31.ステータス
「おつかれさまでした」
仮面を着けたメイドさんが、いかにも高級そうなティーカップに入ったお茶を優雅な仕草でテーブルにそっと置いた。
ことりとテーブルと食器が触れ合う小さな音が静かな部屋に響く。
「・・・ありがとうございます。ご主人様」
ひろとは、軽く会釈して紅茶をゆっくりと持ち上げ一口飲んだ。
「ふうっ・・・」
スクール水着を着たあやしいおっさんが、一息ついて、椅子に深く腰を掛け直す。
試練の部屋をクリアしてどうなったかというと、ボロボロの体に鞭打って、這うようにして出現した扉をくぐったところ、城の中の応接間に戻ってくることができたのだ。
そのまま、メイドさんに風呂場に案内され、というか鞭で叩かれて、完全に動けなくなったところを縄で縛りあげられて連行され、風呂に突き落とされた。
ただ風呂に入るだけなのに、なんでこんな酷い目に合うのかはよくわからないのだが、どうやら風呂場のお湯が泉の水と同種のものだったらしく、風呂に浸かると、みるみるうちに体の傷が塞がりあざが消え、あっという間に全快してしまった。
ちなみに鞭で打たれるのがだんだん気持ち良くなってきたのは内緒だ。
ちなみに今も縄で全身を縛られている。
ということで、ひとっ風呂浴びて、元気になって休憩中ってわけ。
「もう少ししたら、お食事をお持ちしますのでしばらくお待ちください」
メイドさんがニコリと笑い、というか仮面で顔は見えないのだが、部屋の隅に移動し、そのまま姿勢を正して待機した。
高級な紅茶っぽい味の紫色の液体を飲みながら、ひろとは独り言を言う。
「俺は、何をやってるんだろうな・・・?」
交通事故で野垂れ死んで、よくわからないところに連れてこられて、モンスターと戦わされて・・・
一体これは何だというんだろうか・・・何か俺の人生にとって意味のあることなんだろうか。
というか、俺の人生死んで終わってんのか?・・・・ってことは、ここは地獄なのか?
地獄で責め苦を味あわされているのだろうか?
まあ、死んでからもこうやって生きている?ってことは、何か意味があるのだろうと無理やり納得させることにする・・・
ヒュッツ!!
「っっつ!!アガガガガアガガッ!!」
いきなり風切り音がしたと思ったら、全身の縄を締め上げられて、たまらず叫び声をあげる。
「ちょっとさっきから気持ち悪いですよ♪独り言言わないでください♪」
メイドさんが手に持った縄をぐぐっと上に持ち上げて、締め上げながら鈴が鳴るような可愛らしい声で言い放った。
「申し訳ございません!ご主人様」
ひろとは、強烈な痛みとちょっとの快感を感じながら、全力で土下座して謝った。
・・・なんなんだこれは一体、と内心思いながら立ち上がり椅子に座り直す。
「さてと、ステータスの確認でもしようかな・・」
ひろとは、これ以上メイドさんの責めを受けないように話題を変えながら、テーブルの中央の大理石っぽい何かの上で手を滑らせた。
ブウゥウウン
ひろとの指が、テーブルの上を滑ると、画面が立ち上がり、ステータスが表示された。
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登戸博人 30歳 レベル12
体力 150
魔力 63
攻撃力 85
防御力 95
すばやさ 29
剣技レベル 2
女神の加護(股間)レベル3
空飛ぶ粗珍レベル1
小便もらし レベル2
跳躍力アップ
聴力アップ
ドM レベル1
ひろとスーパーエクスタシーアタック レベル1
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「はあっ?!何が、空飛ぶ粗珍だっ!!!」
ひろとは、ステータス画面を見た瞬間、たまらず叫び声をあげた。
「しかも、13cmって!!!なんで俺の大きさがバレてんの?、個人情報どうなってんの?!!」
「個珍情報、ダダ漏れですね♫」
メイドさんが、嬉しそうに首をかしげながら答える。
「誰がうまいこと言えと・・・・」
ひろとは、色々言いたいことはあったが、全て諦めて、画面に向き直る。
「・・・ん?」
『空飛ぶ粗珍』をすっと何気なくなぞると、画面がポップアップした。
「おっ、スキルの詳細が出たぞ!」
『空飛ぶ粗珍:股間が分離して飛行する。ダメージを受けると自動発動する。遠隔操作ができる』
まあ想像通りのスキルだな。本当になんなのこの能力。頭おかしい。
「・・・だいぶステータスが上がったなあ、剣技レベルが2に上がってるし、女神の加護(股間)も3に上がってる・・・」
気を取り直して、他のスキルの詳細を確認する。
『剣技レベル2:フェンシングの使い手』『女神の加護(股間)レベル3:防御力が上昇する。敵の意識が股間に集中する。半径3m以内の攻撃を引き付ける』
なるほど、女神の加護については、今まで検証したり、確認してきたことと、ほぼ合致している。やはり敵のターゲットを股間に集中させるスキルだったか。
「小便もらしもレベル2に・・・これはあれやな、聖水殺法のせいやなきっと・・・」
『小便漏らしレベル2:ホントに成人男性?』
・・・ノーコメント。
「っていうか、ドMって何?、なんでこんなものが追加になってんの?」
あごに手を当てて考えていると、メイドさんがすっと前に出てきた。
「何言ってるんですか?縄で縛られてこんなに喜んでいるのに?」
朗らかに語りかけながら、ギギギギィッと縄を締め上げてくる。
「いだだだだっ!!やめて痛い!!」
ひろとが、涙目で懇願すると、メイドさんがすっと縄の締め上げを解いた。
「ふう・・・なんなの?一体・・・」
ちなみに、いかにもただ痛いだけですよって顔をしているが、実はちょっと気持ち良くなっているのは内緒だ。
「うーん、まあドMはとりあえず置いておいて、この『ひろとスーパーエクスタシーアタック』ってのはなんだ?」
指をさっと滑らせて、詳細を確認する。
『ひろとスーパーエクスタシーアタック:※※※』
「・・・・なにこれ?説明書きがバグってんだけど・・・」
よくわからないけど、一部、詳細が確認できないものがあるようだな・・・。
うーんと唸っていると、チリンと呼び鈴がして、メイドさんがワゴンを引いて入ってきた。
いつの間にか、部屋を出ていたようだ。
「食事の用意が出来ました」
メイドさんが、恭しく礼をして皿を並べ始める。
パンにスープに肉料理、ワインと豪勢な料理が並ぶ。
「おおおっ!すげえ!!」
久しぶりの豪勢な食事に興奮を隠せないひろと。
「それでは、ごゆっくり・・・」
メイドさんの一言を合図に、ものすごい勢いで食事にがっつき始めた。
ひろとは、一旦すべてを忘れて、つかの間の休息を満喫することにした。




