第十七話【騒動】
僕らがエントリア魔法学校に入ってから早四ヶ月の月日が流れた。
ログマネス先生のあの一件はどうやら重く見られたようで未だに謹慎という処分を受けている。
あれからというものとくにこれといったこともなく普通の日常を送っている。
それにシュレーナさんやリリーシャさん、アゼットにアリアさんとも少し仲良くなれたような気もする。
そして今は食堂にみんなで集まっている。
「クレイくん、これ水」
「ありがとうございます。これ少し食べます?」
「うん」
自分の食べていた料理をスプーンですくいシュレーナさんの口に運んだ。
嬉しそうに微笑むシュレーナさん。
どうやら相当美味しかったようだ。
「そう言えば最近先生達慌ただしいよね」
「確かにそうですね。私も思ってました!」
「行事があるんじゃないか?」
「その可能性はないよ」
アゼットの言ったことに対して反応した声が後ろから聞こえてきた。
振り向くとそこにはスラっとした男性が立っている。
「アスト先輩!」
「やぁ、クレイくん。相変わらず仲の良い一年生だね」
彼の名前はアスト・ウェズナー。
同じく魔法士を目指す三年生だ。
アスト先輩に最初に出会ったのはログマネス先生との一件のあとしばらくした頃に行われた学年の垣根を超えて学ぶという授業で出会った。
それ以降も度々魔法に関することを話し合い仲を深めた。
もちろんシュレーナさんも。
「毎年この時期には行事はないんだ。だからきっと別の理由だよ」
「この間、クレイくんと一緒に出かけた時、街もなんだか騒がしかった。ね?」
「丈夫な鎧を来た人が列になって歩いてたりしてましたよね」
「クレイ、お前はいつの間にシュレーナさんと……」
「なんだよ」
「あぁ、なんでもないさ。関心しただけだ」
アゼットのやつどうしたのだろうか。
というよりここまで来ると何かがあるとしか思えない。
「もしかしたら近いのかもしれないね」
「近い……ですか?」
「この学校のあるエントリア王国は他国や他大陸から狙われがちなんだ。だから国全体で騒がしい理由はもしかしたらそういうことなのかもしれないって話だよ」
その言葉が意味すること、それはつまり戦争ということだろう。
この国はアスト先輩の言っている通り良く他国から狙われる。
その理由は簡単でこの学校があるからだ。
アイズ大陸でも最高峰最大級のエントリア魔法学校。
そこを卒業した者達はそれぞれの道を進んでいく者もいるがほとんどの卒業生がエントリア王国や設立に携わった国へと向かい国家の戦力として重要視される。
しかしそれではいくつかの国に戦力が大きく偏ってしまう。
それに不満を持つ国は多く狙われているというわけだ。
「じゃあそろそろ授業があるから戻るから。じゃあね、クレイくん、シュレーナさん」
そう言ってアスト先輩は食堂を出ていった。
***
先生達が最近慌ただしいよね、なんて話は談笑しているうちにきっともうみんな忘れている。
そんなことを思いながら食事を終えた僕たちは席から立ち上がり食堂から出ようとしたその時、ドカーンッという大きな爆発音のようなものが鳴ったあと少し地面が揺れた。
いきなりのことだったので僕も周りの生徒も放心状態だった。
しかしその五秒後、放心状態から一転し食堂にいるほとんどの生徒が何だったのかわからず叫んだり、泣いたり、茶化したり、ざわついたり。
その様子はまさにカオスだった。
食堂の開かれたままの扉の向こうの廊下では何人かの生徒が急いでどこかへ走っていく。
その人数は時間が経過する度に増えていく。
それを見ていた僕らは今起こったことが何であれ重大な事が起こったと認識した。
「シュレーナさん、大丈夫ですか?」
「……ん」
「どうしますか。これ逃げた方がいいんですかね」
「逃げた方が良さそうだよな。周りのやつも逃げ出したし」
周りを見回してみんなうなずき納得した。
その時、扉から息が切れながらも必死に大声を出している人がいた。
あれはラート先生だ。
「お前ら! この先奥の防魔館に一旦逃げろ!」
ラート先生の言葉を聞いた食堂にいた生徒は一斉に扉を出て左の廊下に走り出した。
「僕たちも行きましょう」
「あぁ!」
「うん」
「なんかやばそう……」
僕らは防魔館へと走り出した。
***
防魔館、それは魔法による攻撃を防ぐ棟である。
ちなみに物理攻撃に対しても一定の耐性があるそうだ。
防魔館は広い空間で大きな扉がひとつ、非常口が一つある。
必要最低限の物資だけが置かれておりいわば避難所的な場所である。
先生たちはざわめく生徒を静かにさせると前の方を向かせた。
前の方には校長先生が立っている。
何があったのかを説明する気なのだろう。
「皆、突然のことで恐怖を感じている者、不安でいる者もいると思う。なので皆にある程度の情報を伝えておこうと思う。先刻の出来事は都市フリーレアの南方面にて大規模な爆発が起こり火災が発生している。まだ詳しいことはわからないが本校では何名かの教師が接近する魔力を感知した」
魔力を感知した?
