20.風雲ひろと城
『泉の森』に戻ることに成功したひろとは、泉の水を飲んで傷を癒し、体力を回復した。
夜までしばらく時間があったため、『森』で食料を調達し、『街』で調達した資材を使って料理をすることにした。
『街』では不思議なことにそのまま食べることのできる食料は一切置いていない代わりに、調味料や小麦粉などの調理すれば食べることのできる一部の食材を見つけることができた。
また、『街』から石畳の一部を拝借して、石積みのかまどを作り、調達してきた鍋やフライパン、料理用ナイフなどの調理器具によってかなり調理の幅が出てきた。
趣味のソロキャンプの知識と経験のおかげでなんとか、ちゃんと料理できる体制が確保できた。
「ソロキャンプの知識がこんなところで役立つとは、人生何が起こるかわからんもんやな~」
今夜の料理は、小麦粉を水で溶いて、薄く広げて焼いたものと鶏蛇の肉、果物類だ。
『街』で見つけた塩を使うことにより人間らしい食事になり感動した。
「今日もまた、死ぬかと思ったけど・・・何とか助かった・・・」
「やっと・・ついに・・・まともな食事にありつけたな・・・・うぅ・・・」
ひろとは、これまでの苦難の連続を思い出し、涙目になりながら腹を満たし、そして寝た。
一夜明けて、再度『街』へ探索に行くことにしたひろと。
前日の夜、今後の方針について色々考えていた。
『石のディスプレイ』を見ると、レベルが7に上がり、ステータスが以下のように変わっていた。
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登戸博人 30歳 レベル7
体力 70
魔力 18
攻撃力 35
防御力 55
すばやさ 14
剣技レベル 1
女神の加護(股間)レベル2
小便もらし
跳躍力アップ
聴力アップ
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跳躍力アップは、パンダのリュック、聴力アップはウサギ耳カチューシャによる効果だろう。
意外だったのは、跳躍力は上がるが、元の素早さは上がっていないらしい。
確かに、ステップした時の跳躍速さは上がっているが、その他の動作はスピードが上がっていないので納得はいく。
パンダのリュックについて調べると、右側の肩紐にボタンがついており、それを下にスライドさせると跳躍力アップの効果が表れ、上にスライドすると効果が消えることが分かった。
普段はオフにしておいて、必要な時にオンにさせる使い方ができるのだ。
また、リュックは防御力、カチューシャは攻撃力を少しだけ上げてくれる効果もあった。
そして、なぜだかはわからないが、『女神の加護(股間)』がレベル2に上がっていた。
あれだけ股間を攻撃されて、激痛に耐えてきたのだ。
なにかインセンティブでもないとやってられないところだが、いったいレベルがあがったとて何になるんだろうか・・・。
嫌な予感しかしないし、むしろおちょくられている気がして、腹が立ってくるまである。
次に『街』の攻略についてだが、ピンクのウサギを倒しても、新たな『扉』は出てこなかった。
ということは、あれはボスではないのだろう、中ボスなのだろうか?
引き続き、『街』を探索してボスを倒すのか、何かを見つければよいのかはわからないが、とにかく先に進まねばならない、つまり『街』を引き続き調査する必要があることだけは分かる。
また、宝箱から見つかるアイテムが攻略をかなり楽にしてくれるということも分かったため、これを最優先で手に入れるのも重要だ。
ただし、アイテムを手に入れれば入れるほど、見た目がとんでもないことになっていくのだが、これはどうしようもないのだろうと、内心ではあきらめ始めている。
というか、そもそもなんで自分はこんな場所に閉じ込められて意味の分からないことをしているのだろうか・・・
事故死して、わけのわからないことを延々とやらされて・・・・
死んで、やっと人生のレールから降りられたのに、よくわからんレールにまた乗せられる・・・人生とは因果なもんだ。社畜から解放されたと思ったら、今度は謎の変態的なノルマを課せられる・・・・
人生は、常に苦難の連続ということだろうか・・・
「これからどうなるんやろ・・・こんなくだらないことしたくもないけど、やらなきゃいつまでもこのままだろうし・・・めんどくさいけどやるしかないかぁ・・・・」
ひろとは、『扉』をくぐり、『街』に入った。
肩には、皮紐を括り付けた銅製の小型の水筒を肩に掛け、腰にナイフを革製のシースで括り付けている。
水筒は、前日の帰り際に拾ったものだ。割れた小瓶の代わりに『泉の水』を入れている。
複数回分の水が入るため、回復により継戦能力が上がり、攻略難易度が下がるだろう。
パンダのリュックには、食料を蔦を編んで作られた籠に詰めて持ってきている。
これで長期の探索も可能になる。
「!!」
『街』に入り、周囲を見渡すと、突然東側に何か巨大なものが見えて慌てて振り向いた。
・・・城だ。
西洋風の城が突如として出現していた。
『街』の建物は平屋の建物ばかりであるが、3~4階建ての建築で真ん中に高い塔がそびえたっており、周囲とのコントラストから圧倒的な存在感を感じさせる。
また、いきなり新たな城が出現したというよりは、さも今までそこに当たり前にあったかのように馴染んでおり、『街』の建物と同様に適度に古びており違和感が全くない。
城下町の奥にそびえる、中世のお城といった佇まいだ。
「・・・次は、城に入って探索しろってことなのかね・・・・」
ひろとは、独り言ちて、まぶしげに手を額のあたりにかざしながら見上げて、しばらく城を眺めていた。
次回から第3章です




