32.次なる試練
「食べながら出良いので聞いてください」
ひろとが食事にがっついていると、メイドさんが話しかけてきた。
「ん?なんですか?」
スープをすすりながら、目だけメイドさんの方を向いて返事をする。
「豚さんには、この後一泊していただいて、明日から次の試練を受けてもらいます」
「豚さん・・・?」
よくわからなかったので一応聞いてみる。
「豚以外のなんだっていうんですか?」
メイドさんは、マスクで表情は分からないがさも当然のような顔をしながら、鈴のなるような可愛らしい声で答えた。
「ええと・・・・まあいいや・・・次の試練というのは?」
・・・聞いても無駄だったようなので、これ以上詮索しないことにして、質問に切り替える。
「はい、この城で受ける最後の試練になります。前回と同じようにまた魔物と戦っていただきます」
「魔物・・・・」
ここで、初めて魔物という言葉が出てきた。いままで倒した化け物は『魔物』なのか・・・
「・・・魔物を倒すことに何の意味があるんですか?」
メイドさんに湧いてきた質問をぶつけてみる。
「魔物を倒すことで、豚さんに資格があるのか確かめさせていただきます」
「資格とは・・・?」
何かを試されているんだろうとは薄々思っていたが、やはり誰かに何かの試練を課されているようだ。
30代のおっさんがスクール水着を着て、剣とてぃんこを振り回して魔物と戦うという地獄のような試練を・・・・
「それは、この試練を乗り越えたらわかります」
「・・・そうですか」
これ以上は教えてくれなさそうなので、豚さんは追及するのをあきらめることにした。
食事を終えた後、城内の寝室に案内された。
6帖ほどの広さで、家具はベッドと机とイスのみというシンプルな部屋だが、久しぶりのまともな寝床にありつくことができた。今までは、草の上で寝てたもんな。
時間の感覚がないのだが、窓の外を見るとすっかり暗くなっており、もう夜も随分とふけたころのようだ。
用意された寝間着に着替え、部屋に一人になった途端、安心したのか強い睡魔に襲われ、ベッドインした瞬間、泥のように眠りこけてた。
窓から降り注ぐ朝日に朝になったことに気付き、あわてて飛び起きると、起きるのを待っていたのか、メイドさんがタイミングよく部屋に入ってきた。
「おはようございます。朝食の用意ができておりますので案内します」
スクール水着に着替え、メイドさんに連れられて昨日の応接間へ向かう。
朝食は、パンと目玉焼きと分厚いベーコン、野菜スープ。
しっかり食べて、この後に備えなきゃな。
食事を終え、食器が下げられると、メイドさんがコホンとかわいらしい仕草で咳ばらいをして説明を始めた。
「こちらが次の試練に向かうための入り口になります」
メイドさんが、陶器のような白い指先で指し示す先に、真鍮の枠とノブがあつらえられた木の扉がある。
扉にはプレートが貼ってあり、よくわからない文字で文章が書いてある。
見たこともない文字だが、なぜか文字の一部に珍とか金とか玉とか漢字に見える文字がある。
「準備が出来たら、扉を開けて進んでいただきます。次の試練の部屋へつながっております」
メイドさんは、人差し指をピンッと立てて、さらに説明を続けた。
「ここで試練に進んでいただく前に、私どもから、ひとつ贈り物があります」
「装備されているアイテムを一つだけ強化させていただきます。どれを強化いたしますか?」
「装備を一つだけ・・・」
現在の装備は、スクール水着、パンダのリュック、うさ耳のカチューシャ、サーベルが2本、熊の顔が描かれた盾だ。どの装備の優先度が高いのか・・・?うーん、どうしよう・・・
「・・・スク水を強化してください」
ひろとは、しばらく悩んだ結果、スクール水着を強化することにした。
理由としては、やはり防具の性能を上げるのが一番重要だと感じているからだ。
魔物が股間を狙ってくるという謎のスキルを持っていることから、敵の攻撃がどこに来るのかわかるという特徴を利用して、攻撃を避けるもしくは防御して反撃するのが今までの戦いのセオリーになっている。
当然、回避や防御に失敗して攻撃を一定程度くらってしまうことも多いわけで、やはり防具が一番重要じゃないかと思う次第であります。
「わかりました。少しお待ちくださいね」
メイドさんは、部屋の角にある棚を開けて、なにやらごそごそと探し物を始めた。
「あっ、ありました。ではこれをどうぞ」
「ん?布切れ?」
メイドさんから、白い布切れを手渡された。
両手で持って広げてみると、なにやら文字が書いてある。
『1-3 登戸』
「ゼッケンかよ・・・しかも本名しっかり入ってるし・・・なんで1年3組なんだよ・・・13cmかよふざけんなよ・・・」
ひろとは、個珍情報が漏れていることに憤りを覚えたが、いちいちキリがないのであきらめてメイドさんの方に向き直って質問した。
「これ縫い付ける針と糸とかあるんですか?」
「いえ、水着に当てると勝手に貼りつきますよ」
メイドさんに言われたとおりにスクール水着の胸の部分に当てると、水着の布に吸い付くような感触がして、自動的にゼッケンが貼りついた。なにこの謎技術・・・
「これで何が変わるんや?」
特にゼッケンをつけても何も感じないので机の画面でステータスを表示させてみた。
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登戸博人 30歳 レベル12
体力 150
魔力 63
攻撃力 85
防御力 110
すばやさ 29
剣技レベル 2
女神の加護(股間)レベル3
空飛ぶ粗珍フライングサーティーンレベル1
小便もらし レベル2
跳躍力アップ
聴力アップ
防御力アップ
ドM レベル1+1
ひろとスーパーエクスタシーアタック レベル1
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なるほど、防御力が95から110にアップして、防御力アップというスキルが追加されている。
それとドMにレベルが+1されてるな・・・・何なの一体コレ・・・・
とりあえず、ドMの件はなかったことにして、無言でステータスを閉じた。
ステータスを確認した後は、メイドさんに頼んで食料などをいただいて、パンダリュックに詰めていった。
回復用の泉の水は、水筒に詰めてもらったのだが、聞くところによると、この城で使っている水は、全てあの泉の水と一緒のものを使っているということだった。
「では、行ってきますわ」
準備ができたので、メイドさんに挨拶をして、扉に手を掛ける。
「いってらっしゃいませ、豚さん」
「はいよ」
古めかしく建付けの怪しい扉を強く引いて開けて中に入っていく。
ギギギィイイっと扉の軋む音を聞きながら進んでいくと、一瞬周囲が暗くなった後、徐々に明るくなり周りの様子が見えてきた。
さらにしばらく歩いていくと、視界が完全に開けたので立ち止まる。
扉を開けて入った先は、ちょっとしたホールのようだった。30人くらい入れる会議室といった広さだ。
中央に机とイスが並べてある。
ブゥゥウウウウウン
「ん?」
周囲を見渡していると、突然低い音がして、何もないところから人が現れた。
「あれ?」「お?」「おほっ!」
男2人に女1人、計3人の男女が突然目の前に現れた。皆一様に驚いた様子を見せている。
それは、当然だろう。男二人はセーラー服と全身鎧姿の騎士、魔女のような恰好をしているのだから。しかも自分はスクール水着を着ているわけで。
「なんだこの変態コスプレ集団は・・・」
これから何が起こるのか、色々考えてみるも、嫌な予感しかしない状況ににさっそく頭を抱えるひろとだった。




