第十八話【レンヒル国王】
隠された校長室でグリデットとレンヒル国王は互いに立派でふかふかしている椅子に深く座り込んでいる。
そしてお茶を出し終えたミネルア先生がグリデットの隣に立った。
「それで本日はどの様なご要件でここへ?」
「おい、グリデット。そんなかしこまらなくてもいいんだぞ。それにミネルアもそこに座ってくれ」
「ミネルア先生、座っても構わないよ」
「では」
グリデットの隣の椅子に座ったミネルア先生。
お茶を一口飲んだレンヒル国王は目の前にある低めのテーブルにコップを置き椅子の背もたれにもたれかかった。
「グリデット、きっとわかっていると思うが」
「あぁ、わかっておる。じゃがワシとて教師。生徒はワシにとって大事な子供達じゃ。そう簡単には返事は出来ぬぞ」
「まぁ、そう先走るな。ひとまず今日、フリーレア南東で起きた爆発についてだ。調査の結果、あれは隣国のアストラル公国から放たれたものだった。しかも魔法陣を展開してだ」
「…………?」
グリデット、それにミネルア先生は頭の上にうっすらとはてなマークを浮かべているように理解出来ずポカンとしている。
「アストラル公国は確かヴァンレイ公爵が治めているところじゃな。でもなぜそこが」
その時グリデットは頭の中でとある事を思い出した。
イア陸のトップであったアストラル家はアイズによって制圧されたその後規模は縮小したものの権力はさほど低下することはなくオリジン暦137年に持っていた領土を拡大しアストラル公国を建国した。
アストラル家は戦争を簡単に終わらせたアイズを恨んでいた。
そんな時にエントリア魔法学校というアイズの様に才能をある魔法士を生み出そうとする教育機関が建設されると発表された。
エントリア王国周辺の国々はほとんどが賛成していたがその中でアストラル公国だけが猛反対を続けていた。
「数十年、そんな関係だがついに手を出してきよるとはのう」
「となりますとエントリア王国もこうなってはアストラル公国を見逃しておくことは出来ませんね」
「その通りだ。これまで壁を超えず向こうで吠える犬だったが今は壁を超え噛みつく犬。しつけをせねばならない」
「…………やはりそうなるんじゃな。つまり……」
グリデットの表情はどこか暗い。
そして薄々気づいていたことがあった。
いや、争いが始まったその時からわかっていたがわかりたくなかったのかもしれない。
「あぁ、そうだ。だからエントリア魔法学校の教師に招集を命令する」
「……断ると言えばどうなるんじゃ?」
「グリデット、わかっていることを聞くな」
「……………………」
グリデットは目を瞑り頭を抱える。
長い長い沈黙の末、口を開き返事をした。
「……わかった。じゃが生徒は巻き込ませはしないと約束するのじゃ。どれだけの才能があろうとも」
「いいだろう。約束しよう。詳しい詳細が決まったら手紙を送る」
「気長に待っておくとしよう」
コップに余っていた茶を飲み干したレンヒル国王は立ち上がり校長室を出た。
廊下で待つ護衛人と共に歩き出しレンヒル国王は少し微笑み校舎外で止まる馬車へと向かった。
*****
クレイ視点
*****
「なんだか暇ですね」
「うん」
「アゼットもリリーシャさんも気づけばこの広い建物の中ではぐれちゃいましたし」
「隅っこで待ってよ」
「そうしましょうか。下手に動けばかえって見つからないかもしれないですしね」
たった数秒、その間に二人は行方をくらました。
まぁ、二人の性格を考えれば大人しくじっとはしていられないと思うから好き勝手に歩き回っているのだろう。
その場に残された僕とシュレーナさんは防魔館の壁際に移動しそして座り壁にもたれる。
こうして全体が見渡されるようなところに来るとみんながどんなことをしているのかがよく見える。
手遊びをしている生徒もいれば走り回っている生徒もいる。
こんなときにも本を読み勉学に励む生徒、悠長に眠っている生徒、剣の素振りをしている生徒。
