34.パーティを組む
自己紹介の後、俺は3人から『おてぃんてぃんぴよぴよオンライン』がどういうゲームなのか説明を受けた。
中世ヨーロッパ風の異世界を舞台にしたオンラインゲームで、大魔王ゲキオチという魔人によって、人々が虐げられており、男は全裸にペニスケース、女性は着ぐるみ姿で過ごすことを強いられている。世界の危機を救うために大魔王の打倒を目指して冒険するというストーリーらしい。
中世ヨーロッパ風と言いながら、『スク水剣士』だの『セーラー僧侶』とかいう常軌を逸した職業に扮して冒険をするというトンチキな設定で、やばいコスプレ姿のキャラクターを操作して非日常を楽しむというコンセプトらしい。
「そこのセーラー服おじさんは、みたまんま『セーラー僧侶』だってのはわかるんだけど、2人はどこが『魔法熟女』、『半裸騎士』なん?」
ひろとは、キャナーメちゃんを一瞥した後、残りの2人に問いかけた。
「『魔法熟女』は本来、アラサーの女性が魔法少女風のコスチュームをしているって設定なのよ。私は普通の魔法使いのローブを装備しているけど」
「『半裸騎士』は、体の前半分だけの鎧を着て、後ろ半分が裸の騎士って設定なんだよ。自分は全身を覆う鎧を着ているけど・・・」
2人はそれぞれ自分のジョブについて、答えた。
「・・なんで、普通の魔法使いと騎士の格好してるん?」
「そんな恥ずかしい恰好できるわけないだろ!!」「ないでしょ!!」
ひろとが、自然と湧いた疑問を口にすると、2人はタイミングを完璧にそろえて、ハモリながら答えた。
「露出の多い魔法少女の服なのよ!着るくらいなら死を選ぶわ・・・」
「後ろ半分裸とかそんな拷問耐えられるか!」
2人が口々に服装に対する愚痴を言う中、ひろとがキャナーメちゃんの方を向くと、セーラー服おじさんは嬉々とした表情で語り始めた。
「いやあ、『セーラー僧侶』のジョブは、セーラー服を装備しない限り、固有の能力上昇と固有スキル取得というジョブ補正の恩恵を受けることが出来ませんからな!!おちぴよをプレイする人間ならセーラー服を着るのは当然です!!ひろと殿もジョブ補正目当てでスクール水着を着ているのでござろう?」
「いや・・・、俺はたまたま水着を着てみたらステータスが大きく上がったから、生き残るためにやむを得ず着ただけだよ・・・・このゲームの世界の仕組みとか全くわかってなかったから偶然やな」
満面の笑みを浮かべながらキャナーメちゃんが問いかけてくるが、ひろとは首を振りながらあいまいに返事をする。
話を聞くと、他の3人も自分と同じように、突然この世界に飛ばされ、1人で何度か試練を受けさせられた後、ここに転送されたとのことだ。
「じゃあ、2人はステータスの上昇効果と固有スキルなしで今までやってきたってこと?」
「そうよ。ひたすら地道にモンスターを倒してレベル上げを繰り返して、上昇効果なしでやっていけるところまでステータスをあげたのよ」
ひろとの質問に対して、魔法熟女田中が答えると、半裸騎士山本がうんうんと頷く。
「へえ~!そういうやり方もあるのか!」
ひろとは、感心しながら手をポンッと叩いた。
「そういえば、今の話を聞いて思ったんだけどオレがスク水着ても固有スキルなんてものは手にいられなかったんだけど、なんでなんかな?」
キャナーメちゃんに向かってひろとが問いかけた。
「それはおかしいですな。ちょっとステータスを見せてくだされ」
「わかった。」
部屋の中央にステータスを表示する石版があったのでそちらに移動して操作しようとすると、キャナーメちゃんに止められた。
「そんなものを使わずともステータスを確認できるでござるよ」
キャナーメちゃんはそう言うと指先を上に向けて一言声を発した。
「すてぇえーたすぅ!おーぷぅううん!」
謎の言葉を発すると、指先から光が放たれて映像が空中に浮かんだ。
映像には、石版に表示されるものと同様の情報が書かれているようだ。
「おおっ!すげえ!そんな方法でステータスが見れるのか?」
「登戸ちゃんもやってみるでござるよ」
キャナーメちゃんに促され、ひろとはウキウキで早速試してみることにする。
「おうっ!!すてぇえーたすぅ!おーぷぅううん!」
ひろとが指先を掲げて叫び声をあげると、掲げた指先ではなく股間から光が放射されステータスの画面が投影された。
「・・・なんで股間から画面が出てくるのよ・・・」
「さあ・・・?」
魔法熟女田中が突っ込むが、ひろとは首を傾げる。
もう正直いちいち突っ込む気にもなれない。
「なんで股間からステータスが出てくるのかは一旦置いておいて、キャナーメちゃんステータス見てくれよ」
キャナーメちゃんがステータス画面を覗き込んで、いくつかの項目をチェックする。
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登戸博人 30歳 レベル12
体力 150
魔力 63
攻撃力 85
防御力 110
すばやさ 29
剣技レベル 2
女神の加護(股間)レベル3
空飛ぶ粗珍フライングサーティーンレベル1
小便もらし レベル2
跳躍力アップ
聴力アップ
防御力アップ
ドM レベル1+1
ひろとスーパーエクスタシーアタック レベル1
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「ふむふむ。『剣技レベル』以外のスク水剣士の固有スキルがありませんな・・・・。代わりに謎のスキルがたくさんありますが、全部見たことのないスキルですな。」
「スキルの強化画面を見てみましょうか・・・」
キャナーメちゃんはつぶやくと、画面の右端にある歯車のマークをダブルクリックした。
画面がブンッと音がして切り替わった。
「おおっ!なんだこの画面?」
ひろとは始めて見る画面に興奮した面持ちで叫んだ。
今後取得・強化できるスキルが、ツリー形式でずらっと並んでいる。
「うーん、一応スク水剣士のスキルはいくつか残っていますが、未取得のスキルはほとんどが黒塗りになっていますね。こんなの初めて見ますな・・・」
「黒塗りになっているのが、謎のユニークスキルってことなのか?」
「・・・おそらく」
ひろとが質問すると、キャナーメちゃんが首をかしげながら返事をした。
「しかも、この画面を見るのが初めてということは、自分ではスキルの取得強化をしていない。つまり、強化に必要なスキルポイントが自動でユニークスキルの取得に使われているようですな。」
「なるほどぉ」
ひろとは、何を言っているがよくわからないが、適当にうなずいてみた。
「うーん、とりあえずスク水剣士のスキルがいくつかありますが、強化しますか?」
「・・・そうだな、『スク水剣士レベル1』のスキルを取得するか!」
ひろとが、画面を眺めながら、答える。
「そうですね。それが良いかと私も思いますぞ」
そんな感じで、『スク水剣士レベル1』を取得しレベルを2まで強化した。
「そういえば、今回いきなり4人が集められたわけだけど、何することになるんだろ?」
ステータス画面を閉じたひろとが、皆に話しかける。
「・・・あれじゃないの?」
「あれ?」
魔法熟女田中が指し示す先には、赤い扉が地面から生えていた。
先ほどまではなかったはずだが、突如として扉が出現している。
「いつのまに・・・なるほど、あの扉の奥でまた試練を受けろと言うことですな!」
キャナーメちゃんがにやりと笑いながら手に持った杖を掲げた。
「今回は、4人パーティで試練に挑めってことか・・・」
半裸騎士山本が、そうつぶやくと、赤い扉がギギギィと鈍い音をたてて、ゆっくりと開いたのだった。




