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8.まいそん

この謎の場所に閉じ込められて4日目~


『森』の探索範囲を広げることにした。

『扉』を出て、すぐの道を50m程度行った先の三叉路を探索していく。


「ん~、とりあえず左から行ってみるか」

一番左の道をトコトコと歩いていく。


「なんもないな~・・・おっ!?」

5分ほど歩いたところで、広い広場に出た。


正方形の一辺が30m程度のスペースで芝生が敷き詰めてある。

周囲は、高さ2m程度のレンガの塀で囲まれている。

そして、その中心に直径1m程度の亀の甲羅が置かれていた。


「なんで亀の甲羅が・・・?おーん?」

あきらかに怪しいので、へっぴり腰でそぉーっと足音を立てないように少しずつ近づいていく。


「もしもしかめよ~かめさんよ~」

ド下手くそな歌を歌いながら、手を伸ばせば届く範囲まで近づき、指でつんつんと突いた。


がばっっ!!

突如、亀の甲羅が動き出し、足が生える。


「ひぎぃいっ!!」

ひろとは、腰を抜かし尻もちをついた。


ゾウガメのような足が伸び、地面から立ち上がる。

少しの間を空けて、頭部がにゅるッと飛び出してきた。

トカゲのような頭部で首が長い。


シャーッと威嚇音を発して睨みつけてくる。


腰を抜かしたまま這いずるようにして距離を取る。

「くっそ・・また変な亀やな・・・」

亀とにらみ合いながらなんとか落ち着きを取り戻し、立ち上がってナイフを構える。


突如、亀がシャーッと声を発したかと思うと、首をぐんっと伸ばす。

「え?長っ!!」

首が予想外に長く伸び、2m程度伸びたと思ったら、首を前方に伸ばして一気に襲い掛かってきた。


完全に虚をつかれ、棒立ちになったままよけることもできずにまともに攻撃を受けてしまう。

「まいそーーーーん!」

股間に噛みつかれ、たまらず奇声を上げる。

ナイフで切りつけながら、涙を流しつつ全力で振り払おうとする。

「わ゛ぁぁああ!!」

ナイフが頭部にかすり、ダメージを与えると、亀は危険を感じたのか、するするするっと首を引っ込めてしまった。


その隙に後ずさり、数mほど距離をとったが、亀は動かずそのままじっとしている。


ひろとは、痛みに顔をしかめながら、不敵な笑みを浮かべ小瓶をポケットから取り出した。

「ふっ、こんなこともあろうかと準備してきて正解だったぜ!」


小瓶に入れてきた、泉の水を飲むと体が光に包まれ、傷が修復されていく。

小瓶の容量は、少量なので、1回限りだが、これで傷をいやすことが出来るようになった。


(この亀も鶏蛇と同じように股間を狙ってきた。どんだけ俺の股間が好きなのか知らないがここの生物は股間を集中的に狙ってくると考えて間違いない・・・・)


「亀ちゃんは動く気はないようやな?・・・ならこちらから仕掛けるしかないか・・・」


ひろとは、股間の前にナイフを構え、ナイフを左右に揺らしながら少しずつ亀に近づいていった。

「ほーら亀ちゃーん!ぶらんぶらーん!」


すると、2m程度の距離に入ったところで、亀が首を伸ばして攻撃してくる。

「おっと!」

慌てて後ずさりして避けると、亀はそのまま首を引っ込めた。


首を伸ばし始めた間合いをしっかり覚えて、再度近づいていく。

ピリピリとした空気に、汗がどっと噴き出してくる。


亀が再度、首を伸ばして襲い掛かってきた!


「今だ!!」

ひろとは、バックステップしてギリギリ射程範囲外に逃れると、伸びてきた首にナイフを突き立てる。

こちらに向かって伸びてくる頭部にカウンターになるようにナイフを突き刺した。


亀は、ぴぃいいい!!と鳴き声を上げ首を一旦引っ込める。


ひろとは、また慎重に間合いを詰め、亀が首を伸ばしたタイミングでカウンター攻撃を狙う。

ザシュッ!

繰り返すこと3度目、ナイフの刺突が、亀のトカゲのような頭部の眼球部分を完全に捉えた。

そのまま、突き刺さったナイフを奥へ押し込むと、亀は徐々に動きが弱まっていき、しばらくの後沈黙した。


「よし、倒したっぽいな・・・俺もしかして天才じゃね?」

汗だくになった体をタオルで拭きながら、白い歯をみせて得意げな顔を作る。

「名付けてカウンター作戦やな!あひょひょひょひょ」

変わった笑い声をあげながら、意気揚々と亀の死体に近づいていく。


「この亀、食えるんかな?よいしょッと・・・うぉっ、重い重いっ・・、無理やでこれは!」

亀の胴体を持ち上げてみるが、重すぎて『泉の部屋』までは到底運んで行けそうになく、50cmほど動かしてあきらめた。

「これは、持って帰るのは無理やな~、しょうがないあきらめるか・・・ってあれ?」


先ほどまで亀が鎮座していた地面を見ると、なにやら人工物とおぼしきものがいくつかが埋まっている。

「缶詰の空き缶?それに・・・財布!!」

空き缶とボロボロの財布が見つかった。

それらのものを、掘り出した後、念のため広場の隅々まで調査したが、これ以上のものは見つからなかったので、一旦『泉の部屋』に戻った。


泉の部屋に戻り、拾った財布の中身を確認する。

「運転免許証とキャッシュカードにレシートと金が少し・・・」

運転免許証を見ると、すでにボロボロになっており、ところどころしか文字を読むことができない状態にまで劣化している。


「名前は読めない・・・住所は・・神奈川県か、キャッシュカードも横浜支店のもの。誰なのかはわからないけど、日本人のもので間違いないな。ここに俺の前に日本人が来たってことになる」


(ここにいないってことは、ここから出られたのか、それとも・・・・)

頭をぶるぶると振って、嫌な考えを振り切ろうとするが、冷や汗がどくどくととめどなく出てくる。


いつもならさわやかな『泉の森』の風が、ぞっとするほど冷たく感じてしばらく無言で立ち尽くしていた。

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