授業が始まってから限られた人としか関わることがなかったから改めて見ていると色んな人がいるんだなと感じる。
「することないですね。あ、そうだ。シュレーナさんって好きな食べ物とかありますか?」
「手料理」
「手料理……具体的になんかあったりするんですか?」
「手料理なら何でも好き」
手料理の何かの料理が好きならよく聞くけど手料理そのものが好きなんて聞くのは初めてだ。
でも確かに人が愛情を込めて作る料理は美味しいけど。
「確かに言われてみれば手料理、いいですね。逆に嫌いな食べ物とかってあるんですか?」
「魚介系は苦手」
「ウェンツェ王国には魚介系があまりないせいで馴染みはないですよね。僕も凄くたまに食べますけど好んでは食べないです」
ウェンツェ王国は海もなければ魚介系を輸入することもないので滅多に食べることはない。
なので恐らくだがウェンツェ王国で生まれずっと住んでいる人のほとんどが苦手なはずだ。
「他に質問は――。あっ! 好きな魔法とかありますか?」
「クレイくんが好きなのは広範囲系魔法と古代魔法」
「覚えてたんですか!?」
「あんなに真剣に話してたから。私は凄く好きってのはないけど強いて言うなら得意な風属性魔法」
「ログマネス先生にも使ってましたよね!」
「クレイくんは火属性魔法をよく使ってる」
「火属性魔法が一番得意なんですよ。他の三属性は使えないこともないんですけど戦闘で使えるって実力ではなくて。だから毎日コツコツ練習はしてます」
「えらい」
「ありがとうございます」
***
そんな質問のしあいを続けていて互いに色々と知る事ができた。
しかし質問合戦で時間を潰していたのに先生からの情報はなし。
時間が経ちすぎて徐々に眠たくなり始めた。
横を見るとシュレーナさんもうとうとしている。
こうして二人で眠そうになったのはルハイル大森林の時以来だ。
「……クレイ」
「……はい」
「……んん、ん」
「……………」
「……………」
***
「おーい、起きろ。二人でこんなところで何してんだ」
そんな事を言われ目が覚める。
この声はアゼットか。
うっすらと目を開けどうしたんだ? と問う。
するとアゼットは僕の隣を人指し指でさした。
その通りに横を見てみると僕の腕にもたれかかってすやすやと眠っているシュレーナさんがいた。
綺麗な長い髪が口に引っかかっている。
僕はそーっと指を近づけ髪をどかしてあげた。
シュレーナさんは少し動いたがすぐに動きをやめ落ちてついて眠っている。
正直言おう。
ルハイル大森林で遭難した時も思ったがシュレーナさんは可愛い、のかもしれない。
なぜか分からない。
でもなぜかその肌に触れたいと思ってしまう。
もっと近づきたいと思ってしまう。
だが理由はわからない。
それにそんな変質者的行動をしてしまったらシュレーナさんに嫌われるだけではなく周りからも変な目で見られてしまう。
だからそんなことはしない。
今のこの状況は心の中で謝罪し僕の中にいるなにかに許してもらおう。
「リリーシャが消えたぞ」
「あれ、一緒じゃなかったの?」
「違うけど。そっちこそ一緒じゃなかったのか?」
「二人揃って消えたんじゃん」
「そうなのか?」
「そうだよ」
「ここで待ってれば来るか」
「多分ね」
「よし、待機!」
三十分が経過したころ、未来に現れるであろう変異型の魔物と戦っていたと意味不明な理由を述べ戻ってきたリリーシャさん。
途中までいなかったアゼットにあーだこーだ言われしゅんとなりシュレーナさんの隣に座り込んだ。
それにしてもシュレーナさんは良く眠る子だ。
何をしたら起きるのだろう。
僕の悪い気持ちが試そうと語りかけてくるがシュレーナさんを怒らせてしまうのは良くないと思ったので……。
怒られない程度にやってみよう。
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