第十四話【魔法士の始まり】
「各自好きな席に座ってください」
十数人で教室へ入り席に座った。
さっきよりも人数が少なくなったので教室が異様に広く感じる。
「では授業を始めます。魔法の始まり、これは魔法の歴史における最重要なことですが未だに判明していません。ただ魔法を広めた人物が存在します。それは誰だかわかる人はいますか?」
すると後ろの方に座っていたオレンジ色の髪をしメガネをかけた女性が元気良く手をあげていた。
というかその女性以外誰も手をあげていない。
全く意欲のない生徒達だ。
「アリアさん、どうぞ答えてください」
「アイズ様です」
「正解です。魔法を広めたのは魔法士アイズ・サンティエッタです。アイズが誕生したのはオリジン暦110年のことです」
オリジン暦とは大冒険家グアヌス・オリジンがアイズ大陸の全体を明らかにした時から計算されたものだ。
「オリジン暦127年頃にアイズの魔法の才能が開花しました。当時は今のように魔力を保持するものはそこまで多くなくその中でも秀でていたアイズはすぐに魔法士のトップに上り詰めました。当時は大陸内でイア陸、シダ陸、サリ陸の三つに分かれていました。その中でトップ争いが始まりオリジン暦128年に三陸戦争が勃発しました」
父さんの部屋にあった本で昔見たことがある。
オリジン暦128年に勃発した三陸戦争は開戦当初からかなりの犠牲者が出ていたとか。
「シダ陸に属していたアイズは戦争の影響を受け多くの人が貧しい暮らしを余儀なくされました。戦争という行為に嫌気がさしたアイズは同い年の村一番の剣士と一緒に戦争を終わらせると誓いました。オリジン暦130年にはイア陸がアイズにより制圧され、さらに4年後にはサリ陸も制圧され終戦。その後オリジン暦135年にとある剣士とアイズの間に双子が誕生、136年に魔法士を引退し世界の多くの人々に魔力を授けました。同年、分裂していた三陸はまとめられアイズ大陸と名付けられました。そしてオリジン暦141年にアイズは病死したのです」
アイズ・サンティエッタが三陸を制圧した時の逸話は本によって多少の差異はあるが異次元的な魔法を扱っていたという点は同じだ。
異次元的な魔法と言われると実際に見てみたい気持ちが高まる。
しかし現代でそんな事ができる人物なんて存在しないのでこの気持ちは底深くにしまっておこう。
「先生ー質問です!」
後ろの方から声が聞こえてきた。
「ウェンダー・コリビアン、なんですか?」
「その話に出てきた剣士って一体何者なんですか?」
「それは未だにわかっていません。彼はアイズからかなりの魔力を授かったと言われています。しかしそれが原因でパーティーを組み冒険に出た剣士はオリジン暦153年に仲間に裏切られ魔物に襲われ行方不明になったそうです。今亡きアイズが愛した剣士は魔法と剣を扱える魔法剣士と呼ばれるようになりました。アイズ大陸が誇るこのエントリア魔法学校で魔法士以外にも魔法剣士を学ぶことが出来るのはそういった過去があったからです」
そういう理由があったのか。
知らなかった。
***
ようやく学校が終わった。
といっても半日だけだったがさすがに初日に色々と詰め込みすぎたと反省している。
歴史、魔法生活学、魔法技術学。
しかし明日からはついに一日学校にいることになる。
そんな大変な中で一番楽しみなのは魔法実戦だ。
噂によると行く行くは模擬戦的なこともするらしい。
学校を終えシュレーナさんとも別れ部屋に戻る最中だが凄くお腹が空いてきた。
それはもう今すぐなにかを欲したいという気持ちが今にも溢れ出しそうなほどに。
だがここで悲しいお知らせがある。
どうやら初日は昼の食堂が空いていないそうだ。
夜の新入生歓迎会の準備の影響らしい。
つまり夜まで我慢しなければならない。
辛い!
この空腹はもはや寝て忘れるしかない。
早く部屋に戻って寝よう。
ちょうど疲れて眠たいし。
***
「おい、クレイ起きろ」
体を激しく揺さぶられ目を開けるとそこにはアゼットの姿があった。
この状況から考えるとどうやら僕は少し寝るだけにしようと思っていたがかなり眠ってしまっていたようだ。
「授業終わったの?」
「かなり前に終わって、そのあとリリーシャと練習してたんだけどよ結構時間経っててもう新入生歓迎会始まってもうた」
「……まじかよ」
「しかもリリーシャのやつ何も言わずに先にいなくなってたし。やられたぜ」
「とりあえず急いで行ったほうが良いかもね」
「だな」
僕はベッドから起き上がり内心焦りながら食堂へと走った。
***
床は石のタイルで長い机が料理を置く用と生徒が使う用でいくつか置かれている。
壁には天井ギリギリのところに不思議な模様の入った窓がある。
周りは既に多くの新入生が会話や食事を楽しんでいる。
新入生歓迎会とは言っているがこの感じは新入生交流会みたいなものなのだろう。
そんなことを思っていると前に料理を選んでいるリリーシャさんとシュレーナさんがいるのを見つけた。
「アゼット、あっちに行こう」
「おっ、みんないるじゃんか。やっぱあいつ時間に間に合わせるように来てたな」
シュレーナさんの方へ向かおうとしたその時、僕たちの目の前に一人のローブを来た女性が立ちふさがってきた。
嫌な予感はしたが少し顔をあげるとやはりミネルア先生だった。
「アゼット・フォリア、クレイ・グランディール、とっくに始まっていますが何をしていたのですか」
「あ……少し体調が優れなかったので寮で寝ていました。今はもうすっかり元気です」
「俺は剣の練習をしていたら知らぬ間に時間が過ぎていて……」
「はぁ……今回は目を瞑りますが次回からはしっかり時間を確認するように。友達のところにでも行くのでしょう。ほら、楽しんできなさい」
「「ありがとうございます」」
ミネルア先生は教えるのも上手いけどこうやって厳しくも優しいし中々良い先生なのかもしれない。
あの先生とは大違いだ。
「シュレーナさん!」
「あ、クレイくん」
早速シュレーナさん達のところに行き声をかけた。
「クレイくん、これ飲む?」
「貰います」
シュレーナさんからなにか入ったグラスをもらった。
「やっと来たんだね。あっちの席にある程度食べ物とかはおいてあるから行こう!」
言われるがままリリーシャさんについて行き席に座る。
「クレイくん、怒られてた」
「あ、あはは。寝てた僕が悪いから仕方ないことなんですけどね」
「いや俺は違うぞ! リリーシャ!! なんで俺を置いていったんだ」
フォークをリリーシャに向けて猛抗議するアゼット。
それを軽くあしらうリリーシャさん。
「それ危ないからやめて」
「あぁ、悪い」
「それに私出る時に言ったからね。もうすぐで時間だから戻った方がいいよって」
「いいや、聞いてない。俺は聞いてないぞ」
「言ったら、そっちは、あ? なんのことだ。俺はもう少し残るぞ。なんて言って無視したじゃない!」
その場にいた全員の視線がアゼットへ集まる。
どこか遠くを見つめているアゼット。
完全に焦っているようだ。
「いやぁ……そんなことがあったのかもしれないけどもうちょっとわかりやすく言ってくれても良かったんじゃないか?」
「まぁ、ほらほら。もう過ぎたことなんだしアゼットも落ち着いて。せっかく用意してくれた料理が冷めちゃうよ」
「すまん、クレイ。食って明日に備えるか!」
気を取り直して僕らは料理を楽しんだ。
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