第十二話【エントリア魔法学校】
エントリア王国、都市フリーレアにあるここエントリア魔法学校。
魔法士、魔法剣士、治癒士などを目指すことの出来る幅広い学校である。
いくつかの国や冒険者ギルドの協力によって成り立っているこの学校には各分野で必要となるであろう設備、食堂、訓練場、男子寮、女子寮と様々な要素が詰め込まれている。
男性を助けてから数時間してエントリア魔法学校に到着した僕たち。
門の目の前で止まっていると学校関係者らしき人物が近づいてきて話しかけてきた。
それに対して事情を説明すると身分を確認させられた後学校に入れてくれた。
どうやら他にも早く来た生徒がいるようでその場合、先に寮に通してくれるそうだ。
なんとも親切な仕様である。
ちなみに馬車は専用の置き場があるそうだ。
しかも馬のお世話役もいるらしい。
さすがとしか言いようがない。
その後、僕は男子寮へシュレーナさんとリリーシャさんは女子寮へと向かった。
男子寮の入口にはでかでかと【一年生の部屋は以下の通り】と書かれた板が置かれておりその文字の下には大量の名前と部屋番号が記載されていた。
しばらく頑張って自分の名前を探しやっと見つけそして今に至る。
僕の部屋は112号室だからこの辺りなはず。
108、109、110、111と部屋を進んでいきそして112号室の目の前で立ち止まる。
立ち止まったがこれ以上は進む気にならない。
なぜかって、そうこの寮は二人一部屋。
運が悪いとやばいやつと一緒になってしまうかもしれないのだ。
だからまともであってほしい。
願いを胸に扉を開ける。
だが中には誰も居ない。
「はぁ……」
部屋の中にはベッド、机、タンスなどが二人分用意されている。
少し僕の部屋より広い気もする。
部屋の中に入り魔法杖やバッグなど荷物をひとまずベッド側に寄せた。
すると机の上に何か置かれているのに気がついた。
「……これは」
置かれていたのは畳まれている黒いローブと制服、教科書、さらには学生証まで。
とりあえず制服を広げ触れてみる。
オルス村では感じれなかった肌触りだ。
外はザラザラ中はサラサラ、スベスベ。
服は白っぽい色に少しのデザイン、胸元に校章、長ズボンは完全に黒い。
ただただ黒い。
「着てみるか」
僕はローブを脱ぎ履いていたズボンを下ろした時、扉がガチャっと開いた。
「あ」
「あ」
男の着替えシーンなんて誰が喜ぶんだ。
どんな展開だ。
「男の着替えてるところ見ても喜べねぇよ」
同じことを口にして言うな。
***
すべてなかったことにして制服に着替えた僕。
部屋に入ってきた男の人は既に制服に着替えていた。
「えーっと……」
さっきあんなことがあったのでかなり気まずい状況だ。
こういうことを魔法でどうにか出来ないのが悲しい。
でもこうして時間が経過していけばさらに気まずさは上昇しこの部屋に二度と入れなくなる気がする。
だから思い切って声をかけてみることにした。
「あ、あのこの部屋に入ってきたってことは同じ一年生ってことですよね?」
「そうです。あ、自分はって――」
男の人はなぜか話しにくそうにしている。
もしかしてやっぱりさっきのが影響してたり。
「同年代にこんなかしこまるのもあれだな。それにこれからは同室の仲だ。普通に話そうぜ!」
「そっちがいいならそうするよ」
「んじゃあ決まりな!」
生着替えが原因じゃなくてほっとした。
それになんだか話しやすい人だしこれは大当たりの予感。
「俺は都市リセンシアから来たアゼットだ。よろしくな! ちなみに魔法剣士を目指してるぜ」
「僕はオルス村から来たクレイ。よろしく。僕は魔法剣士じゃなくて魔法士を目指してるんだ」
都市リセンシアは確かエントリア王国から見て西の方面にあるリセンシア公国の都市だ。
少し距離はあるが僕たちほどではないはず。
「オルス村って確かあのルハイル大森林の隣にある村だよな」
「そうだよ」
「この間、変異型が複数体出てきて負傷者も出たって聞いたけど大丈夫だったのか?」
「一応大丈夫だったよ」
「へぇ、ルハイル大森林の隣の村は大変だよな」
「本当にそうだよ。魔物さえ多発しなければもっと大きな村になると思うんだけどね」
