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19.うさ耳おじさん

「はいーっ!」

ひろとは、四つん這いの状態で、掛け声をあげていた。

パーンッ!!

黒いボンテージ姿の女性がひろとが叫ぶたびに鞭を打ちつけている。

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

スクール水着を着た四つん這いのおじさんが激しい痛みが走るたびに、感謝の言葉を叫んだ。


パンッ!・・パンッ!

だんだんと鞭を打つ間隔が短くなっていき、遂にはパンパンパンと連続して打ちつけられていった。

「ああっ!ああっ!ああああああーーーー!!!」

ひろとは、恍惚の表情でのけぞりながら、あらん限りの声で叫び、視界が白い光に包まれていった。


「・・・はッ??・・・夢??・・・」

ひろとは、薄暗い部屋の中で目を覚ました。

全身から床が濡れてしまうほどの大量の汗をかいている。

冷たく湿った硬い床の感触に顔をしかめ、体を持ち上げようとすると全身に痛みが走った。


「あががが・・・痛てぇっ!」

痛みに顔をゆがめながら、ゆっくりと時間をかけて立ち上がった。


「なんで・・・こんなところで寝てるんだっけ?」

状況が呑み込めずにしばらく考えていると、記憶が思い出され状況をすこしずつ理解していく。

「・・・ウサギ野郎と戦って、力尽きて寝てたんか・・・・」

「戦っている最中に、筋肉痛になったんやったな・・」


どうやら、ピンクのウサギ顔と戦った後、しばらく寝ていたようだ。

パンダのリュックの効果で、跳躍力が上がった引き換えに全身が筋肉痛になり、疲労で意識を失ったのだった。

しかも、全身筋肉痛になったせいなのかは分からないが、SMプレイの夢まで見るというおまけ付き。

一応断っておくけど、決してそんな性癖はないということは、声を大にして言っておきたい。


状況の整理をしながら、パンダのリュックを背中から下ろして床に置き、周囲の状況を確認する。

戦闘で部屋が荒らされた跡は残っているが、ウサギ顔の死体は消えてなくなっている。


誰かが死体を持ち去っていったのか、勝手に消えたのか・・・仲間が持ち去っているのならば、その時に自分は襲われているだろうから、そうなると勝手に消えたのだろうか・・・・


考えをめぐらしながら、ウサギ顔が倒れたあたりを見ると、何かが落ちているのが見えた。

「ん?なんやこれ?」

痛みを我慢しながら、ゆっくりと近づき、それを手に取った。


「ウサギ耳のカチューシャ?」

ピンク色のウサギ耳のカチューシャだ。100円ショップで売っているパーティグッズのようなチープな質感のアクセサリだ。


「・・・もしかして、さっきのウサギ顔を倒した報酬か?・・・ふざけてんのかマジで・・・」

ひろとは、うんざりした顔でつぶやく。


「まあ、今更これを着けても、やばい恰好であることは変わりないか・・・」

ため息をひとつついて、あきらめ顔でウサギカチューシャを装着した。


装着してしばらく待ってみるが、何も変化は無い。

ただやばい格好したおじさんが生まれただけだ・・・


「うーん、何も変わらなんな・・・着けてもどんな効果があるかわからん」

体を動かしてみたり、何か変化がないか試してみたが、特に変化を感じられなかった。

逆に何かダメージを受けたりといったことは無かったため、装着したままにすることにした。


「とりあえず、『泉の森』に戻って水を飲んで回復しないと・・・」

しかし、全身が痛みでまともに動かせないこの状況では、道中ウサギ顔に出くわしたら確実に嬲り殺しにされてしまう。


「街道沿いを、建物に入って隠れながら、ウサギ顔に見つからないように『扉』まで戻る・・・しかないか・・・」

「ここにいても、腹も減るし、体力が回復するわけでもないし、やるしかないな」


ひろとは、そう決めると、パンダリュックを手に取る。

「こいつは、今背負うと大変なことになってしまうなあ・・・どうするか?」


試しにリュックを背負ってみる。

少しだけ足を動かしてみると、動きが軽くなった感覚が分かる。

リュックの肩紐を片側だけ肩にかけると、体が軽くなった感覚はなかった。

リュックを片掛けにして、背負えば跳躍力が上昇する効果が発現しないようだ。


「ヨシ!じゃあ行きますか!」

リュックを片掛けにして立ち上がり、威勢の良い掛け声をあげてみるものの、体はまともに動かない。

痛む体を引きづりつつ、慎重にゆっくりとした足取りで建物を出て、石畳の道を歩き始めた。


周囲を伺いながら、できる限り見つからないように建物の影に隠れたり、室内に入って扉や窓から周囲を見渡しつつ、慎重に歩いていく。ついでに使えそうなものがあれば、リュックに詰め込んでいきながら進んでいく。


「ん?」

道路を進んでいると、足音が聞こえてきた。

「やばい、来たな・・・」

目の前の建物の扉を開け、室内に避難して様子を確認する。


「・・・ん?来ないな?」

しばらく待ってみても一向に来る様子がない。

足音は聞こえており、だんだん近づいてくる気配はあるが、ウサギ顔がなかなか現れなかった。


「・・・・おっ!来たな・・・」

しばらくすると、やっとウサギ顔が建物の外を通り過ぎて行った。


聞こえてくる足音もずっと、一定のペースで実際に目の前の通る時も一定の速さで歩いていた。


途中で、まっすぐ進まずにうろうろしてたんかな?と不思議に思いながら、離れていくウサギ顔を物陰から見つめていると、ウサギ顔の姿が見えなくなった。


「・・ん?あれ?足音が聞こえる?」

ウサギ顔からかなりの距離ができたにもかかわらず、まだ足音が聞こえている。

普通なら絶対聞こえない距離であるが、明確に足音を認識できている。


「・・・もしかして、このうさ耳カチューシャ、聴力が強化されてる?」

確認のためカチューシャをつけ外ししてみると、つけた状態で明確に足音が聞こえるのが分かった。


うさ耳を手で撫でながら、笑顔で拳をぐっと握りしめてつぶやいた。

「このうさ耳カチューシャがあれば・・・ウサギ顔に見つからずに『扉』まで戻れるぞ!」


それから、ひろとは、うさ耳の効果で、かなり早い段階でウサギ顔が近づいてくるのを確認することで、ウサギ顔に見つかる前に建物内に余裕をもって非難することが出来るようになった。


ウサギ顔との無用な衝突を避けることに成功し、かなり時間はかかったが『扉』に無事帰還することが出来たのであった。

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