40.友情パワー
「これを使ってください!トドちゃん!」
セーラー服を着てハートのステッキを持ったおじさんが息も絶え絶えの様子でブリーフを目の前に掲げている。
スクール水着を着てうさ耳のカチューシャをつけたおっさんが呆然とした目でその様を見つめていた。
「・・・え?」
ひろとはかろうじて一言だけ絞り出すことができたが、全く理解できない状況に思考停止した。
「スク水剣士がセーラー僧侶の脱ぎたてのパンツを頭に被ることで一時的にパワーアップすることができるんです!」
「・・・うん?」
ひろとはちょっとよくわからないという顔をして首を傾げている。
「だから、脱ぎたてのパンツを頭に被ることでスク水剣士OPHMにパワーアップできるんですぞ!」
キャナーメちゃんが脂汗を垂らしながら、残る力を振り絞って説明をする。
「・・・OPHM?」
「おっさんのパンツ履いたらマキシマムの略ですぞ!」
「アホかあ!」
ひろとが急にキレ出した。脳が理解を拒否しているようだ。
「どこの世界におっさんのパンツ被ってパワーアップする能力があるんじゃ!」
「・・・この『おちぴよ』の世界では普通のことですぞ・・・もうこれしか・・・方法がないんです!このままでは全滅してしまいます!・・・それでいいんですか?・・・生き残って・・・元の世界に戻りたくは・・・ないんですか?」
「キャナーメちゃん・・・」
「このゲームの・・・世界を生き残るには・・・これしかありません。・・・あとは・・・頼みました・・・ぞ・・・」
キャナーメちゃんはパンツを手渡すと最後の力を使い果たしたのか、意識を失いパタリと倒れた。
「キャナーメちゃん!」
ひろとは、キャナーメちゃんに駆け寄ったが、目を覚ますことはなかった。
「うわあああ!・・クソっ!よくもキャナーメちゃんを!・・・」
ひろとはブリーフをぎゅっと強く握りしめ、すっくと立ち上がりピンクのウサギの方を睨みつけた。
「キャナーメちゃん・・・俺やってみるよ!こうなったら俺だけでも生き残ってみせるよ!」
ひろとは涙を流しながらおっさんの脱ぎたてのブリーフを掲げ、ちょうどブリーフの足が入るところにうさ耳を通す形ですっぽり帽子のように被った。
カッッ!!
パンツを被った瞬間、ひろとが強烈な光に包まれ、周囲に風が吹き荒れた。
強く吹き荒れた風が収まると、塔の中の炎の明かりだけの薄暗い空間が、一瞬だけ明るく照らされ、金色のスクール水着をまとったおじさんがあらわれた。
おっさんが決意を秘めた真剣な顔をしながら、剣を点に向けて掲げている。
「これがOPHM・・・力が溢れてくる!」
余裕の様子で笑い声をあげていたピンクのウサギ、オチン・ポークビッツもただならぬ雰囲気に、ひろとを警戒し、うめき声をあげながら車輪を回転させ始めた。
「いくぞお!」
ひろとは掛け声と同時に一気に駆け出して、オチン・ポークビッツに向かって突撃した。
ガアアアアアアアア
オチン・ポークビッツも同時に咆哮しながら突撃する。
ひろとのサーベルとオチン・ポークビッツの車輪が高い金属音を響かせながら、交錯し、鍔迫り合いになる。
「いけっ!」
ひろとの掛け声とともに、金色に光る股間が回転しながら空中に飛び立ち、敵の背後に回る。
グルルルルル!
車輪のピンクウサギは、空飛ぶ股間に気を取られそちらに向きなおり、突撃していった。
「ふん!」
ひろとが気合いを入れた掛け声を入れると、空中に浮かぶ股間の輝きが増し、高速回転を始めた。
ピンクウサギが尻から火を吹き、一気に加速して股間にぶつかる。
コンタクトの瞬間、ゴキンという鈍い大きな音が室内に響く。
・・・・バキン!
一瞬の静寂の後、オチン・ポークビッツの前輪が砕け散った。
ギャアアアアア!
のたうち回るウサギにひろとは、悠然とした面持ちでゆっくりと近づいていく。
「いくぞ!みんなの仇だあああ!」
剣を上段に振りかぶり、袈裟懸けに力強く振り抜くと、深々とウサギの体を切り裂いた。
オチン・ポークビッツは血まみれになりながら、後ずさりする。
「トドメだ!ひろとスーパーエクスタシーアタック!」
ひろとは、ステータスに書かれていた謎のスキル名を叫んだ。今ならこのスキルを使うことができる。そんな確信があったのだ。
スキルを叫んだ瞬間、剣がうっすらと輝き始め、次第に剣の先端部分に光が収束していく。
光が先端の一点に集中した時、ひろとは剣の先端をオチン・ポークビッツに向けて掲げた。
その瞬間、大量の白濁液が剣から溢れ出し、オチン・ポークビッツに降り注いだ。
大雨で増水した川の奔流のような勢いで、白濁液が噴出し全てを押し流す。
さらに剣から、渦を巻くような強風が吹き荒れ、白濁液とともにピンクのウサギを巻き込んでいく。
白い竜巻が吹き荒れ、敵をズタズタに切り裂き、流れた血が混じり合い赤と白のマーブル模様を描く。
しばらくすると、竜巻が次第に弱くなり、大量の白濁液にまみれながら、オチン・ポークビッツは地面に落下した。
部屋中が白濁液にまみれて、ぐちゃぐちゃになってしまっているが、ひろとは気にすることなく倒れたウサギに近寄って行った。
「トドメだ!」
剣を頭部から胴体にかけて斜めに振り下ろした。
ギャアアア
断末魔の叫びをあげながら、オチン・ポークビッツは動かなくなった。
オチン・ポークビッツのピンクの全身タイツは激しく切り裂かれている。
「倒したか・・・」
トドメをさしたかを確認しようと顔を覗き込んだひろとは、裂かれてビリビリになった全身タイツの顔の部分の布切れをぺろんとひっぺがした。
「えっ?」
オチン・ポークビッツの顔が自分と全く同じ顔だった。毎日鏡で見る、見慣れたおっさんの顔だった。
「・・なにこれ?俺?なんで?」
突然の事実に混乱していると、オチン・ポークビッツの体ががすうっと消え失せ、周囲がいきなり光に包まれ、ひろとは意識を失った。




