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キャンパスライフと最強の美少女

「キャンパスライフっていうのをエンジョイしたいのぉ」


「じゃあ、明日からなんちゃって女子大生になっちゃいますか?」

 藤沢が提案した。

 

 藤沢はばあちゃんのことが気に入ったらしい。美少女に惚れるということ自体は理解できる。ばあちゃんは未亡人となって今は独身だし、成人しているし、孫として文句は言えないな。


「藤沢くん。明日からよろしゅうお願いします」

 深々と頭を下げる。十八歳の若い女子にしてはやはり動作に違和感しかないが。とりあえず傍目から見た若者四人は、解散することになった。


「藤沢君、良い男じゃのぉ。顔だけではなく性格もいい男じゃないか」


「じいさんの若い時の写真だ。似ているだろ?」


「あ、藤沢にそっくりだ」


「運命かのぉ。余命いくばくもない老人にきっと夢を与えてくれたに違いねえ」

「余命って本当に三日なのか?」

「そうだ」

「まさか冗談だろ」

「神のお告げだ。間違いねえ」

「残された二日を楽しく過ごすべな。おまえさんもくよくよせず、新しい恋を見つけるんだぞ」

 たしかに八十歳という年齢を考えると、いつ死んでもおかしくないのだが。

 目の前にいるのは十八歳の若い健康な女性だ。


「もしかして、病気なのか?」

「血圧とか老眼とか足腰が痛いとか耳が遠いとか――色々体に故障はでていたけんども、今は若いからなんともないよ。でも三日後に八十歳の体に戻った時には死ぬって言われているからのぉ」

「じゃあこのままでいられないの? 永遠の十八歳とか」

「いんや、人には寿命があるからのぉ。姿を偽っても寿命は限りがある」

「八十五歳くらいまでは生きられるんじゃないのか?」

「それは無理だ。死ぬとお告げがあったのだ。一か月の余命を八十歳のまま過ごすか三日だけ十八歳になって死ぬか、二つに一つを選べと言われてな。どうせなら楽しんで死ぬという選択をしたんじゃ」


「なんで? 若くなれるのは、ばあちゃんだけ? 死神なんているのか?」


「結構いるんじゃて。二日だけとか一日だけとか若い肉体で過ごしたいと願う高齢者。でもそのことは一人にしか話してはいけないらしいんじゃ。」


「もし、二人以上に話したら?」


「その時は即死じゃて」


「結構怖い条件だな」


「どうせ元々老体でも一か月。十八歳の肉体ならば三日間の寿命。ならば若返って楽しんだほうがいいじゃろ?」

 僕にはどちらともいえなかった。大好きなばあちゃんには、なるべく長く生きてほしかったけれど、八十歳の体で東京に来ることは大変だっただろうし、ばあちゃんは僕に会えないまま死んでしまっただろう。


 若くなれば三日のみ。今日はもう夜だし、実質二日になる。刻々とお別れの時間が迫っていることに、悲しみを感じていた。でも、明るく無邪気なばあちゃんをみていると、これでいいのかもしれないという気持ちになった。今は超高齢化社会だから、健康寿命は短い。病気を持ちながらも、なんとか生きている人が多い。歳を取れば取るほどそれは顕著になる。


 ばあちゃんは、僕の両親とは少し離れたところで一人暮らしをしているが、一人は寂しかったのかもしれない。もしかして、これがばあちゃんの幸せの形なのかな。ばあちゃんらしくて、少し納得できたように思う。


 一日目の夜は色々語り明かしたかったのだけれど、ばあちゃんは疲れてすぐに寝てしまった。ばあちゃんは朝に強いからな。早めに寝て明日のために休んでおくか。僕は、あと二日しか生きられないと知っている元気なばあちゃんを横目に眠った。


 朝になると、やはりばあちゃんは朝から元気で、見た目は十八歳のままだった。

 大学に一限目から行く気満々で 

「女子大生にみえるかの?」

 などと言っている。

 まぁ見た目ならば、大学生に見えなくもないが、相変わらず年寄りくさい話し方をする。こればかりは癖になっていて治らないようだ。


 大学に行くと、昨日のメンバーが手を振ってくれる。僕だけならば、グループ交際のように親しくもなれなかっただろうが、ばあちゃんのおかげで、大学に馴染んできたような気がする。大学生活が二年目にも関わらず 親しい友人はいなかったし、特にサークルにも入ってなかった。

 毎日が楽しいとも感じていなかったが、今日はなんとなく、楽しい気持ちになっていた。都会の無関心をいいことに、居場所を作らない生活をしていた。それがいいのか悪いのか今の自分にはわからない。


 ばあちゃんは昨日着ていないほうの新しい洋服を着て登校した。社会勉強のために大学へ来たのだ。やはりパステルカラーの色合いは春の季節に合っていたし、美少女という点で、どんな色合いも着こなせるのだ。

 

 最強だな、僕のばあちゃんは。


 ドラマの一場面さながら、若い男女が楽しそうにキャンパスを歩く。

 しかも僕以外は美男美女だ。ばあちゃんがいてくれてよかった。そう思えた。



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