ベッドに座りながらアゼットとそんな他愛もない会話をした。
会話に区切りがつくとその後話題が出ることもなく無言の時間が始まる。
ひとまず僕は部屋の中をキョロキョロと見回し話す話題がないかを探した。
だが部屋にそんなものはなく無言の状態が続く。
その時、アゼットが無言状態を断ち切るように新たな話題を振ってきてくれた。
「そういえばクレイはさっき学校に来たばっかだよな。実は俺も数時間前くらいに来たばっかでさ。暇だし学校でも見て回らないか?」
「確かにそれいいね。行こう」
ベッドから立ち上がり僕たちは部屋を出た。
***
男子寮を出た僕たちは校舎の前までやってきた。
改めて見たが入口からかなり大きい。
さて校舎に入ろうかとなった瞬間、横から声が聞こえてきた。
「クレイくん! どっか行くの〜?」
こちらに向かって歩いてきたのは制服姿のリリーシャさん、その隣にはシュレーナさんがいた。
女子の制服は上こそは似ているが下に関してはスカートのようだ。
普段そういった姿を見かけることがないからスカートを履いているシュレーナさんやリリーシャさんを見ていると新鮮味を感じる。
「少し学校を見て回ろうかと思いまして」
「奇遇! 私達もそうしようと思ってた所なんだ。どうせだったら一緒に行こうよ」
「いいですよ」
「あ、んで、え〜っと」
リリーシャさんは言葉を詰まらせながら僕ではなく隣を見つめている。
アゼット、彼を知らないから気になっているのだろうか。
「あ、彼は同じ部屋のアゼットだよ」
「同室の人なんだ。私はリリーシャ。よろしくね」
「俺はアゼットだ。よろしく」
全員の視線はシュレーナさんへと集まっていた。
自分の番が回ってきていることに気づいていないようだ。
やけに眠そうな表情をしているシュレーナさんに一応声をかけた。
「シュレーナさん、自己紹介をお願いします」
「……ん。私はシュレーナ・パライナット。クレイくんと同じオルス村から来た。よろしく」
「おう! よろしくな!」
一通りみんなの自己紹介が終わったところで僕たちは校舎へと入っていった。
***
アゼットの会話能力の高さや気さくな性格のおかげなのかわからないがそれほど時間はかからずにリリーシャさんと打ち解けていた。
そして今は二人が互いに魔法剣士を目指しているということを知り魔法剣士の生徒が訓練をしているところにやってきている。
「あれが先輩……か」
さすがに式を迎えていない僕たちがズカズカと訓練の部屋に入るのもあれなので遠くから見ているが戦いの激しさがそれでも伝わってくる。
魔法技術だけでなく剣術まで求められる魔法剣士。
僕にはできそうにない。
「二人共、前に出過ぎですよ」
先輩の訓練に興味津々なリリーシャさんとアゼットは訓練の部屋に入りそうになっていた。
確かに自分が専攻する分野の先輩を見たらつい見入ってしまうのはわかるがそんなに目立つようなことをしていると先生に怒られるかもしれない。
だから目立つようなことはやめてくれ。
「なんだ、お前たちは。こんなところで何をしている」
思っていたことは現実になり僕たちの背後に誰かが現れる。
振り向くとそこにはローブを着た男性がいた。
恐らくだがこの人は先生だ。
「すいません」
「誰が謝ることを求めた? 私はこんなところで何をしているのかと聞いたのだ」
「学校を見学していまして……」
「見学? 新入生か。入学前からそんな浮かれているとはな。先が知れる。くれぐれも魔法士専攻の生徒を邪魔するなよ」
その弾性はローブをバサッと靡かせて奥へと去っていった。
「なんか感じの悪い先生だな」
「本当そう! ただ見てただけなのに」
「でも邪魔になりかけてたのは事実ですし」
「クレイくんはどっちの味方なの!!」
僕は首をかしげて苦笑いをすることしかできなかった。
「それより他のとこも見に行きましょう。まだまだ見ていないところは沢山ありますから」
「そうだな。行こうぜ」
「さっきのやつにはバレないようにね!!」
リリーシャさんとアゼットは二人で先に進み出しその後ろに僕たちがついていった。
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