生徒にはまったくそんなことを感知した様子の人はいなかった。
大規模な爆発を発生させるほどの魔法ならば生徒の僕たちでも少し違和感がある程度には感知できるはずなのだが。
もしかしたら魔力を制御していたのだろうか。
だとしたら高技術を扱うことが出来る魔法士が都市フリーレアになぜそんなことをしたんだ。
「これから何があるかはわからないが安全が確認されるまではここで待機してもらう。その後は寮に戻ってもらうが明日の授業はなしとする。役職陣と国との会議にもよるが休暇を早めて実施しエントリア王国国外に行ってもらうということも視野に入れておる」
校長先生のその言葉のすぐ生徒は大騒ぎで歓喜していた。
それは僕も同じで早く母さんや父さんのもとに帰れると思うと嬉しくてたまらない。
「では皆自由に過ごしておくといい」
そう言うと校長は防魔館を数人の先生と一緒に出ていった。
一応何かあった時の為に先生は数人残っている。
「アスト先輩が言っていたことが起きたの?」
「もしかしたらその可能性もあるかもしれませんね」
「ならクレイくん、早く帰ろ」
「休暇が前倒しされたらすぐにそうしましょう」
「うん!」
「あぁ!!! 私も連れて帰ってよ! 遠いんだから!」
「それはわかってますよ。安心してください」
「ほんとかなぁ〜?」
「羨ましいな。俺だけ方向が違うからなぁ」
何事もなくこのまま日常に戻ることを願うばかりだ。
******
防魔館外廊下
******
「グリデット校長、どうしますか?」
「ワシとしてはすぐにも生徒達を帰省という形でこの国から避難させたいのじゃが、そう簡単に出来ることでもないじゃろう」
「ですね。今回の出来事が他国の故意的な攻撃だった場合、可能性はゼロに近くなりますね」
「そうじゃのう。だからこれがただの事故だと願うばかりじゃ」
廊下を歩きどこかへ向かう先生達。
そこに奥から走ってくる男性が一人。
「はぁ……あの方はぁ……門にはぁ……」
「まずは落ち着くのじゃ」
走ってきた男はよほど急いできたのか激しく息切れしている。
そんな男性に対してグリデット校長は落ち着くように促すと男性は深呼吸をし息を整えた。
それでもその男性はあまり体調の良く無さそうな顔をしている。
「エンダ先生、どうしたのじゃ?」
「今門前におられます――レンヒル国王が!」
エンダ先生の言葉を聞いた瞬間、歩いていた先生達が足を止め、顔を曇らせた。
緊張かそれとも嫌悪かそれはそれぞれの先生によるかもしれないがただ一つ共通することとすれば出来れば来てほしくなかったということだろうか。
あのグリデット校長でさえ良い表情をしていない。
「もう来たのか。レンヒル」
そして重くなった足をどうにか動かし門へと歩き出した。
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