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初の大学と美少女

「ほぉー。りっぱな大学じゃの」


「椿ちゃんも、東京の大学受けるの?」


「あと五十年以上生きられるのなら……受けてみたいもんだわい」


 葉月さんは少し不思議そうな顔をしていたが、幸い天然で深いことを考えない葉月さんは聞き流してくれた。あまりばあちゃんの発言に突っ込まないことに僕は安堵を覚えた。


「椿は、おもしろいこと言うのが好きで天然キャラだから」

 フォローになっているのかどうか不明ながら……一応妹のフォローをしておいた。


 サークルや部活のために日曜でも学生があふれかえっている。


「キャンパスライフじゃの……」

 十八歳の美少女が遠い目をして言う台詞ではない。そんな見た目と言動がちぐはぐのばあちゃんは、ある意味チャーミングだった。


「やっぱり椿ちゃんおもしろい」

 葉月が笑う。

 八十歳のばあちゃんが言えば何の違和感もない台詞なのだが。


「よお、ひびきに葉月に、そちらは? はじめまして……かな?」


 部活が終わって帰ろうとしていたとき。同じ学部の藤沢に会った。

 藤沢はサッカーサークルに所属する教育学部の同級生だ。

 見た目は爽やかで笑顔が優しい男だ。


「ひびきの妹の椿でございます」


「妹がいたのか? 椿ちゃん、よろしく」


 藤沢はいつも明るい。気配りができるし、女子とも気兼ねなく話せるタイプで友達が多い。


「妹を大学に案内するのか? 俺も一緒しちゃおうかな」


 思わぬところでメンバーが増えた。断る理由もないし、とりあえず構内を四人で横一列になって歩く。


 小声でばあちゃんが耳打ちする。

「あの男、じいさんににてるのぉ」

「そうか?」

 俺は数年前に亡くなった祖父の姿を思い出すが、ここにいる二十歳の藤沢に似ているとは思えなかった。しかもこんなにイケメンだっただろうか?


 一抹の疑問が生まれたが、若い時はきっとイケメンだったのだろう。そう納得することにした。


「藤沢君といったな。ひびきがいつもお世話になっております」


「いえいえ、礼儀正しい妹さんですね。高校生かな?」


「はい。十八歳の可憐な乙女でございます」


「なんだか椿ちゃんって、語調とか話し方が面白い子だよね」


 藤沢、面白いというより、ばあちゃん言葉なだけだからな。


「校庭が広いのぉ。教室の数も多いし、死ぬ前に見ることができてよかったわい」


 そういえばばあちゃん、あと三日の命って言っていたけれど、あれは冗談かな? だってあんなに元気だしな。


 でもあんなに若返ったら体に相当負担かかるよな? そんな魔法が存在するってことは、命と引き換えか。ライトノベルの読みすぎだろうか? もし、あと三日しか生きられないならば、ばあちゃんの好きなようにさせよう。昔から働きづめだったばあちゃん孝行のつもりで、思いっきり楽しんでもらおう。


 ひととおり構内を紹介して、四人で歩く。青春ドラマの一ページか?

 ばあちゃんには、こんな青春があったのだろうか?

 じいちゃんとはどんな恋愛して結婚したのだろう?

 僕はそんな話を聞いたこともないから知らないが、八十年も生きていたら、たくさんのドラマがあったのだろう。ましてや美少女ならばきっと若い時は色々あったのだろう。孫としては複雑だが八十歳ならばあと何年、生きられるのかわからない。じいちゃんに似ているという藤沢と東京の想い出を作ってもらうか。冥途の土産というやつだ。

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