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12.ギルドからの冒険者

 ゴブリンは甘い匂いがするものに惹かれ、花畑や果物を荒らす。匂いが強いものを近くに置くことは、彼らをおびき寄せることになる。


 つまりは。ソイツらを退治しないと、俺たちの用意した花も果物も売れるわけが無い。

 そのため、こうなる運命ではあるのだが……。


「ナツたち、ゴブリン退治を手伝います!」


 あーあ。言っちゃった。

 俺はあまり乗り気ではないが、しかし、背に腹は代えられないか。


「それは助かる。ギルドの冒険者が来たら、是非協力してやってくれ」

 そうだった。ギルドというところから、ゴブリン退治の依頼(クエスト)を受けた冒険者がやってくるのだった。


「まあ、彼らの手伝いくらいなら……」

 と思っていると、なにやら村の宿のほうが騒がしい。どうやら、隣町から荷馬車が到着したようだ。

 俺たちも、その荷馬車が気になり宿の前に移動した。


 馬車の中には荷物と、そして、人が見えた。おそらく彼らが、依頼を受けた冒険者──


「なーっはっはっはっ!! ……とうっ!!」

 女性の声の高笑いが村に響いた。と同時に、その女は馬車から飛び出した。


 あ、足にロープ引っかかってる。


「……ぐへぇっ!!」

 飛び出した勢いそのままに、彼女はど派手に転倒し、顔面から地面にキスをした。

 集まっていた村人全てが、その痴情の目撃者となってしまった。


「ろ、ロープ痛っ、ぺっ! ぺっ! 土が口にっ! おえっ!」


 体のラインがハッキリ出る服の上から、金属製の胸当てと腰巻きを装備していた。スラリとしたスレンダーな体型と、焼けた褐色の肌。焦げ茶色の短い癖髪が、彼女を活発な女性に仕立てていた。


 長剣(ブロードソード)円盾(ラウンドシールド)を身につけていたことから、彼女がギルドから依頼を受けて来た冒険者、なのだろう。うん。


「アタシが来たからには、もう安心だ!」

 姿勢を正し、土埃を払った彼女は、親指を自分に向けて、ドヤ顔で宣言したのだった。


 不安しか無い。


「ちょ、まってよファンダっ!」

 遅れて馬車から出てきたのは、少年だった。

 身長は俺より同じか、低いくらい。おかっぱボブっぽい髪型で、前髪はパッツンと切りそろえられていた。

 彼はマント──いや、あれはローブか──を羽織い、まるで瓶底のような丸メガネを身につけていた。抱きかかえるように持った長い杖は、なるほど、さっきの女性が前衛、彼が後衛のコンビということを、俺に理解させた。


 高さの有る馬車の荷台から降りるのに手こずる彼を背に、女は、集まっていた群衆に向かって歩んでいた。

 するとその人だかりから、さっきまで俺と会話していた男が前に出てきて、彼女に声を掛けた。


「長旅ご苦労様です、冒険者殿。私はトゴ。今回の依頼人です」

「アタシはファンダレン! ファンダって呼んで! こっちはクウ!」

「く、クウです。よろしくおねがいします」

 彼女に追いついた、クウと呼ばれた子も挨拶していた。


 うーん、なんとも頼りない面々だ。


 そんな挨拶を交わしていると、トゴが俺たちを手招きした。どうやら、ゴブリン退治の手伝いをするに当たって顔合わせをさせたいようだ。


「はじめまして、ランジェです」

「ナツですぅ〜」

「よろしくな、ふたりとも! まあ今回は出番は無いがな!」

 すると、彼女──ファンダレンが自身を親指で指し、宣言した。


「アタシは……『勇者』だからなっ!」


「……ん?」

「ほへぇ?」

「ファンダ、それ止めて、恥ずかしいよ……」

「なーっはっはっは! まずは飯だっ!」


 自称勇者様は、高笑いのまま宿に向かっていった。その後ろから、とことことついていく少年。


「キャラが濃いな」

「濃厚ですねぇ」


 ここまでナツと意見が合致するのも珍しい。


 しかし裏を返せば、彼女の自信はベテラン冒険者だからこそ、醸せるものかも知れない。


 ……いや、にしては、武器や防具が綺麗すぎる気がする。

 新調したのかな。そうであってほしい。頼む。


 俺たちも彼女たちを追いかけた。一緒にゴブリン退治を行うのであれば、もっと精密な打ち合わせを行いたいところである。


「──ファンダレンさん」

「ファンダって呼んでくれ!」


 めんどくせ。


「ファンダさん、今回のゴブリン退治ですけど、なにか策や案があるんですか?」

「ん? 無いよ?」

「えっ」

 あまりにあっけらかんと言い放った彼女の言葉に、俺は言葉を失った。


「ゴブリンなんて、雑魚でしょ雑魚! 初心者(アタシたち)にお誂え向き! ってギルドの人に紹介されたの!」


 危惧していたことが現実となった。

 こいつら、ベテランなんかじゃない。

 ただの自信過剰な新米冒険者だ。


 俺の中の不安の種が、今、一斉に芽吹き始めた。




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