第十三話【新入生の僕たち】
翌日。
窓から入り込んでくる強い日差しで目を覚ました。
布団をどかし床に足をつける。
昨日は何時間か歩き回り学校を見たがやはりどれも凄いとしか言いようがない。
魔法士の模擬戦を行う闘技場はかなり大きな空間が用意されていたり大きな教室や研究室があったりとワクワクするようなものばかりだった。
そしてついに今日は式の日だ。
建物の中で長々とやるというわけではなくちょっとした広場で簡易的に行うらしい。
この学校では式でさえ時間の無駄というわけだ。
***
部屋を出て広場に向けて歩き出した。
「どうだ昨日はぐっすり寝られたか?」
「ソワソワしてそれどころじゃなかったよ。でも中々ベッドもふかふかだし気に入ったね」
「だよな。それにしてもいよいよだな。他にどんなやつがいんだろうな!」
「教室に行けばきっと分かるよ」
ちなみにアゼットとは同じクラス。
リリーシャさんやシュレーナさんも同様に。
魔法士と魔法剣士が別々のクラスじゃないのかと思ったがどうやらこの学校ではクラスというのはただの形式上のものにすぎないそうだ。
つまりクラスメイトは何かしらの集まりがある時だけの関係ということだ。
「それと先生も気になるよな! 一年を担当してくれる魔法剣士の先生どんな人だろう?」
「昨日の先生じゃなければ僕は誰でもいいなぁ」
「確かにそうだな。でも案外優しかったりするんじゃないか?」
「そんなことはない。断じて無い」
「どんだけ嫌なんだよ」
腕でつついてくるアゼット。
僕は「アゼットだってそうだろ」なんて言い返しながら同じ様に腕でつつく。
「そうかもしれないな!」
共感してきたアゼットと共に思わず笑ってしまった。
***
エントリア魔法学校中央広場。
大規模な校舎に囲まれた大きな広場だ。
そこには既に多くの新入生と思われる人達が集まっている。
校舎の窓や廊下には僕たちを見物しにきた先輩達で埋め尽くされている。
アゼットと一緒に僕たちのクラスが並んでいるところへ行くと最後尾にシュレーナさん達の姿があった。
僕たちは近づき声をかける。
「もういたんですね」
「……危うく寝坊するところだったよ」
「僕は大丈夫でした」
「さすが、クレイくん」
「新入生の諸君、静粛に!!!!!」
シュレーナさんと話していると前の方から声が聞こえてきた。
その瞬間に新入生は誰一人喋らなくなった。
「これより式を執り行う。今回進行を担当するのはこの私五年生、アルリフォードである」
その言葉の後に廊下や窓から見物していた先輩たちが拍手を始めた。
それに続く形で新入生の僕たちも拍手をした。
しばらくして静まり返ると再びアルリフォードさんが喋り始める。
「今回も例年と同様に簡易的に行う。始めにエントリア魔法学校校長、グリデット・オリジンの言葉」
するとローブを着たヒゲの生えたおじいさんが壇上に登りだした。
あれがエントリア魔法学校の校長、グリデット・オリジン。
校長が壇上に登ったときから周りの雰囲気が一段違うものになった感じがした。
やはり魔法学校の校長というだけあってかなりの実力の持ち主なのだろうか。
「新入生の皆、良くこのエントリア魔法学校に来てくれた。アイズ大陸唯一の魔法学校では皆が自身で想像し道を切り開く、そしていつしか君が誰かを守り誰かが君を守れるように指導しておる。魔法士の始まりであるアイズ・サンティエッタの様に世を変える人材もエントリア王国、いや世界は望んでおる。じゃから皆努力し励むように。最後にわしからの言葉を伝えておこう。誰一人として無意味に欠けることはわしとしては許せぬ。以上じゃ」
手短に話を済ませた校長は壇上から下りどこかへと歩いて行ってしまった。
「グリデット校長、ありがとうございました。以上で式を終わりとする。新入生の諸君は各自教室へ向かい担当教諭が到着するまで待つように」
あまりの式の短さに僕だけでなく他の生徒も驚いていた。
「呆気なく終わったな。まぁ、とりあえず教室行こうぜ」
アゼットの言う通りに僕たちはその場から離れて教室へと向かった。
***
教室は生徒数が多いからなのか異様に広い。
もはや後ろの席に座っていたら見にくいのではと思ってしまうレベルだ。
座席は自由とかなり綺麗な字で黒板に書かれたのを見て僕たちは少し前よりの席にみんなで座った。
「いろんなやつがいるな」
「そうだね」
アゼットの言う通り周りにはいろんな人達がいる。
優しそうな人、強そうな人、なんだか性格の悪そうな人。
色々な人がいるからうまく関わっていけるか不安だ。
ガラガラと扉が開く音がした。
視線の先にはローブを着た少し歳のとった女性が教卓へと歩いていく。
「皆さん、座ってください」
その女性がそう言うと大半の生徒が席についたがかなり後ろにいた二人の生徒はそれに気づいていないようでまだ座らずに喋っている。
早く気付けと心の中で言う。
さすがにこの状況で声はかける勇気がないからだ。
「…………」
女性は手に持っていた本を教卓に置くとローブの中に手を入れ込み細い木の杖を取り出した。
そして座らない生徒に対して杖を向けたと思ったら先端から青い光が現れた。
バチャンッと水の音が後ろから聞こえてきた。
振り向くと生徒の後ろの壁に水が当たりかなり濡れている。
一体今何が起きたんだ?
詠唱なしで水魔法のなにかをしたのか。
「ウェンダー・コリビアン、ルック・イレイア、席に座りなさい。でないと皆さんが授業へ向かうことができません」
「「す、すいません!!」」
二人はすぐに謝り大急ぎで席に座った。
女性はローブの中に杖をしまった。
「今日からこのクラスの担任をするミネルアです。担当教科は歴史です。魔法士を目指すならば歴史を受けておくと良いと思いますよ。ちょうどこのあと一般教科棟二階で行いますので受けたい方は私についてきてください」
歴史か。
なんだか面白そうだし受けてみてもいいかもしれない。
「では以上。各自受けたい授業を調べ向かうように。歴史を受ける生徒は前へ」
ミネルア先生がそういうとみんなは一斉に立ち上がり移動を開始する。
早速教室の外に出ていく生徒もいればミネルア先生のところへ向かう生徒もちらほら。
「僕はせっかくだし歴史を受けてみようと思うんだけどアゼットはどうする?」
「俺はこのあと魔法剣士の剣術の授業があるらしいからそっちに行こうと思う」
「あ、じゃあ私もそれ行く!!」
手を高く上にあげ主張するリリーシャさん。
そうなるとアゼット達とはここで解散して……シュレーナさんはどうなのだろうか。
「シュレーナさんはどうしますか?」
「じゃあ私も行く。魔法の歴史」
「わかりました」
「歴史を受ける生徒は他にいないですか。いないのなら向かいますが」
ミネルア先生の声を聞き僕たちはアゼット達に「またあとで」と言って急いで前に向かった。
「どうやらこれ以上は来ないようですね。では向かいます」
ミネルア先生を先頭に僕たちは歴史を学ぶ教室へと歩き出した。
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