13.危機一髪
ひろとは、手に取ったスクール水着をしげしげと眺めまわしながら、つぶやいた。
「スクール水着ねえ・・・まあ一応持って帰るか」
宝箱に入っていたということ、ヨーロッパの街並み風の民家の中に急に現代の物が置いてあったという不自然な点から、これはなんらかの特別なアイテムである可能性があると結論づけた。
「これを着てくれるお姉ちゃんがいるのかもしれんし・・・」
嫌らしい顔をしながら、うへへと笑い出す。
調理器具や食器を入れた麻袋を背負って民家を出た。
そのまま『扉』へ向かって歩き出す。
「ウサギ顔は・・・おらんな・・・」
周囲を見渡しながら、街道を歩いていく。
今にも人が現れて、あいさつしてくれそうな生活感が残った無人の街を歩いていく。
日がかなり高くなっている。ちょうど昼間に差し掛かったころのようだ。
「ええと、太陽の向きからいくと、あっちが東だから、扉を出て西方向へ進んでいって、今戻っているところってことやな・・・四角形の塀で囲まれた街に、東西南北に沿って碁盤の目のように道路が作られているみたいだな」
ぶつぶつ考え事をしながらすたすたと歩いていくと、十字路に差し掛かった。
十字路に入ったところで、塀の死角からウサギ顔が現れバッタリ出会う。
「あん!!」
ひろとは、完全に虚を突かれ先手を許してしまった。
きしゃあああああ
ウサギ顔が叫びながらこちらに向かって走り出し、いきなり組み付いてきた。
そのまま、ムエタイのように股間に膝蹴りを食らわせてきた。
ゴスッ!!!
「ア゛ッッ!!やめて・・・ア゛ッツ!!」
連続で膝蹴りを食らい、脂汗をだらだらと流しながらその場にうずくまる。
「こんのやろうっ!!」
なおも、蹴りを加えようとしているウサギ顔に、サーベルを抜き、そのまま腹に突き刺した。
プスッ!!
ギャアアアアアア!!
ウサギ顔の力が緩んだタイミングで、組み付かれた手をほどき、殴りつける。
「おらああああ!!」
殴って牽制しつつ、距離をとってサーベルを構えると、背後から物音がした。
後ろからももう一匹ウサギ顔が近づいてくる。
「マジかよ・・・・」
じりじりと2匹に追い詰められていく・・・。
2匹のウサギ顔が同時に飛びかかってきた。
「わあああああああ!!」
ひろとは、まずは手負いの方を先に倒した方がよいと判断してサーベルで切りかかった。
ウサギ顔の頭部をえぐるが、致命傷にはならない。
ドガッ!!
後ろからウサギ顔が蹴りかかってきた。
股間を狙うが、後ろを向いているため、ちょうどお尻のあたりに蹴りが入る。
「グッ・・・!!」
たまらず、片膝をつくが、闇雲にサーベルを振り回した。
ウサギ顔の体をサーベルの刃が浅く切り裂き、ウサギ顔が後ろずさった。
ガスッ!!
今度が、前方のウサギ顔が殴り掛かってくる。
たまらず腕でガードすると、腕に鈍い痛みが走った。
「はいやー!!」
ひろとは、渾身の力でサーベルをウサギ顔の首に突き刺すと、血しぶきとともにウサギ顔は崩れ落ちた。
「後は一匹だけ・・・」
ひろとは、残りのウサギ顔に向かって、サーベルをゆっくりと掲げる。
すると、ウサギ顔の背後からまた新たなウサギ顔が1匹姿を現した・・・。
「・・!!・・あかん・・・・これはあかん・・・」
ひろとは、ダッシュで扉に向かって逃げだした。
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「はあはあ・・・ああっ!」
ひろとは、草むらに倒れこんだ。
あれから、何度か追い付かれ股間を蹴られ、殴られながらなんとか『扉』に逃げ込むことに成功した。
小瓶に入れた泉の水を飲む余裕もなく、全身擦り傷や打撲でボロボロになりながらたどり着くことが出来た。何度か殴られ、顔の半分がパンパンに腫れ上がっており、片方の視界が塞がっている。
倒れて、地面に突っ伏していたが、泉の水を飲むため立ち上がる。
「グッ!!」
脇腹の辺りに鋭い痛みが走る・・・あばらが折れているのかもしれない。
右足を引きずりながら、泉まで歩き、顔を突っ込み、水を飲む。
全身を光が包み、怪我が急速に癒されていく。
視界が元に戻り、意識がクリアーになる。
「助かったか・・・・」
ひろとは、なんとか死なずにすんだことに安堵しながら大きなため息をついた。
『城塞都市』は、開けた街道を進むようになっており、視界が広いため自分が発見されるリスクが高い。
また、建物や塀などの死角が多く、至近距離での遭遇が発生する確率が高く、危険度が高い。
さらに、ウサギ顔と戦っている最中に他のウサギ顔が現れ、1対多人数の不利な状況に陥りやすい。
「このまま、無策に街を歩いていると遅かれ早かれ死んでしまうな・・・」
反省の弁を口にしながら、泉の脇に置いてあったリンゴ桃を手に取り、かぶりつく。
「まあそれは一旦置いておいて、戦利品の確認をしよう」
麻袋の中から、スクール水着を取り出す。
「うーん、どうすっかなこれ?」
「・・・とりあえず着てみる?」
ひろとは、おもむろに服を脱ぎ始め、スクール水着に足を入れる。
「サイズピッタリやな・・・」
スクール水着を着て、そのまま泉まで行き、水面に映った自分を見る。
地獄絵図のような映像が水面に映り、咄嗟に目をそらした。
「これは、あかんぞこれは・・・」
さっさと水着を脱いでしまおうとしたが、ふとあることに気づく。
「これ着ると、ステータスどうなるんやろ?」




