 これより怒られないようにシュレーナさんを起こす作戦を実行する。

 まず怒られる要因を自分なりにまとめてみた。

 1、下心を持った状態での接触。

 2、良くないとこを触ること。

 3、体を強く揺らし強引に起こす。

 4、叩く。


 まぁ、これらはやってはいけない。

 当たり前のことだけど。


「アゼット、邪魔しないでね」

「いきなりなんだよ」


 手始めにほっぺを押してみる。

 若干は反応するものの「……ん」と言うだけで起きはしなかった。


 次に耳元で起きてくださいみたいなことを囁いてみたがこれには全く反応なし。

 一体何をしたら反応して目を覚ますのだろうか。


 それにしてもシュレーナさんの髪はつやつやでとても綺麗だ。

 気が抜けていたら思わず触れてしまいそうなくらいに。


 僕の手はゆっくりシュレーナさんの頭へと動いていた。

 はっと我に帰り直前で手を止めたがシュレーナさんがその時、目を覚ましてしまった。


「あ、いや、これは違うんですよ!」

「……ん、んん」


 シュレーナさんは僕の腕から離れたと思ったら頭を上に動かし僕の手に当ててきた。


「ど、どどうしたんですか!?」

「…………時間どれくらい経った?」

「じ、時間ですか。かなり経ったと思いますよ」

「……よかった」


 あくびをしながらシュレーナさんは壁にもたれかかった。

 僕は腕を戻しアゼットを見つめた。

 アゼットは「なんでこっち見てくるんだよ」と目で訴えかけてくる。

 本当にシュレーナさんはいきなりな行動が多すぎてびっくりしてしまう。

 もしやこれって……洗脳系の魔法だったり。


「おい、クレイ。あっち見てみろよ。なんか来たぞ」


 アゼットが指さす方を見てみると扉からぞろぞろ入ってくる先生達の姿があった。

 そしてその列の最前にいたグリデット校長は最初と同じ様に壇上に登り生徒の注目を集める。


「皆、長いこと待たせて悪かった。レンヒル国王や先生達と話し合った結果、まずは寮に戻るのじゃ。長期休暇の前倒しについてはもう少し待って欲しい。ワシからは以上じゃ」


 グリデット校長が話を終えると先生達が生徒を出口に順番に誘導を始め寮へ戻ることになった。

 僕は立ち上がり座り込んでいるシュレーナさんに手を差し伸べる。

 それに応えるように握ってきたシュレーナさんの手を引っ張り立ち上がらせ寮に戻る列に加わった。


***


 寮に戻った僕たちはベッドに座った。


「結局前倒しについては引き伸ばされたな」

「僕としては無事に帰れるならなんでもいいよ」

「確かにそうかもな。でもやっぱ早く帰りてぇー」


 本当に何もないといいな。


***

***

 

 アストラル公国の魔法陣を展開し放った魔法攻撃事件から一週間が経過したがその間、特に何も起こることはなく多少の警戒はしているがすっかり日常生活に戻っていた。


 油断をし始めた事件から一週間が経過した早朝、都市フリーレア南東にて複数人のローブを来た魔法士が壁を何らかの形で突破し侵入した。

 だがそれに気づくものはいなかった。


 南東は家々が崩壊し危険な状態になっている為立ち入りする人物と言えば警備する兵士かまたは国の重役、復興作業を行う大工など。

 早朝、それは唯一誰もいない時間である。


 その隙をついて侵入した魔法士。

 彼らは辺りをちらちらと見渡しながらどんどん奥へ進んでいく。


「おい、誰だ」

 

 そこで魔法士達にとって計算外の出来事が起きた。

 忘れ物を取りにきた兵士が南東立ち入り禁止区域にいたのだ。


 魔法士達はすぐに瓦礫に身を隠しその場を乗り越えようとした。


 兵士は地面に落ちていたペンダントを広いそれを開いた。

 中には兵士とその妻、そして子供が一緒に写っている写真が小さく入っていた。


「あったあった。今日はリンカの誕生日だからなぁ。何してやろうかな。普段は仕事で何もやってやれてないからな」


 兵士はしばらく写真を眺めたあとポケットにしまった。


 ガサッ。

 その時一人の魔法士が不安定な瓦礫の上に乗っていた為、ずれて音が鳴った。


「誰だ。だれがそこにいる!」


 兵士は鞘から剣を抜き戦闘の体勢に入る。

 一方魔法士は目を互いに合わせてローブの中から杖を取り出した。


「火の加護を与えし者よ――」

「風の加護を与えし者よ――」

「水の加護を与えし者よ――」


 瓦礫から姿を現した魔法士は一斉に兵士に向かって詠唱を始めた。


「侵入者が! させないぞ!!」


 兵士は剣を両手で強く握り走り出す。


「火の加護を与えし者よ、火の力を我が剣に纏わせあの者達を焼き尽くせ。『炎剣(フレイム・ソード)』」


 兵士の剣は瞬く間に刃の全てがメラメラと燃え盛る炎に包まれた。

 そこに詠唱を終えた魔法士の魔法が飛んでくる。


「おらぁぁあああああ!!!!!!!!!」


 火の魔法を炎で斬り裂いたが風の魔法で体に無数の切り傷がついてしまう。

 そこに追い打ちをかけるように水の魔法が当たり兵士は体勢を崩した。


 その間にも魔法士は絶え間なく詠唱を続けている。 

 兵士もまた体勢を立て直し魔法士の元へ走っていく。


「侵入者! 抵抗をやめろ!!」

「何を馬鹿な。放て」


 様々な属性の攻撃が飛んでくる。

 どの魔法も下級に属す魔法だが兵士からすれば数的不利な状況な上に遠距離からの攻撃で中々前進することができない。

 それでも兵士は気合で魔法を避けぐんぐんと近づいていく。

 その状況を目の前にした魔法士も焦り詠唱を所々で噛み不発を繰り返す。


「一人目!!!!!」


 兵士は一人の魔法士を炎が纏った剣で斬った。

 しかしその一瞬の隙に残り二人の魔法士が詠唱を終え兵士の近距離で魔法を放った。


 一秒にも満たない時間、兵士が対処出来るはずもなく魔法を全てくらってしまう。

 宙を舞い地面に強く落ちる。

 ポケットから落ちたペンダントが開いたまま兵士の隣に落ちた。


「先を急ぐぞ」

「あぁ、こんなところで時間を無駄にしては全てが台無しだ」

「……苦しい」


 負傷した魔法士をそこに置いていき他二名はさらに奥へと進んでいった。

 

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