15.追い詰められた不審者
ひろとは、一夜明けてまた『城塞都市』に繰り出していた。
「とりあえず、スクール水着の性能を確認しときたいな・・・」
扉を出て前日とは逆の東の方向へ向かって歩く。
しばらく歩いていると、前方から十字路から、ウサギ顔が顔を出した。
「おっ!ウサギ顔発見!!」
ひろとは、小走りでウサギ顔に向かって近づいていく。
ウサギ顔は、スク水を着た怪しいおじさんの存在に気づき、歯をむき出して威嚇してきた。
「おらウサギ野郎、やってやろうじゃねえか!」
ひろとは、腰を落として、サーベルを構え、じりじりと間合いを詰めていった。
シャアアアアアア!!
ウサギ顔は叫び声をあげながら、躍りかかった。
「あひゃん!」
ひろとは、謎の奇声をあげながら、サーベルで切りつけた。
ウサギ顔の胸を切り裂くが、ウサギ顔はそのまま飛びかかる。
ひろとが、バックステップしてかわすと、ウサギ顔は股間に向かって蹴りつけた。
「いってっ!!」
股間に蹴りが命中した。
(痛いけど、それほどじゃない!?)
スクール水着のおかげで、蹴られて痛みは感じはしたが、痛みにうずくまることもなく、動けるレベルの威力に抑えられている。
「よし!!これならいける!」
ひろとは、そのまま一気に距離を詰め、サーベルを突き出した。
ブシャアアアア!!
ウサギ顔の腹部にサーベルが刺さり、血が噴き出す。
そのまま、ウサギ顔が崩れ落ちるのを確認して、サーベルを抜いて、血を払った。
「ふぅ、防御力が上がったおかげで、痛みがだいぶん抑えられてるわ・・・1対1なら十分戦えるで」
満足げな顔で、どゅふふと笑いながら仁王立ちする。
「さあ、次や次!」
調子に乗って、スキップしながら街道を進んでいると、新たなウサギ顔が近づいてきた。
「よっしゃ!次の獲物や!やってやるで~!」
ウキウキ顔で、ウサギ顔に近づいていく。
「ん?色が今までのと違うな・・・・・」
ふと、今までのウサギ顔は、白色の毛皮だったが、薄いピンク色の毛皮のウサギ顔であることに気づく。
手には、木の棒を持っている。
ピンクのウサギ顔は、ひろとに気づくと、威嚇することなく、落ち着いた態度で近づいてくる。
「なんだ?・・・・いやに落ち着いてんな・・・」
そのまま、じりじりと間合いを詰めると、股間を狙って棒を振り下ろしてきた。
「うおっと!!あぶねえ!!」
ひろとが、棒の一撃をなんとかかわす。
ビュンッと鋭い風切り音がして、冷や汗がどっと噴き出る。
ピンクウサギ顔は振り下ろした棒をそのまま振り上げた。
「アガッ!!!」
股間に激痛が走り、ひろとの顔がゆがむ。
(やばいっ!!痛ぇぞこれ!!)
ひろとは、とっさにサーベルを突き出しつつ、間合いを測ると、円を描くように動きながら痛みが治まるのを待つため時間を稼いだ。
しばらくにらみ合いが続き、痛みが引いたタイミングで、一気に切りかかった。
「あひょい!!」
サーベルで3回連続で切りかかるが、軽快な動作で簡単に避けられてしまった。
「うそ!!」
予想外のピンクウサギ顔の動きに驚愕しつつ、棒による攻撃をサーベルで受け止める。
数回、サーベルで切り結ぶと、相手の勢いに押され、たたらを踏んで後退する。
(股間を集中して攻撃してくることが分かっているからなんとか防御できているけど、スピードもパワーも相手が数段上手やでこれ・・・・)
ひろとは、数回の攻防で、こいつはやばいと確信した。
フェンシングの試合で、あきらかに格上の相手と対戦したときの感覚と同じものを感じ、動悸が激しくなっていく。
ピンクウサギ顔がすこしずつ間合いを詰めていくと、相手のプレッシャーに押され、じりじりと後ずさりしていった。
「これは・・・逃げるが勝ちや!!」
ひろとは、まともに戦っても厳しいと判断して、『扉』に向かって、踵を返して走り出した。
ピンクウサギ顔が、逃げ出したのに気付き追いかけてくる。
「はあはあ、このまま逃げ切るしかないっ・・・」
全力疾走で走り続けるが、ピンクウサギ顔は10mほど後ろをぴったりとついて走りながら、こちらの様子を伺っている。
「!!」
『扉』まで後100mほどと迫ったところで、十字路の横道から白いウサギ顔がひょっこりと顔を出した。
「やばいっ!挟まれた!」
ひろとは、慌てて急停止するが、2匹のウサギ顔に挟み撃ちにされる形になり、前後をきょろきょろと落ち着かない様子でなんども振り返りながら、脂汗をだらだらと垂れ流し始めた。
「くそ!!やばいぞ!!どうする?どうする?・・・」
しばらく、にらみ合っていると、痺れを切らしたのか白いウサギ顔が最初に動いた。
白いウサギ顔が、飛びかかってくるのを横っ飛びでかわすと、背中が何かにガンッとぶつかった。
「!!」
道路脇の建物に背中が当たったのだ。
「そうだ建物!!」
建物の方に振り返ると、扉が見えた。
「こうなりゃ入るしかないっ!!」
ひろとは、反射的に扉を開け、建物の中に飛び込んだ。
そのまま、急いで鍵を閉める。
「あわわわ・・・・・・・・何かないか?ないか?・・・あった!」
周囲を見回し、長い木の棒を見つけた。
「こいつをこうして、こうだ!」
そのまま、つっかえ棒代わりに木の棒を立て掛けた。
ドンドンッ!
ウサギ顔がドアを叩いている。しばらくは、これで持つかもしれない。
ひろとは、薄暗い部屋のなかで、つかの間の安寧を得たことに安堵した。
「建物に逃げ込んだはいいけど、このままじゃ逃げ場のない室内で嬲り殺しにされるやろ・・・」
「武器や武器・・・なんかよい武器ないか?・・・」
ひろとは、パニックにならないように、必死に平静を装いながら、室内を見回す。
建物は、雑貨屋のようだ。鍋から皿、薪などの生活必需品から本などの嗜好品までが所狭しと並んでいる。
なにか武器になるようなものはないか、商品を順番に見ていくがめぼしいものは何もない。
ふと、店のカウンターの方に目を向けると、カウンターの上に、昨日見たスク水の入った宝箱と同じものが鎮座しているのを発見した。
「おおっ!ナイス!宝箱やん!」
ひろとは、宝箱にかぶりつくように近づき、箱を開ける。
箱には、白いリュックサックのようなものが入っていた。
取り出すと、白と黒の有名な動物の顔の形をしたリュックサックだった。
「パンダのリュックサック?・・・」
予想外のものが宝箱から出てきて、ひろとは首をかしげるのだった。




